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判決は「無期懲役」
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約3年半以上、47回に亘る公判で、ついに2004年(平成16年)11月26日金曜日、東京地裁では「広汎性発達障害としても、完全な責任能力はある」ということで、山口誠に対して「無期懲役」を言い渡しました。これに対して山口は、控訴を取り下げた為、2005年(平成17年)4月1日金曜日に刑が確定したのです。
この時、山口33歳。無期懲役は、最低でも30年は刑務所を出られません。少なくとも山口が社会に出てくる時は、60歳を過ぎる頃になるでしょう。しかし、その頃父はこの世を去っている可能性が大きいですし、弟も連絡は取れないかもしれません。
障害は治るものでも無いので、きちんとした保護司が付かない限りは、1人で生きていくことも難しいでしょう。実際、軽度の知的障害者達は釈放されても、また軽犯罪を犯して戻ってくると言います。そして、刑務所が1番安心して暮らせるとも言っているのです。ある意味身寄りの無い山口にとっても、無期懲役の判決に安心している可能性があります。
この時、山口33歳。無期懲役は、最低でも30年は刑務所を出られません。少なくとも山口が社会に出てくる時は、60歳を過ぎる頃になるでしょう。しかし、その頃父はこの世を去っている可能性が大きいですし、弟も連絡は取れないかもしれません。
障害は治るものでも無いので、きちんとした保護司が付かない限りは、1人で生きていくことも難しいでしょう。実際、軽度の知的障害者達は釈放されても、また軽犯罪を犯して戻ってくると言います。そして、刑務所が1番安心して暮らせるとも言っているのです。ある意味身寄りの無い山口にとっても、無期懲役の判決に安心している可能性があります。
山口誠の日記
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山口は逮捕後収監されていた、浅草署にて日記を残しています。その他にも、高等養護学校時代慕っていた、1年生の担任だった山本寿子(ひさこ)先生と、服役中に文通もしていました。
その文章は、ほとんど平仮名で書かれています。その中で、本当にそう思っているのか、検察官に言われたことを真実として思い込んでしまったのか、被害者女性の小川さんに対して恋愛感情のような文章を残しています。
日記には、浅草の三社祭りの笛の音が聴こえたことで、「ひがいしゃの女の子が生きていたら、お祭りなどを見にいったりしたいとおもいます」と書いていたり、先生との手紙には被害者女性のことを「ぼくのてんし」と残しています。果たしてそれは本音だったのでしょうか?今となっては分かりません。
その文章は、ほとんど平仮名で書かれています。その中で、本当にそう思っているのか、検察官に言われたことを真実として思い込んでしまったのか、被害者女性の小川さんに対して恋愛感情のような文章を残しています。
日記には、浅草の三社祭りの笛の音が聴こえたことで、「ひがいしゃの女の子が生きていたら、お祭りなどを見にいったりしたいとおもいます」と書いていたり、先生との手紙には被害者女性のことを「ぼくのてんし」と残しています。果たしてそれは本音だったのでしょうか?今となっては分かりません。
逮捕直後の山口が書いた供述作文
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もう1つ、山口誠本人が書いたと言われる供述作文があります。正式な供述調書は、検察官が3時間程掛かって作ったとも言われているので、この作文自体も言われたことをそのまま書いた可能性もあるかもしれません。しかし、文章自体は平仮名が多いので、本人が書いたことに間違いは無いでしょう。
父や大人の男性に暴力を受けたことのある人は、威圧的な男性や声の大きい人の前では委縮してしまいます。山口はそれに加えて、知的障害がある為、例え間違いがあっても反論は上手く出来なかったでしょう。しかし、殺人事件を起こしたことに違いはありません。ここでは、本人の供述作文を紹介します。
父や大人の男性に暴力を受けたことのある人は、威圧的な男性や声の大きい人の前では委縮してしまいます。山口はそれに加えて、知的障害がある為、例え間違いがあっても反論は上手く出来なかったでしょう。しかし、殺人事件を起こしたことに違いはありません。ここでは、本人の供述作文を紹介します。
わたしが女の子をころしたことについて
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この供述作文をかいつまんで説明すると、事件を起こした動機については、「女の子がへんな目で自分のほうをみたので、自分はころして自分のものにしようと思い」とあります。
変な目で見られてという部分は何となく理解出来ますが、やはり殺して自分のものにしようとという部分は違和感があります。この部分は、検察が理解しようと枠に当てはめた文章ではないか?と推察されます。
その他、最初に右手の包丁で背中を刺したことや、両肩を掴んで路地に押し倒したことなど、犯行時の様子を述べていますが、興奮状態で小川さんを刺していた山口が、果たして詳細を覚えていたのか?という点も疑問に残ります。しかし、詳細はどうあれ、殺したという事実は消えることはありません。
変な目で見られてという部分は何となく理解出来ますが、やはり殺して自分のものにしようとという部分は違和感があります。この部分は、検察が理解しようと枠に当てはめた文章ではないか?と推察されます。
その他、最初に右手の包丁で背中を刺したことや、両肩を掴んで路地に押し倒したことなど、犯行時の様子を述べていますが、興奮状態で小川さんを刺していた山口が、果たして詳細を覚えていたのか?という点も疑問に残ります。しかし、詳細はどうあれ、殺したという事実は消えることはありません。
広汎性発達障害とは
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先程も軽く触れましたが、山口誠が診断された広汎性発達障害とはどのようなものなのでしょうか?最近になって、発達障害の認識が広まりましたが、生まれつきの障害だという認知は低いのかもしれません。
