2019年7月15日 更新

レッサーパンダ帽男殺人事件の概要と経緯!山口誠の生い立ちとその後

レッサーパンダの帽子を被った男が、浅草で女子短大生を刺殺したという衝撃の事件。男の異様な姿から、マスコミはセンセーショナルに騒ぎ立てようとしましたが、犯人が知的障害者だと判明すると報道は失速しました。今回は、犯人「山口誠」の生い立ちと、事件の概要を紹介します。

目次

「コバヤシ」という偽名で働いていた

Construction Site Building - Free vector graphic on Pixabay (407048)

軽度の知的障害者とされる山口ですが、この工事現場では「コバヤシ」という偽名を使って働いていました。これから分かることは、少なくとも善悪の区別や、自分が犯した罪がバレては困るという感情は持っているということです。

この事件前にも、短絡的な犯罪で懲役刑を食らっているのですから、この後どうなるかの想像を多少は出来たのでしょう。そうであれば、この時の山口は、嘘を付くことが出来る程度の狡賢さはあるということになります。

会社関係者の通報により発覚

Phone Home Telephone - Free photo on Pixabay (407061)

事件後、山口はテレビも新聞も全く観ておらず、自分の似顔絵が出回っていることにまるで気が付いていませんでした。目撃情報も多く、似顔絵の精度も高かった為か、山口の働き出した会社関係者が似顔絵の男に似ていることに気が付きます。

会社関係者は、埼玉県の所沢署へ話をしに出向きました。情報提供後、所沢署から捜査本部に通報を入れ、捜査員達は代々木の山口の元へ訪れたのです。事件から約10日程経った5月10日木曜日、山口はようやく逮捕されました。

短大生を刺殺した犯行動機

Fantasy Spirit Nightmare - Free photo on Pixabay (407071)

偽名を使ったり、証拠物を捨てるようなずる賢さはあっても、山口のIQは49しかありません。上手く話せなかったり、「おと、を」「はと、わ」の違いも分からない程度の知能だと言われています。

供述は中々進まず、話もコロコロ変わる為、供述書は検察が上手くまとめて作ったのでしょう。そこには信憑性のある動機は書かれていません。

何度か本人の口から語られたと見られる理由は、今のところ2つありますが、今となってはそれもハッキリしたものでは無いでしょう。しかし、動機が分からなければ、この事件は不明のまま終わってしまいますので、ここでは短大生を刺殺した動機と言われているものを紹介します。

侮辱されたと思った

Anger Angry Bad - Free image on Pixabay (407081)

第1の理由としては、「侮辱されたと思った」ということです。実際小川さんを付けて歩いていた山口は、気配を感じて振り返った小川さんの驚いた顔に「カッとなった」と思えるような、突発的行為で路地に連れ込み、躊躇も無く殺しに掛かっています。

誰しもが何気なく振り返った時に、レッサーパンダの帽子を被った大男が後ろにいれば、いくら他人に無関心気味な都会人だったとしても、女性なら顔に恐怖心が出てしまうでしょう。しかし、それは仕方がありません。自意識過剰と言われても、結局レイプや強盗などの悪質な犯罪は、弱い女子供を狙うのが現実です。

警戒してしまうのは仕方がありません。相手が知的障害者の男性や、一見普通に見える男性だったとしても、それは差別ではなく警戒心なのです。実際この後、小川さんは無残に殺されてしまいますし、相手が理性を持っていないのであれば、警戒するなという方が普通の人を差別していると言えるでしょう。

自分のものにしたいと思った

Fear Woman Stop Violence Against - Free photo on Pixabay (408114)

もう1つの理由は、「自分のものにしたい」と思ったということです。こちらはしかし、何とか刺殺に至った理由を自分達の価値観に当てはめて、検察が無理矢理まとめて書いたように感じられる理由と言えます。人は自分の理解できない事を、理解出来る範疇に当てはめようとする習性があります。特に検察などは、結論に合わせて理由などを当てはめやすいのです。

山口は公判中も、責められるような検察官の口調に、顔を上げられなかったり、答えが変わったり、無言の時間が合ったりとスムーズな会話をすることが出来ない人です。軽度の知的障害者は、自分の意見を上手くまとめて、相手に伝えることは出来ないのです。

