2019年5月26日 更新

ハーメルンの笛吹き男は実話?その怖いあらすじと男の正体や子ども達の末路

ハーメルンの笛吹き男はグリム童話のひとつ。笛吹きの男が町の子供たちを連れ去ってしまう・・・というのが大まかなあらすじですが、これに実話説があることは御存知でしょうか?ここでは笛吹き男の正体、物語の怖い真実、舞踏病説などの仮説について紹介していきます。

店の名物は「ネズミのしっぽ料理」。本物のネズミではなく、豚肉の細切れを使った肉料理です。この建物は伝説の笛吹き男が宿泊したという噂もありますが、真偽のほどは分かっていません。

旧市街の中央にはマルクト教会、その隣には「結婚式の家」と名付けられた建物があります。この建物には仕掛け時計が作られており、毎日13:05、15:35、17:35には笛吹き男とたくさんのネズミ、子どもたちが笛の音に合わせて現れる催しがあります。

ハーメルンの笛吹き男に関連する記録

Library Book Britannica - Free photo on Pixabay (308498)

博物館やマルクト教会を始め、ハーメルンの町には笛吹き男に関する記録資料が数多く残されています。記録のひとつひとつを調べるだけでも、当時の人々がいかに笛吹き男の物語を深く考察していたかが分かります。

ここではハーメルンの笛吹き男の物語が、いかにして現在へと伝わったか。現代に残っている記録をそれぞれ紹介していきます。記録の特徴や、それぞれの相違点についても解説していきます。

マルクト教会のステンドグラス

Hanover Cathedral Old - Free photo on Pixabay (308503)

マルクト教会はハーメルン旧市街の中心にある、800年もの歴史を持つ古い教会です。第二次世界大戦の爆撃で全壊したものの、戦後見事に復興を果たしました。

笛吹き男の物語に関する記述は、1300年頃教会に設置されたステンドグラスが最古とされています。これには色鮮やかな衣装をまとう笛吹き男と、白い着物を着た子供たちの姿が描かれています。
Church Window - Free photo on Pixabay (313876)

ステンドグラスには、以下のような説明文が添えられています。

「1284年、聖ヨハネとパウロの記念日6月の26日。色とりどりの衣装で着飾った笛吹き男に130人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され、コッペンの近くの処刑の場所でいなくなった」

コッペンはハーメルン近郊の丘ともポッペンブルク山の一部とも言われていますが、正確な場所はよく分かっていません。ステンドグラスには「我らの子供達が連れ去られてから10年が過ぎた」という記述もあります。

合唱書パッシオナーレ

All Saints Girls Choir - Free photo on Pixabay (308510)

合唱書パッシオナーレは、ハーメルン出身のデカン・リューデという人物が1384年頃に書き記した書物です。これには笛吹き男の目撃証言がラテン語詩で記されているそうです。

パッシオナーレの一節には「カルワリオ山に入っていった130人の子供たちが行方不明になった」と書かれており、笛吹き男の事件を言及した詩であることが分かります。

リューデによれば、この詩は彼の祖母が記したそうです。ただしこの合唱書は17世紀以降に失われ、今も行方が分かっていません。

リューネブルク写本

Christmas Time Market - Free photo on Pixabay (308519)

1430年から1450年頃に残されたリューネブルクの写本にも、笛吹き男事件の記録が残されています。物語の言及はマルクト教会が最古ですが、現存する記録はこちらが最古とされています。

ハーメルンの代表的な観光地のひとつ「舞楽禁制通り」は、リューネブルク写本の記録が元になっていると伝わっています。通りを歩く時は歓談を禁じ、祭りや結婚の時でさえ演奏が御法度とされる風習は、1427年には既に定着していたそうです。

神学者ヨプス・フィンツェリウス

Travel Sculpture Statue - Free photo on Pixabay (308523)

16世紀頃になると、笛吹き男の正体は悪魔ではないかという憶測も立てられました。この意見を強く支持していたのが神学者ヨプス・フィンツェリウスで、彼の著書『現代の不可思議について』にこの言及があります。

現代人からすると突拍子もない悪魔説ですが、中世といえば国や人種を問わず迷信が広く信じられている時代でした。

笛吹き男の正体が死神、マグス(魔法使い)ではないかと言われるようになったのも、神学者ヨプスの悪魔説が元になっていると容易に推測できます。

ツィンメルン年代記

Yellowstone National Park Black - Free photo on Pixabay (308529)

ツィンメルン年代記という本にも、ハーメルンの笛吹き男に関する記述があります。著者のフローベン・クリストフ・フォン・ツィンメルン伯爵は、笛吹き男の物語にネズミ退治の話を肉付けした最初の人物でもあります。

本の内容が紹介されたのは1559年頃~1565年頃と言われていますが、ツィンメルン伯爵はこの出来事を「何百年も昔の話」と記しているのみで、ハーメルンの事件が起こった正確な日時にはいっさい触れていません。

腐朽した知識の復権

Painted Turtle Chrysemys Picta - Free photo on Pixabay (308532)

「腐朽した知識の復権」は、オランダの古物収集家にして宗教論争家であったリチャード・ローランド・ヴェルステガン(1548~1636)の著書です。ハーメルンの笛吹き男が英語で記述されたのは、この本が最初だとされています。

本書ではツィンメルン年代記と同じネズミの集団発生が記述されているだけでなく、行方不明になった子供たちがトランシルヴァニアに現れたという、新たな考察もされています。

笛吹き男の容姿を特徴づける「まだら服」は、ヴェルステガンの造語であると考えられています。興味深いことに、本書ではネズミの集団発生も子供たちの失踪事件も同じ1376年の7月22日に起こったと記されています。

憂鬱の解剖

Sanar Black And White Portrait - Free photo on Pixabay (308537)

ハーメルンの笛吹き男は、ロバート・バートンの著作「憂鬱の解剖(1621年著)」でも、超自然現象の一例として紹介されています。著書に記された原文は以下の通り。

「1484年6月20日に、ザクセンのハーメルンで、まだら服の笛吹き男の姿をした悪魔が130人の子供たちを連れ去り、子供達は二度と見つからなかった」

ここでもやはり、笛吹き男の正体は悪魔とみなされていることがわかります。ロバート・バートンも恐らくは神学者だったのか、そうでなくとも信心深い人物だったのかも知れません。

伝説に基づく詩

Outdoors Sky Nature - Free photo on Pixabay (308544)

1803年には、ドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテがハーメルンの笛吹き男を基にした詩を作りました。この詩は音楽家フランツ・シューベルト、フーゴー・ヴォルフに「鼠捕りの男」という題名で歌曲化されました。

ゲーテが著した詩劇の第一部は1808年に出版され、次いで第二部が1832年に出版されました。グリム兄弟はマルクト教会のステンドグラスから始まる数々の記録を「ハーメルンの笛吹き男」という物語にまとめ、ドイツ伝説集の中にこれを収録しました。

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