目次
困った頼政は「五月雨に沢辺の真薦(まこも)水越えていづれ菖蒲(あやめ)と引きぞわづらふ(雨が降り続いて沢の水かさが増したため、真薦というあやめに似た背の高い草も水中に隠れてしまい、どれが菖蒲かわからず引き抜くのをためらう)」という歌を詠みました。
この歌のもうひとつの意味は「美しすぎて感情が昂ぶり、どの方が菖蒲御前か分からず選ぶことができません」といった意味で、この歌の見事さに感心した近衛関白が思わず菖蒲御前の手を引いて「この方です」と頼政に教えてしまった、いいます。
この逸話に基づいて後の世の人が、たくさん美人がいることを表す言葉として「何れあやめかカキツバタ」と言いはじめ、転じて優劣がつけられないほど優れているものがある状況を表現するための慣用句となりました。
この歌のもうひとつの意味は「美しすぎて感情が昂ぶり、どの方が菖蒲御前か分からず選ぶことができません」といった意味で、この歌の見事さに感心した近衛関白が思わず菖蒲御前の手を引いて「この方です」と頼政に教えてしまった、いいます。
この逸話に基づいて後の世の人が、たくさん美人がいることを表す言葉として「何れあやめかカキツバタ」と言いはじめ、転じて優劣がつけられないほど優れているものがある状況を表現するための慣用句となりました。
あやめとカキツバタの違い
via pixabay.com
「何れあやめかカキツバタ」という慣用句ができたように、昔の人もあやめとカキツバタを見分けるのには苦労したようです。同じアヤメ科アヤメ属の花なので似ていて当然、とも言えますが分類上あやめとカキツバタは違う種です。
あやめに比べるとカキツバタの方が背丈も花もひとまわり大きく、花びらに網目模様はなく、白い斑紋があります。また、あやめは乾燥した草地で育ちますが、カキツバタは水辺などの湿地帯の方が元気に育ちます。
開花時期はあやめより少し遅く5月中旬から下旬です。江戸時代には園芸用としていろんな種類が栽培され、花の色も青紫や紫、白いものや鮮やかなグラデーションものがあるのもあやめとの違いです。
あやめに比べるとカキツバタの方が背丈も花もひとまわり大きく、花びらに網目模様はなく、白い斑紋があります。また、あやめは乾燥した草地で育ちますが、カキツバタは水辺などの湿地帯の方が元気に育ちます。
開花時期はあやめより少し遅く5月中旬から下旬です。江戸時代には園芸用としていろんな種類が栽培され、花の色も青紫や紫、白いものや鮮やかなグラデーションものがあるのもあやめとの違いです。
あやめとショウブの違い
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カキツバタとともに、あやめと良く混同される植物に『ショウブ』がありますが、実はショウブとあやめは全く違う種類の植物です。なのになぜ間違えることがあるのか…それは名前の由来が原因です。
万葉集にも『あやめぐさ』という言葉が出てきますが、その当時『あやめ』と言えば、5月5日端午の節句にお風呂に入れる、いい香りのする『菖蒲(ショウブ)』のことで、ショウブ科(サトイモ科とする分類区分もある)の植物でした。
昔から厄除けや漢方薬の材料として使われていて、『菖蒲』と書いて『アヤメ』『アヤメグサ』『ショウブ』と読まれていました。今の『あやめ』は『ショウブ』と葉の形が似てきれいな花が咲いたので『はなあやめ』と呼ばれていました。
万葉集にも『あやめぐさ』という言葉が出てきますが、その当時『あやめ』と言えば、5月5日端午の節句にお風呂に入れる、いい香りのする『菖蒲(ショウブ)』のことで、ショウブ科(サトイモ科とする分類区分もある)の植物でした。
昔から厄除けや漢方薬の材料として使われていて、『菖蒲』と書いて『アヤメ』『アヤメグサ』『ショウブ』と読まれていました。今の『あやめ』は『ショウブ』と葉の形が似てきれいな花が咲いたので『はなあやめ』と呼ばれていました。
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更にややこしくなるのですが、実は今の『あやめ』にそっくりな『ハナショウブ』という植物もあるのです。こちらはアヤメ科アヤメ属で花もあやめに似ているので、江戸時代以前は同じ花と思われていたようです。
