目次
- リンゲルマン効果って何?
- リンゲルマン効果の意味
- リンゲルマンの実験
- 実験内容
- 実験の結果
- リンゲルマン効果の別名
- フリーライダー現象
- 社会的怠惰
- 何故リンゲルマン効果が起るのか
- 集団の陰に隠れる
- 優秀な集団の中に所属している場合
- 努力をしない集団に所属している場合
- 自己の意識の性能の低下
- 集団の中では個人への責任度合いが低い
- メンバー間の調整の難しさによる生産性低下
- 他に行われた検証や実験
- 文化の差
- ステレオタイプの存在
- ラタネとハーディの実験
- Eテレの「大心理学実験」
- トラック引きの挑戦
- 一般人の結果
- その道のプロの結果
- チアリーダーを配置した結果
- リンゲルマン効果の改善方法
- 外からの動機付けが必要
- 金銭的報酬を与える
- ある程度の責任感を持たせる
- チームワークを強める
- 組織の編成やメンバーを見直す
- 自分がリンゲルマン効果に陥らないためには
- 知らず知らずのうちに手抜きをしているかも
- 人の視線を常に気にする
- 自分ひとりの作業量を明確化する
- リンゲルマン効果に似た傍観者効果
- 傍観者効果とは
- 傍観者効果の原因
- 傍観者効果の実際の事件
- 傍観者効果の改善方法
- 事業を始める場合において重要なリンゲルマン効果
集団の陰に隠れる
アメリカの心理学者ラタネは、綱引きとは異なる様々な実験をおこない、また違った視点からリンゲルマン効果を検証しました。そして、リンゲルマン効果が起こる理由として、「人は特定の仕事をおこなうときに周囲に対して自分の貢献度が隠れている場合には怠惰になる」という仮説を立てました。この仮説を「hide-in-the-crowd(集団の中に隠れる)」と言います。
集団に対する貢献度が自分自身だけでなく他者にも分かり、評価される可能性のことを「評価可能性」といい、評価可能性が低い場合は社会的手抜きが見られることは、実験でも明らかになっています。
集団に対する貢献度が自分自身だけでなく他者にも分かり、評価される可能性のことを「評価可能性」といい、評価可能性が低い場合は社会的手抜きが見られることは、実験でも明らかになっています。
しかし、例外もあります。大阪大学の大学生に対し、クレペリン検査を用いた実験で、「大学生の数的処理能力を測定する課題」と称し、「この課題は著名な知能検査とも高い相関関係があることが分かっている」と伝えると、例え無記名(評価可能性が低い)であっても、社会的手抜きはほぼ起こりませんでした。
被験者は名門大阪大学の学生ということで、個々の採点結果(社会的な評価)がなくても、自分自身のプライドのために力を最大限に発揮したのだと考えられます。人のモチベーションを保つのは、人からの評価だけではないことが分かる実験結果です。
被験者は名門大阪大学の学生ということで、個々の採点結果(社会的な評価)がなくても、自分自身のプライドのために力を最大限に発揮したのだと考えられます。人のモチベーションを保つのは、人からの評価だけではないことが分かる実験結果です。
優秀な集団の中に所属している場合
他のメンバーが優秀で、自分が努力しなくても集団全体の成果はそれほど変わらず、なおかつメンバーと同じ給料がもらえる環境であれば、人は社会的手抜きをしてしまいます。公務員や大手企業など安定した組織では、優秀な人の中にこうした「怠け者」が混じっている確率が高くなるでしょう。
しかし、こうした「怠け者」にもちゃんと存在意義があります。怠け者がいるとその不足分を補うべく、パフォーマンスが上がったり、怠け者と自分を比較して、「自分は努力家だ」、「能力がある」と、自尊心が満たされたりすることもあります。怠け者の存在が、集団におけるパフォーマンスの維持、向上に役立つこともあるのです。
しかし、こうした「怠け者」にもちゃんと存在意義があります。怠け者がいるとその不足分を補うべく、パフォーマンスが上がったり、怠け者と自分を比較して、「自分は努力家だ」、「能力がある」と、自尊心が満たされたりすることもあります。怠け者の存在が、集団におけるパフォーマンスの維持、向上に役立つこともあるのです。