山口も当時29歳の成人男性ですから、いくら知的障害者だとしても、性欲や恋愛感情のようなものがあっても不思議ではありません。しかし、果たしてストーカー男性のような歪んだ愛情のように、殺してもものにしようと考えるものでしょうか?公判中山口は、「友達になりたかった」とも答えていますが、どちらかと言えば最初の「侮辱された」という方が、理由としては信憑性が高いと感じられます。

逮捕後の山口誠

Prison Slammer Caught - Free image on Pixabay (408186)

山口誠は事件の10日後に逮捕されました。すでに前科があった山口は、経歴などを見ればIQ49で軽度の知的障害者であり、養護学校出身などはすぐに判明はしていたでしょう。日本の刑法では、明確な精神障害者や未成年者と、一般成人と区別されています。しかし、裁判中はよほど顕著な知的障害者ではない限り、あまりIQをチェックすることはないそうです。

その為、日本の刑務所の中には、IQ69以下の軽度の知的障害者が20%程いると言われています。山口の場合は、前歴の他に精神鑑定などもして、軽度の知的障害者は判明していましたが、47回にも及ぶ公判では責任能力の有無を争点にされました。

逮捕後の山口は、やはり動機などに一致する供述は無く、その他にも知的障害者を装っているのか、それとも計画的なのか分かりづらい言動をしています。ここでは、そんな逮捕後の山口誠について紹介していきます。

取調べに対し「お母さんが知っている」と話す

Boy Child Family - Free vector graphic on Pixabay (408419)

山口は逮捕後の取調べに対し、「お母さんが知っている」と答えたと言われています。動機か理由かを尋ねられた際の答えでしょうか?何に対しての答えかは不明ですが、この時母の死を記憶していたのか、それとも演技なのか分かりません。

しかし、この答えから見えてくるのは、山口誠には衝動的に起こしてしまった殺人事件の理由を、自分では上手く説明出来ないと感じていた事。そして、これから自分がどうなるかの不安感、更に恐怖心があったのではないか?ということです。

山口は母親を17歳の時に亡くしてから、家出や放浪癖が増えて行きました。母親と山口の関係性について、ほぼ資料はありませんが、父親よりも愛情を掛けてくれたことは間違いないと言えるでしょう。レッサーパンダの帽子を大切だと言い、毎日抱いて寝ているという発言からも、山口の孤独感が窺えます。

障害者手帳は保有していなかった

Desperate Stress Stressed - Free vector graphic on Pixabay (408495)

山口は高等養護学校を卒業した際、障害者手帳を持っていたにも係わらず、就職などに影響があるという理由で破棄したという話があります。また一方で、認定を受ける資格を満たしていたものの、家族が申請せずにいたので、障害者手帳を持っていなかったとも言われています。

何れにせよ、日本の役所はそういう点においては不親切で、自ら福祉についての制度や情報を知った上で、相談や申請ができ、難解な手続きをクリアしなければ、何もサービスを利用することは出来ません。

山口の家庭は、父親も軽度の知的障害者だったこともあり、家族もそのような制度を知らなかったことが、負のスパイラルに陥れたということもあるでしょう。

所持金は48円

No Money Poor - Free image on Pixabay (408535)

逮捕された時、山口の所持金は48円でした。犯行後、「金が無いから歩いて行った」と東京駅までの移動方法を答えていることと一致しています。

東京に来て約1ヶ月、事件の数日前に見知らぬ男性を何度も殴りつけていたことや、小川さんの前に吾妻橋で女性を襲った時、そして最後の殺人事件という流れを考えると、事件の数日前から山口はもしかすると、何も食べていなかったのかもしれません。

公園にいたことを考えると、飲み水くらいは取れていたのでしょうが、空腹でイライラしていたという可能性も考えられます。事件後、建設現場に働きに行こうとしたのも、お金が欲しかったからでしょう。そうなると、やはりこの事件の動機は、強盗目的と空腹によるイライラ感で、カッとしたということが重なったというだけとも言えます。

広汎性発達障害と診断される

Boy Child Sad - Free photo on Pixabay (408634)

裁判中、山口は広汎性発達障害と診断されました。広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)の特徴などについては、後ほど詳しく述べるのでここでは割愛します。

山口が診断された時は、広汎性発達障害とされていますが、2013年以降は自閉症スペクトラム障害という名前に統一されました。

発達障害は、最近になってようやく一般人にも知られるようになりましたが、山口が学生時代の頃であれば、知能指数が低い、落ち着きのない子、だいぶ変わり者という概念で、障害者には認定されていません。その分、周りの理解も無く、当人にとっては生きづらい世の中だったと言えます。

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