『ハナショウブ』はあやめよりやや大きく、江戸時代以降盛んに品種改良され、園芸用として全国に広まりました。群生で見事な花を咲かせるので今でも各地で『菖蒲祭り』(正しくはハナショウブ祭り)などが催されます。
あやめと違い花びらに網目模様はなく黄色の班紋があり、湿地を好みます。咲く時期もあやめやカキツバタよりもやや遅く、6月に見頃を迎えます。
『ハナショウブ』はあやめよりやや大きく、江戸時代以降盛んに品種改良され、園芸用として全国に広まりました。群生で見事な花を咲かせるので今でも各地で『菖蒲祭り』(正しくはハナショウブ祭り)などが催されます。
あやめと違い花びらに網目模様はなく黄色の班紋があり、湿地を好みます。咲く時期もあやめやカキツバタよりもやや遅く、6月に見頃を迎えます。
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まとめますと、現在は『ショウブ(菖蒲)』とはショウブ科の良い香りのする葉を厄除けや漢方に活用する植物。花は目立たない。昔は『アヤメ』や『アヤメグサ』とも呼ばれていた。
『ハナショウブ』(花菖蒲)はアヤメ科アヤメ属の植物。日本に自生していた『ノハナショウブ』を観賞用に品種改良したもので、紫・赤紫・桃色・白などの花を6月に咲かせる。花びらに網目模様は無く黄色い班紋が入る。
花が咲けば見分けられますが、葉は良く似ていて、昔の人が混乱して呼んだり、間違って広めたのも頷けます。今でも同じ漢字を使ったり、間違った名前で説明されている文献などもあるので混乱しやすいのですね。
『ハナショウブ』(花菖蒲)はアヤメ科アヤメ属の植物。日本に自生していた『ノハナショウブ』を観賞用に品種改良したもので、紫・赤紫・桃色・白などの花を6月に咲かせる。花びらに網目模様は無く黄色い班紋が入る。
花が咲けば見分けられますが、葉は良く似ていて、昔の人が混乱して呼んだり、間違って広めたのも頷けます。今でも同じ漢字を使ったり、間違った名前で説明されている文献などもあるので混乱しやすいのですね。
カキツバタの花言葉
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カキツバタの花言葉は「贈り物」「幸運は必ず来る」「幸せはあなたのもの」です。この花言葉の由来のひとつは、カキツバタの花の形が幸せを運んでくる鳥と言われている「燕(つばめ)」と似ていることです。
カキツバタの美しい紫色の花びらを、燕が羽を広げて飛ぶさまに見立て、漢字で「燕子花」と書いて「カキツバタ」と読みます。
なお、漢字表記としては「杜若」の方が良く使われますが、実は別種の植物の漢名「とじゃく(杜若)」と、カキツバタを間違えて使われたのが広まったそうです。植物の名前は本当にややこしいですね。
カキツバタの美しい紫色の花びらを、燕が羽を広げて飛ぶさまに見立て、漢字で「燕子花」と書いて「カキツバタ」と読みます。
なお、漢字表記としては「杜若」の方が良く使われますが、実は別種の植物の漢名「とじゃく(杜若)」と、カキツバタを間違えて使われたのが広まったそうです。植物の名前は本当にややこしいですね。
ショウブの花言葉
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ショウブの花言葉は「優しい心」「あなたを信じます」「忍耐」「あきらめ」「優雅」「信頼」とたくさんありますが、どうも『ショウブ』と『ハナショウブ』の花言葉がごっちゃになってしまっているようです。
「忍耐」「あきらめ」は『ショウブ』も『ハナショウブ』も湿地帯に生育し、冬は凍てつく水の中で枯れたようになりながらも春がくるのを待つ姿から連想されたのかもしれません。
「優雅」はアヤメ属の花の中でもひときわ華やかな『ハナショウブ』の花の姿に由来しているようです。
「忍耐」「あきらめ」は『ショウブ』も『ハナショウブ』も湿地帯に生育し、冬は凍てつく水の中で枯れたようになりながらも春がくるのを待つ姿から連想されたのかもしれません。
「優雅」はアヤメ属の花の中でもひときわ華やかな『ハナショウブ』の花の姿に由来しているようです。
あやめは5月の誕生花