努力をしない集団に所属している場合
逆に、努力をしない集団の中にいる場合も、社会的手抜きが起こることがあります。「他の人がしないのに、自分だけするのは嫌だ」という、サッカー効果によるものです。また、「出る杭は打たれる」と言う通り、能力の高い人が周りの「怠け者」から疎まれてしまい、力を抑えざるを得なくなることもあります。
ある工場でのケースを例に挙げてみます。その工場でのある作業集団は、全員が怠け者で生産性が低く、なおかつ強い仲間意識で結ばれていました。そこに優秀な従業員が入り、平均以上の作業成績を示すようになりました。しかし元からいる人たちに仲間外れにされそうになり、生産性を他の人と同じレベルにまで落としてしまいます。
その後、その集団は解体され、その優秀な従業員だけが残りました。するとその従業員の生産量は急上昇し、なんと以前の2倍近くにまで上がったそうです。この事例から、集団が生産量に関して暗黙のルールのようなものを決め、それが一旦固定してしまうと、集団が解体しない限りそのルールを崩すのは難しいことが分かります。
ある工場でのケースを例に挙げてみます。その工場でのある作業集団は、全員が怠け者で生産性が低く、なおかつ強い仲間意識で結ばれていました。そこに優秀な従業員が入り、平均以上の作業成績を示すようになりました。しかし元からいる人たちに仲間外れにされそうになり、生産性を他の人と同じレベルにまで落としてしまいます。
その後、その集団は解体され、その優秀な従業員だけが残りました。するとその従業員の生産量は急上昇し、なんと以前の2倍近くにまで上がったそうです。この事例から、集団が生産量に関して暗黙のルールのようなものを決め、それが一旦固定してしまうと、集団が解体しない限りそのルールを崩すのは難しいことが分かります。
自己の意識の性能の低下
集団における環境的要因だけではなく、個人の心理的要因も社会的手抜きを起こす原因となり得ます。例えば、口頭発表(人前でスピーチをする)のと、ポスター発表(ポスターを掲示し、見に来た人に解説する)では、まったく緊張度合いが違います。
もちろん、人前でスピーチをする方がずっと緊張するでしょう。ポスター発表の方がずっと気楽ですが、その緊張感のなさが動機付けを弱くし、怠け心が生まれてしまいます。
また、自分の姿を鏡で見ながら作業を行うと効率が上がるという実験結果があります。これは自分自身に注意が向くことで自己意識が上昇し、パフォーマンスが上がるからです。逆に自己意識がないと、(例えば、他の人や他のことに注意が向いていると)パフォーマンスは下がります。このように、自分自身の意識の問題でリンゲルマン効果が起こることもあるのです。
もちろん、人前でスピーチをする方がずっと緊張するでしょう。ポスター発表の方がずっと気楽ですが、その緊張感のなさが動機付けを弱くし、怠け心が生まれてしまいます。
また、自分の姿を鏡で見ながら作業を行うと効率が上がるという実験結果があります。これは自分自身に注意が向くことで自己意識が上昇し、パフォーマンスが上がるからです。逆に自己意識がないと、(例えば、他の人や他のことに注意が向いていると)パフォーマンスは下がります。このように、自分自身の意識の問題でリンゲルマン効果が起こることもあるのです。
集団の中では個人への責任度合いが低い
もしも社長一人のワンマン企業だったら、どのようなことも一人で決め、それによって生じた結果も一人で背負うことになります。つまり、100%の責任を負います。
しかし、もし10人の従業員からなる企業ならどうでしょうか。もちろん役職によって責任の重さは違いますが、それを考慮に入れず単純に頭数で割ったとすると、一人当たりの責任度合いは10%になります。
さらに100人になると、責任度合いは1%となり、責任があるのかどうかすら分からない程度になります。集団が大きくなればなるほど責任の度合いは下がり、緊張感がなくなります。また責任の所在が分かりづらくなると、評価可能性も下がります。その結果動機付けが弱くなり、パフォーマンスが下がる、つまりリンゲルマン効果が生じるのです。
