2019年5月26日 更新

三毛別羆事件は漫画や映画の題材に?事件の詳細と海外の反応は?

史上最大の獣害事件として、映画や漫画の題材にもなっている三毛別羆事件。なぜこのような事件が起こったのか?どうやって解決したのか?ここでは事件の詳細、資料館に展示されている羆の剥製、事件を題材にした創作、海外の反応、事件の生き残りについて解説していきます。

Japan Hokkaido Winter - Free photo on Pixabay (284002)

開拓民に痛ましい傷跡を残した三毛別羆事件ですが、この話には後日談があります。事件を生き残った人々が様々な生涯を遂げる中、最も数奇な運命を歩んだのが大川春義さん(当時6歳)です。

大川さんは成人後に猟師となり、生涯に仕留めたヒグマの数は100以上にも及ぶと言われています。大日本猟友会にも感謝状を進呈されるほどのヒグマ狩り名人として活躍するも、76歳で謎の急死を遂げました。

ここでは大川春義さんの生い立ち、猟師になった経緯、死亡当日の詳細について解説していきます。

大川与三吉の息子、大川春義

Hokaido Snow Blue Sky - Free photo on Pixabay (284342)

大川春義さんは三毛別区長の大川与三吉さんの息子(長男説、三男説あり)で、事件当時は自宅が対策本部になっていたことから、事件の一部始終を見聞きしていました。

子供ながらヒグマの存在を激しく憎むようになった春義さんは、犠牲者の墓前で1人につき10頭、計70頭のヒグマを仕留めて仇討ちにすることを誓ったと言われています。

少年期の春義さんは、自宅を訪れる猟師たちにヒグマの生態や狩猟を学び、その中には三毛別羆事件のヒグマを仕留めた山本兵吉さんの姿もありました。

羆の因縁

Japan Hokkaido Sea - Free photo on Pixabay (284343)

春義さんは徴兵年齢である20歳に達すると、父の貯金で最新式の猟銃(村田銃)を購入。猟師になりました。

当初はヒグマに恐れを成して成果が振るわなかったものの、32歳の頃に初めてヒグマの親子を仕留めると、これを励みに次々とヒグマを仕留めていくようになりました。

仇討ちだけを考えていた春義さんは、ヒグマの高価な毛皮や胆嚢にはまったく興味を示さず、それらを住民たちに無償で提供していたと言われます。
Wintry Backcountry Skiiing Ski - Free photo on Pixabay (286781)

卓越した射撃技術は春義さんが従軍した第二次世界大戦でも存分に活かされ、100m先の動く標的すら確実に撃ち抜いたと言われます。戦後はその技術が更に磨かれ、1969年には50頭の狩猟記録を達成しました。

その後は5連射式のライフル銃を購入し、1977年に計102頭ものヒグマを仕留めました。資料館に剥製として飾られている渓谷の次郎、北海太郎を仕留めたのも春義さんでした。
Antique Gun Rifle - Free vector graphic on Pixabay (286820)

春義さんの偉業は、木村盛武さんをして「これら掛け値ない捕獲頭数は、あだやおろそかな努力では達成できぬ偉業である」と評されるほどでした。

しかし春義さん自身は、引退を間近にして「自分は仇討ちだけを考えてヒグマ狩りを続けてきたが、本当はヒグマだけではなく、その住処を荒らした人間にも責任があるのではないか」とも考えていたようです。

死亡日の朝も健康そのものであった

Bled Slovenia Lake - Free photo on Pixabay (284347)

春義さんは猟師を引退後、三毛別羆事件の犠牲者の慰霊に努めるようになりました。地元住民の協力もあり、三渓神社には「熊害慰霊碑」が建立されました。

ところが事件の70回忌が行われた1985年12月9日のこと。町立三渓小学校で登壇を務めることになった春義さんは「えー、みなさん…」と話し始めると同時に昏倒し、そのまま帰らぬ人となってしまいました。

春義さんは酒もタバコもたしなまず、朝から三平汁を3杯も平らげるほどの健康体でした。三毛別羆事件の発生日と同日に亡くなるという、因縁めいた急逝でした。

今回の事件の戒め

Bear Brown Wild Animal Hot - Free photo on Pixabay (284376)

三毛別羆事件の発端はヒグマの凶悪さだけでなく、猟銃の整備不足も問題の一点に数えられていました。ヒグマを仕留める機会は何度かあったものの、農民たちが銃の扱いに慣れておらず、最初の11月も含め、いつも不発に終わっていました。

他にも、火を恐れる迷信を信じる。ヒグマが標的とする女子供を危険地帯に放置するなど、クマの生態と習性に対する知識不足が、ここまで被害を拡大させてしまったと言えるでしょう。

ここでは世間的に信じられているクマ対策の多くが迷信であること、ヒグマの特性について詳しく解説していきます。

火を恐れることはない

Fire Embers Flame - Free photo on Pixabay (284379)

事件発生時は多くの人がヒグマ避けに火を焚いたものの、それは襲撃の対象となった太田家や明景家も例外ではありませんでした。「野生動物は火を恐れる」という風説はあるものの、ヒグマは灯火や焚き火に拒否反応を示すことはないそうです。

両家の襲撃時に囲炉裏の火を消したのも、ヒグマが火を危険視したからではなく、単なる好奇心で手を出したためと考えられています。

猟銃でさえ、急所を狙わなければかすり傷にもならないのと同じく、火もヒグマには大した効果がありません。

執着心がとても強い

Bear Brown Predator - Free photo on Pixabay (284381)

これは山本兵吉さんが考察したことでもありますが、三毛別羆事件では女性ばかりが被害に遭い、捕食の対象にされてきました。クマは味を覚えると、しばらく同じ味の食料ばかり追い求める習性があります。

その一方で、飼い馬の被害は皆無だったという報告もされています。明景家の襲撃時も胎児は放置し、その他の被害者も女性以外は撲殺するにとどめた事からも、一度味を占めた物に対する、ヒグマの凄まじい執着心がうかがえます。

背を向け逃げる動物を追う

Hare Bunny Rabbit - Free photo on Pixabay (284383)

明景ヤヨさんらが一命を取り留めた理由は、ヒグマが逃げる長松要吉さんに気を取られたためと言われています。クマは捕食中であっても、逃走する相手を条件反射的に追う習性があるのです。

ニュース番組等でもよく言われる事ですが、森でクマに遭遇したら背を向けず、できるだけ刺激しないようゆっくり遠ざかるのが良いと言われています。

ただしこの対策で逃走を試みた男性が、坂に足を踏み外した結果クマに襲われてしまった例も存在するため、正面ばかりに目を向けるのは危険です。

人間の味を覚えた動物は危険

Blood Cells Red - Free image on Pixabay (284385)

一般にクマは人を恐れ、人を襲うのは突然人間と出会った恐怖心から来る行動だと言われています。しかし人間の味を知ったクマは恐怖心が薄れ、人間を無力な獲物と認識するようになります。

火や騒音をまったく恐れないのも、人間の味を覚えたヒグマが獰猛な殺人鬼に豹変してしまうためと考えられています。それらはむしろ、餌(人間)の場所を教えてしまう危険な行為にもなりかねないのです。

そのため、一度でも人間の味を知ったクマは法律上でも危険生物とみなされ、駆除の対象とされます。

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