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あやめは5月5日の誕生花(たんじょうか)と言われています。誕生花とは、生まれた日と関連づけて選ばれた花のことで、あやめが5月5日の誕生花となっているのはやはり端午の節句に使われる『ショウブ』が由来でしょう。
なお、誕生花は国や地域によっていろんな説がありますので、5月5日の誕生花をハナショウブやカキツバタとする説もあります。これもあやめと花が似ていることが理由のひとつのようです。
また、あやめを5月15日や5月18日の誕生花とする説もあり、必ずしもこの日は絶対にこの誕生花という訳ではないようですが、花が盛りの時期と重なることが多いようです。
なお、誕生花は国や地域によっていろんな説がありますので、5月5日の誕生花をハナショウブやカキツバタとする説もあります。これもあやめと花が似ていることが理由のひとつのようです。
また、あやめを5月15日や5月18日の誕生花とする説もあり、必ずしもこの日は絶対にこの誕生花という訳ではないようですが、花が盛りの時期と重なることが多いようです。
「あやめ」が女の子の名前にも人気の理由
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生まれた季節や両親の思い出などから、美しい花の名前を女の子につけることは良くあります。「あやめ」もその優しい響きや可憐な花の佇まいから人気の名前です。
また花言葉の「希望」「良い便り」に由来して名付けられる場合や、ギリシャ神話の虹の女神イリスの献身的な性格と美しい容姿を、子供の成長していく姿と重ね合わせて名付けられていることもあるでしょう。
「あやめ」という名前を聞けば、自ずと凛とした清楚な花をイメージでき花言葉も素敵なものばかりなので、女の子の名前にはとても向いていますね。
また花言葉の「希望」「良い便り」に由来して名付けられる場合や、ギリシャ神話の虹の女神イリスの献身的な性格と美しい容姿を、子供の成長していく姿と重ね合わせて名付けられていることもあるでしょう。
「あやめ」という名前を聞けば、自ずと凛とした清楚な花をイメージでき花言葉も素敵なものばかりなので、女の子の名前にはとても向いていますね。
あやめやショウブを楽しめるおすすめスポット
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昔から日本人の心を癒してきたあやめの仲間たち。今もなお愛され続け、日本全国のあやめ園などで大切に育てられています。
花が満開を迎える季節には各地でお祭りやイベントが開催されることもありますので、美しい花々が愛でられいろんなイベントも楽しめる、そんなあやめ園をご紹介します。
花が満開を迎える季節には各地でお祭りやイベントが開催されることもありますので、美しい花々が愛でられいろんなイベントも楽しめる、そんなあやめ園をご紹介します。
水郷潮来あやめ園(茨城県)
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まずは『水郷潮来(すいごういたこ)あやめ園』です。場所は茨城県鹿島線の潮来駅を降りてすぐ、ハナショウブをはじめとするアヤメ類が約500種100万株も植えられていて、毎年5月下旬から約1カ月間「水郷潮来あやめまつり」が開催されます。
期間中は、昭和30年代前半まで潮来では日常的におこなわれていた嫁入りの様子を再現した「嫁入り船」が見られたり、手漕ぎろ舟での遊覧や夜のライトアップなど、さまざまなイベントが楽しめます。
一番の見頃は6月10日頃だそうです。お祭り期間中は毎年80万人を超える来場者で盛り上がる『水郷潮来あやめ園』へ、足を運ばれてはいかがですか?
期間中は、昭和30年代前半まで潮来では日常的におこなわれていた嫁入りの様子を再現した「嫁入り船」が見られたり、手漕ぎろ舟での遊覧や夜のライトアップなど、さまざまなイベントが楽しめます。
一番の見頃は6月10日頃だそうです。お祭り期間中は毎年80万人を超える来場者で盛り上がる『水郷潮来あやめ園』へ、足を運ばれてはいかがですか?
水元公園(東京都)
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