しかし、もし10人の従業員からなる企業ならどうでしょうか。もちろん役職によって責任の重さは違いますが、それを考慮に入れず単純に頭数で割ったとすると、一人当たりの責任度合いは10%になります。
さらに100人になると、責任度合いは1%となり、責任があるのかどうかすら分からない程度になります。集団が大きくなればなるほど責任の度合いは下がり、緊張感がなくなります。また責任の所在が分かりづらくなると、評価可能性も下がります。その結果動機付けが弱くなり、パフォーマンスが下がる、つまりリンゲルマン効果が生じるのです。
メンバー間の調整の難しさによる生産性低下
様々な心理的要因によりリンゲルマン効果は起こりますが、仮にそのような心理的要因のない、例えば複数のロボットによる集団作業においても、生産性の低下は見られます。
リンゲルマンのおこなった綱引きを例に挙げると、集団が大きくなれば大きくなるほど、綱を引っ張るタイミングにばらつきが生じ、いくらかのプロセス・ロスが生じます。人ならなおさら、お互いが担当している仕事の内容や進捗状況を把握するのに時間がかかり、全体的な生産性は下がってしまいます。
リンゲルマン効果は厳密に言うと社会的手抜きと同義ではなく、社会的手抜きに調整の難しさによる生産性の低下を足したものです。
リンゲルマンのおこなった綱引きを例に挙げると、集団が大きくなれば大きくなるほど、綱を引っ張るタイミングにばらつきが生じ、いくらかのプロセス・ロスが生じます。人ならなおさら、お互いが担当している仕事の内容や進捗状況を把握するのに時間がかかり、全体的な生産性は下がってしまいます。
リンゲルマン効果は厳密に言うと社会的手抜きと同義ではなく、社会的手抜きに調整の難しさによる生産性の低下を足したものです。
他に行われた検証や実験
リンゲルマンが実験をおこない、リンゲルマン効果を発見したのは20世紀初頭のことです。それからリンゲルマン効果に関する様々な仮説が新たに立てられ、様々な実験がおこなわれてきました。その中から特に興味深いものを選んでご紹介しましょう。
文化の差
アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトは、著書「菊と刀」で、西洋社会と日本社会の文化の違いを、「罪の文化」、「恥の文化」という言葉を使って説明しています。
西洋社会は「罪の文化」であり、自分たちの行為は常に神に見られていると意識し、倫理的に行動しようと努める、だから誰も見ていなくても、悪いことをしたら罪悪感を覚えるのに対し、日本社会は「恥の文化」であり、誰かに悪行が知られることに恐れを抱くが、誰も見ていない場合は悪いことをしても気にしないというのがその概要です。
西洋社会は「罪の文化」であり、自分たちの行為は常に神に見られていると意識し、倫理的に行動しようと努める、だから誰も見ていなくても、悪いことをしたら罪悪感を覚えるのに対し、日本社会は「恥の文化」であり、誰かに悪行が知られることに恐れを抱くが、誰も見ていない場合は悪いことをしても気にしないというのがその概要です。
彼女の主張は決めつけだという批判もありますが、社会や文化の性格が人の行動に影響を及ぼすということは大いに考えられます。この文化的要因の差が、リンゲルマン効果の生じやすさにどのように関係するかを調べた実験も数多くおこなわれています。
しかし、それらの実験には一貫した結果が見られず、リンゲルマン効果と国籍や文化的要因には明確な関連性は見出せませんでした。心理学の実験は検証に用いた作業の内容や検証方法に加え、被験者個々の性格や生育環境にも大きな影響を受けるため、確実な結果を求めることは難しいのかもしれません。
しかし、それらの実験には一貫した結果が見られず、リンゲルマン効果と国籍や文化的要因には明確な関連性は見出せませんでした。心理学の実験は検証に用いた作業の内容や検証方法に加え、被験者個々の性格や生育環境にも大きな影響を受けるため、確実な結果を求めることは難しいのかもしれません。
ステレオタイプの存在
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