2019年10月21日 更新

志布志事件とは?黒幕は誰だった?事件の背景や真相についても

今なお語り継がれる志布志事件。何の罪もない人々が、身に覚えのない容疑で警察の不当で非人道的な取り調べを受けます。その裏には政治家や警察が絡んだでっちあげ 事件でした。幾多の日本社会の正義であるべき機関の問題を浮き彫りにした事件についてひも解いていきます。

目次

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鹿児島県議選をめぐる買収容疑で不当な逮捕・取り調べによって起訴された住民が無罪判決を受け、日本にその問題意識が駆け巡っていた時です。

当時の法務大臣であった鳩山邦夫氏の発言がさらなる火種となります。

法務大臣鳩山邦夫

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2008年2月13日に法務省で行われた検察幹部が集まる検察長官会同の席で、当時の法務大臣鳩山邦夫がこの志布志事件について「冤罪と呼ぶべきではないと思う」と発言します。

会同の終了後、記者の質問に対して鳩山氏は「冤罪という言葉は、全く別の人を逮捕し、服役後に真犯人が現れるなど100パーセント濡れ衣の場合を言い、それ以外の無罪事件にまで冤罪を適用すると、およそ無罪というのは全部冤罪になってしまうのではないか」と釈明しました。

「有罪判決が出ていなければ冤罪ではない」

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推定無罪の原則からすれば、起訴された時点では被告人は犯罪者として扱われるべきではなく、有罪判決が出ていない以上、厳密な意味で被告人は犯罪者とされないのであるから、「冤罪」ではないとする意見もあります。

しかし、鳩山氏の発言の文脈によると、「人違いであったり真犯人が出てくるならば100パーセント濡れ衣であって冤罪だが、この事件は違う」と言ったように取れ、「この事件は100パーセント濡れ衣だったのではなく、検察の立証不十分のため無罪となった」と考えている点に真意があるとの批判が上がっています。

また不当な扱いを受けた住民たちにとって、自分たちを無実の罪で罰しようとしていたものへの擁護発言にも取れ、彼らの怒りは想像にかたくありません。

検察への激励・士気向上の意図があったと釈明

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また鳩山氏は、この発言の契機は検察への激励と士気向上にあったと釈明しています。しかし志布志事件を「冤罪」ではないと別の事件と区別した上で取り上げることが、検察への激励や士気向上に結び付くのか疑問を呈する指摘も為されました。

元被告人である住民やその支援者の間では、鳩山氏の発言に対する批判が相次ぎ、鳩山邦夫氏は発言を事実上撤回し、陳謝することとなりました。

なぜ事件のでっち上げが必要だったのか

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警察側は事件のでっち上げに関して否定しているものの、事件の経緯や状況からでっち上げの事件とされた疑問はないでしょう。公判中から「この事件そのものが警察主導で一から作り上げられた創作だったのではないか」という指摘なされていたほどです。

本来問われることのない事実無根の事件を作り上げてまでしたかったものとは何なのでしょうか。こうしてあらぬ容疑をかけられた罪のない人々、彼らの人生について、事件捏造者は考えたのでしょうか。
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容疑をかけられた住民は、不当な取り調べから受けた精神的苦痛などで訴訟を起こし、その訴えが認められている。

当時鹿児島市で開かれた記者会見にて、住民側は判決について、「取り調べの違法性を全員について認めたこと」を評価した一方で、「嫌疑がないのに何故取り調べが行われたか。真相は解決しないまま」と述べています。

警察と議員の癒着

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インターネット新聞『JANJAN』の記事に、志布志事件の容疑者として逮捕起訴され、最終的に被害者となった中山氏のインタビューが載せられています。以下、「」内にて彼のインタビューを一部加筆修正を加えながら掲載します。

志布志事件の背景、黒幕について、記者が警察、検察の組織ぐるみのでっち上げ犯罪であるか、あるいは森義夫県議会議員と癒着していたといわれている元警部個人の暴走と見るべきかと質問します。
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それに対し中山氏の答えは「2つの要素があったのだと思います。地方はしがらみがとても多いのですが、そういう地域のしがらみと事件を作った元警部が一つになって起きたのだと思います。裁判の中で、元警部は議員と20年来の親交があり鞄持ちのような存在であったという証言もありました。」とし、

「今回の事件は、100人体制で捜査を行なっているのですから、他の警察官の人たちは彼にだまされていたのだと思います。また検察も、彼がつくった警察の調書を完全に信じてしまったのでしょう。」と述べます。

さらに中山氏は「地域のしがらみのなかで警察が作った事件であり、自民党多数のなかで膿が溜まっていたところに、私が議会に出てくると困ることがあったのでしょう。懐部落という小さな集落に住む本当に素朴な人間に狙いをつけて事件を作り上げ、どうしても私をつぶしたいという意図で作られたのです。」と語ります。
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次に記者は、黒幕とされた森元県議会議員について質問します。当時の選挙で森元議員は中山氏とともに当選しています。彼がもし落選していたのなら、元警部の力を借りて中山氏を逮捕し辞職させ繰り上げ当選を果たすという動機が考えられます。

記者は、森本議員が自身の当選に問題がないにも関わらず、中山氏を陥れようとする狙いが分からないと質問しました。
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それに対し中山氏は「もともと土建業の経歴をもつ人ですから、基本的には公共事業がらみでしょう。また彼の鞄持ちをしている別の議員の存在もあります。私は、今まで公共事業の仕事配分などは公平にすべきだと主張してきました。ですから、私が議会に出てくることに違和感があったのでしょう。」とし、さらに

「私は、家業で米や焼酎を扱っていますが、飲食業の人たちなどとのしがらみをすべて断っています。『中山が議会に入ったら大変なことになる』、『おれに任せ』といったようなところが、見え隠れします。」と述べます。
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また中山氏は警察や検察についての言及します。「アリバイがなく事件現場もない事件を、検察は調べもせずに警察のいうことを100パーセント鵜呑みにしてしまいました。いかに警察・検察がもろいかを露呈しました。私は、今までもこういう事件が作られてきたのではないかという気がします。」としたうえで、

「過去の議員の経歴を調べてみましたが、この地域で、1回で当選を果たした人はほとんどいないのです。いま思えば、警察との関係で、何らかの流れができていたような気がしてならないのです。」

「いままでは、約20万の大隅地区に弁護士が1人しかいなかったのです。いまは3人になりましたが、長年警察とでき合っていたような気がします。」と自らの考えをまとめます。
Justitia Goddess Of - Free photo on Pixabay (714193)

上記は志布志事件の被害者となった一個人の意見ではありますが、自らの肌で感じた生の声であり、現場を知っている声でもあります。

個人の意見だけで物事を判断するのはとても危険ですが、この事件の真相となる部分は、地方の強いしがらみ、村全体の暗黙のルールと政治家と警察の癒着があったと思わざるをえません。

政治も警察も信用できなければ何を頼ったらいいのか

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