目次
- 日本国有鉄道（国鉄）で起こった上尾事件
- 当時の高崎線は日本の経済成長に伴い利用者が増加
- 通勤時間帯は特に過激な混雑状況だった
- ダイヤの混乱や他電車の優先によって普通列車の遅延や運休が頻発
- 乗客の不満が高まる中高崎線に関連する組合員は順法闘争を実施
- 順法闘争の実施により約6,000人の乗客が乗車できず小競り合いが発生
- さらに２駅先の駅で運航の打ち切りを決定すると乗客の暴動が発生
- 運転室や電車の窓ガラスを割り運転士は逃げ込む
- 線路の分岐器や信号なども破壊され暴動が激しさを増す
- 上尾事件の遅延・被害事情（13日12時時点）
- 貨物列車運転数が平常時の60％未満まで低下
- 中央快速線において運休40本
- 南武線運休32本
- 京浜東北線運休30本
- 影響人数約71万人
- 大阪地区での影響人数約30万人
- 順法闘争の意味
- 日本では一部の労働組合のストライキが法律で禁止されている
- 労働環境の改善を求めるストライキ以外の方法
- 業務ルールを完全に守ることで作業能率を落とし抗議する方法
- 国鉄は順守闘争を行ったことでダイヤに激しい乱れが生じた
- 順法闘争での要求
- 赤字が膨らんでいたためコスト削減をしたい国鉄側
- 安全確保を建前に人員増員を望む労働組合
- 警報機と遮断機を全ての踏切に設置すること
- 上尾事件の時系列
- 昭和48年3月13日上尾駅で暴動化
- 警察に出動要請があり70人が出動する
- 駅長及び助役は怪我で運ばれ駅員は総撤去
- 警察官が700人に増員
- 他駅でも次々に暴動が発生
- 高崎線は午後7時まで運休
- 逮捕者7名
- 上尾事件の逮捕者と容疑
- 器物破損等で逮捕
- 混乱に乗じ窃盗行為を行ったとして逮捕
- 新聞記者に暴行を加えたとして逮捕
- 暴動を起こした多くの人々は逮捕されなかった
- 上尾事件から首都圏国電暴動事件へ
- 上尾事件が発生しても国鉄当局と労働組合は歩み寄りを見せず
- 昭和48年3月17日ストライキを決行
- 4月24日利用者の不満が爆発する
- 発煙筒や放火など事態はエスカレート
- 38駅で破壊行為が発生
- 138名の逮捕者
- 国鉄（現JR）の損害総額
- 損害額合計9億6,000万円
- 車両損傷1憶円
- 建物修繕費1億2,000万円
- コンピューターなどの電気機械4億1,000万円
- 自動券売機の使用不能により1憶3,000万円
- 乗車券の払い戻し費用2億円
- 売店の破損数千万円
- 上尾事件の根本原因
- 急激な乗客の増加
- インフラ整備の遅れ
- 国鉄職員の怠慢な業務態度
- 自意識を肥大させた労働組合
- 国労宣教部の存在
- 上尾事件・首都圏国電暴動事件のその後
- 国鉄分割民営化の議論
- 当時の政治家三塚博抜き打ち視察
- 車両の更新
- システムの更新
- 国鉄関連事件
- 下山事件
- 国鉄総裁下山定則
- 国鉄三大ミステリー事件
- 1964年時効が成立
- 高度経済成長の影響によって発生した社会の歪み
上尾事件から首都圏国電暴動事件へ
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1973年の春闘で、国労と勤労は順法闘争を争議戦術として経営当局に対抗していましたが、乗客からは批判と反発を招いただけであり、乗客が車両や駅施設を破壊して駅周辺を占拠した暴動は、上尾事件に発展しました。本来であれば、上尾事件が起きた時点で事態の収拾を図るべきでしたが、事態の収拾を図るどころか、首都圏国電暴動事件へと発展するようなストライキを再び行うことにしたのです。首都圏国電暴動事件とは、どんなものなのでしょうか。
上尾事件が発生しても国鉄当局と労働組合は歩み寄りを見せず
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上尾事件が発生した1973年3月から1ヶ月後に春闘が始まりました。上尾事件が発生した時点で国鉄側は事態の収拾を図るべきでしたが、大幅な歩み寄りは見られず交渉は決裂した形となってしまいました。国労・勤労は「権力側が扇動した結果、上尾事件が発生した」と根拠のない反論を繰り返し、乗客たちへ迷惑をかけたことに対しては、一切の謝罪はありませんでした。