昔は、扱いにくい子程度の認識で、間違えた躾で抑えようとする親や教師、そして理解出来ずに無視や苛めに走る同級生なども多く、生きづらいと感じている人が多いのです。
山口も、服役中に高等養護学校の担任であった山本寿子先生との文通に、「どうしてぼくはいきているの?」という言葉を残していました。最近は診断名が付いたことにより、大人になってようやく自覚したという人も増えています。ここでは、広汎性発達障害について説明していきます。
昔は、扱いにくい子程度の認識で、間違えた躾で抑えようとする親や教師、そして理解出来ずに無視や苛めに走る同級生なども多く、生きづらいと感じている人が多いのです。
山口も、服役中に高等養護学校の担任であった山本寿子先生との文通に、「どうしてぼくはいきているの?」という言葉を残していました。最近は診断名が付いたことにより、大人になってようやく自覚したという人も増えています。ここでは、広汎性発達障害について説明していきます。
原因・特徴
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広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)は、現在は自閉症スペクトラム障害に診断名が統一されています。その人によって、症状に違いがありますが、原因としては脳の機能障害なので生まれつきのものです。
特徴としては、「対人関係障害」「コミュニケーション障害」「こだわり、興味の偏り」という3つの症状が上げられます。ある意味個性とも言えますが、共感性が無かったり、自分独自の世界観やルールを強く持っているとも言えるでしょう。
特徴としては、「対人関係障害」「コミュニケーション障害」「こだわり、興味の偏り」という3つの症状が上げられます。ある意味個性とも言えますが、共感性が無かったり、自分独自の世界観やルールを強く持っているとも言えるでしょう。
よく見られる行動
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広汎性発達障害の人によく見られる行動は、こだわりが強い分、自分が好きなことであればずっとそれにのめり込むということでしょう。うまくそれが仕事などに当てはまると、研究職や職人、技術屋などのプロフェッショナルになることもあります。
その他に、自分と相手の違いや、人それぞれに考えや思考があるということを理解し辛い為、人との接し方や距離感が分からないのです。全く目を合わせられない人もいれば、いきなり至近距離にて話し掛けてきたりということもあります。
更に、自分のルールから外れたり、予想外のことが起きると、パニックになるという特徴もあるのです。ある意味、山口誠が殺人事件を起こしたきっかけは、このパニックが関係したのかもしれません。
その他に、自分と相手の違いや、人それぞれに考えや思考があるということを理解し辛い為、人との接し方や距離感が分からないのです。全く目を合わせられない人もいれば、いきなり至近距離にて話し掛けてきたりということもあります。
更に、自分のルールから外れたり、予想外のことが起きると、パニックになるという特徴もあるのです。ある意味、山口誠が殺人事件を起こしたきっかけは、このパニックが関係したのかもしれません。
レッサーパンダ帽男殺人事件を題材にした書籍・グッズ
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レッサーパンダ帽男殺人事件は、一見不気味な事件に囚われますが、山口誠が知的障害者だったことで報道は終息しました。しかし、この事件をきっかけに、広汎性発達障害の名も世に出たことにより、知的障害者と犯罪、そして刑務所や福祉制度の不備など問題が見えてきたのです。
この事件に注目した人が、書籍を出したり、何故かグッズも販売されています。ここでは、レッサーパンダ帽男殺人事件を題材にした書籍とグッズを紹介します。
この事件に注目した人が、書籍を出したり、何故かグッズも販売されています。ここでは、レッサーパンダ帽男殺人事件を題材にした書籍とグッズを紹介します。
自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」
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自閉症裁判~レッサーパンダ帽男の「罪と罰」は、2008年(平成20年)に出版されました。著者の佐藤幹夫は、元養護学校の教員で、その後フリージャーナリストとなった人です。
佐藤幹夫は、レッサーパンダ帽男である山口誠の裁判記録や、生い立ちなどを含め、現代の司法や福祉、そして医療などの問題点を踏まえ、障害者の事件について書いています。
山口誠が犯した罪は変えられませんが、その前の対応などでは、もしかすると被害者の女性も守れたかもしれないという観点で、事件を追っている書籍です。
佐藤幹夫は、レッサーパンダ帽男である山口誠の裁判記録や、生い立ちなどを含め、現代の司法や福祉、そして医療などの問題点を踏まえ、障害者の事件について書いています。
山口誠が犯した罪は変えられませんが、その前の対応などでは、もしかすると被害者の女性も守れたかもしれないという観点で、事件を追っている書籍です。
自閉症スペクトラム
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自閉症スペクトラムは、2005年(平成17年)に出版された書籍です。作者は、精神科医の高岡健と、心理学者の岡村達也です。精神や心理などの専門家が、レッサーパンダ帽男殺人事件の裁判を検証しつつ、正常と障害の境界線や違いは何なのか?という観点を述べています。
そして、自閉症スペクトラムや発達障害についての理解を促す内容となっています。この書籍では、山口誠の事件を通して、障害が犯罪を犯す訳では無いとも述べており、やはり福祉制度など問題点も上げています。
そして、自閉症スペクトラムや発達障害についての理解を促す内容となっています。この書籍では、山口誠の事件を通して、障害が犯罪を犯す訳では無いとも述べており、やはり福祉制度など問題点も上げています。
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