自分たちが行った順法闘争によって暴動が起き、国鉄に大打撃となったにも関わらず、また順法闘争を行うとしたのです。乗客たちの怒りが伝わらなかったのでしょうか。
自分たちが行った順法闘争によって暴動が起き、国鉄に大打撃となったにも関わらず、また順法闘争を行うとしたのです。乗客たちの怒りが伝わらなかったのでしょうか。
昭和48年3月17日ストライキを決行
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国労と勤労は、順法闘争を争議戦術として経営当局に対抗していましたが、乗客からは批判と反発を招いただけです。しかし、国労・勤労は乗客への謝罪を拒否したばかりではなく、順法闘争を断続的に再開したのです。3月17日には「半日ストライキ」を決行します。
半日ストライキとは、運行の全てを取りやめるような全面ストライキではなく、列車の運行はするものの本数は平日の５割程度に抑えるようというものです。マスコミは乗客の視点から批判を行い、国労・勤労に対する国民の怒りも、もはや限界でした。
半日ストライキとは、運行の全てを取りやめるような全面ストライキではなく、列車の運行はするものの本数は平日の５割程度に抑えるようというものです。マスコミは乗客の視点から批判を行い、国労・勤労に対する国民の怒りも、もはや限界でした。
4月24日利用者の不満が爆発する
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1973年4月24日、上尾事件から1ヶ月。この日も順法闘争のため国鉄線のダイヤは乱れていました。特にこの日からは4月27日の交通ゼネストを控え、順法闘争を強化していたのです。ゼネストとは、ゼネラル・ストライキの略で、労働者が団結して行う労働争議の一形態で、一企業や組織によるストライキではなく、全国的な規模で行われるストライキのことです。
16時半ごろ、大宮駅では東北本線・高崎線が順法闘争によりダイヤが乱れ60～90分遅れとなっていたこと、そして帰宅時間とが重なったことでホームに乗客が溢れ出していました。一部の乗客が駅長室を占拠する騒ぎとなるなど一時険悪な状況となっていましたが、警備出動要請と合わせてバスなどへの振替誘導をしたことで、かろうじて沈静化したのです。
16時半ごろ、大宮駅では東北本線・高崎線が順法闘争によりダイヤが乱れ60～90分遅れとなっていたこと、そして帰宅時間とが重なったことでホームに乗客が溢れ出していました。一部の乗客が駅長室を占拠する騒ぎとなるなど一時険悪な状況となっていましたが、警備出動要請と合わせてバスなどへの振替誘導をしたことで、かろうじて沈静化したのです。
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しかし赤羽駅の東北・高崎線下りホームでは、一向に到着しない列車に乗客の不満が高まっていました。20時ごろ、青森行急行「津軽1号」を宇都宮駅まで普通列車扱いにするというアナウンスが流れ、定刻であれば19時35分上野を発車するところを20時15分になり、上野駅を発車した時点で超満員になっていたのです。
「津軽1号」の到着前、赤羽駅列車ホームで上り中距離電車が停車中、ホーム上の乗客1,500人が下り電車が来ないことに不満を募らせ、運転士を引き摺り下ろして中距離電車を破壊し始めていました。そのような状況の中、20時30分ごろに「津軽1号」は赤羽駅に到着しましたが、超満員となっていたため駅の乗客は乗ることが出来ず、乗客は機関車を取り囲みます。機関士は恐怖のあまり職務放棄し逃亡、乗客は動かなくなった列車に対して破壊行為をし始めるのです。
そのため国鉄は京浜東北線へ乗客を誘導するアナウンスを開始しますが、この時、京浜東北線北行の電車も赤羽駅手前で信号機故障により運転見合わせとなっており、乗客が線路を歩き駅へ向かう事態となっていました。21時頃には赤羽駅には6,000人もの人で溢れ、駅長室を占拠し暴れ、駆け付けた機動隊に対して気勢を挙げて対峙ずるなどの暴動へと発展してしまうのです。
「津軽1号」の到着前、赤羽駅列車ホームで上り中距離電車が停車中、ホーム上の乗客1,500人が下り電車が来ないことに不満を募らせ、運転士を引き摺り下ろして中距離電車を破壊し始めていました。そのような状況の中、20時30分ごろに「津軽1号」は赤羽駅に到着しましたが、超満員となっていたため駅の乗客は乗ることが出来ず、乗客は機関車を取り囲みます。機関士は恐怖のあまり職務放棄し逃亡、乗客は動かなくなった列車に対して破壊行為をし始めるのです。
そのため国鉄は京浜東北線へ乗客を誘導するアナウンスを開始しますが、この時、京浜東北線北行の電車も赤羽駅手前で信号機故障により運転見合わせとなっており、乗客が線路を歩き駅へ向かう事態となっていました。21時頃には赤羽駅には6,000人もの人で溢れ、駅長室を占拠し暴れ、駆け付けた機動隊に対して気勢を挙げて対峙ずるなどの暴動へと発展してしまうのです。
発煙筒や放火など事態はエスカレート
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21時半ごろには、1番線に停車中だった京浜東北線の電車内で発煙筒が燃やされ、車内も破壊されてしまいます。22時半ごろには、運転台を放火する人まで現れたのです。あまりに騒動が大きくなり、運転を再開するどころではなく、この事件でも機動隊が出動することになります。
赤羽駅での列車運行停止は、山手線などにも影響が及んで次々と国電の列車運行が停止するという事態となり、暴動が他の駅にも波及していきます。
赤羽駅での列車運行停止は、山手線などにも影響が及んで次々と国電の列車運行が停止するという事態となり、暴動が他の駅にも波及していきます。
38駅で破壊行為が発生
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首都圏国電暴動事件では、赤羽駅や新宿駅だけでなく、周辺の渋谷駅・有楽町駅・秋葉原駅など全部で38駅で駅舎や電車の破壊、放火を始めとする暴動事件が同時多発的に発生しました。上尾事件では10000人の群衆でしたが、首都圏国電暴動事件の群衆は32000人を超えたとも言われています。
上尾事件でも暴動にまぎれて駅舎の現金を強奪する事件がありましたが、首都圏国電暴動事件では現金だけでなく切符や売店の商品など合わせて1000万円もの被害が出たと言われいます。金額だけをみても、上尾事件とは比べ物にならない程の規模であるということは一目瞭然です。
池袋駅では、国鉄に全く関係ない人同士のケンカが発生したり、神田駅ではタクシーに投石する人がいるなど暴徒が暴れたことで、警視庁は22時頃に機動隊に事態収束の命令を出し、駅員及び電車車両や駅舎の保護を行いました。また、各駅長に対しては駅員を駅の外に出さず現場で待機させるよう要請しました。
上尾事件でも暴動にまぎれて駅舎の現金を強奪する事件がありましたが、首都圏国電暴動事件では現金だけでなく切符や売店の商品など合わせて1000万円もの被害が出たと言われいます。金額だけをみても、上尾事件とは比べ物にならない程の規模であるということは一目瞭然です。
池袋駅では、国鉄に全く関係ない人同士のケンカが発生したり、神田駅ではタクシーに投石する人がいるなど暴徒が暴れたことで、警視庁は22時頃に機動隊に事態収束の命令を出し、駅員及び電車車両や駅舎の保護を行いました。また、各駅長に対しては駅員を駅の外に出さず現場で待機させるよう要請しました。
138名の逮捕者
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東北線・上越線など上野駅を終着とする特急・急行は、順法闘争と暴動の影響により、途中での足止めや列車運休などで、乗客が社内で一晩過ごす事態になりました。青森駅では、25日に列車運行の見込みがないとして、バスを借り切って東京へと向かう人も居たようです。
帰宅困難者が多数発生したことで、24日夜は営団地下鉄が29本・京王帝都鉄道が9本の特発を出し終夜運行を実施、東急・都営地下鉄以外の各社はいつでも終夜運転可能な体制を取っていました。
25日、松戸駅では運行されない電車に対して乗客100人が駅事務所に押しかけ、助役らを拉致して綾瀬駅まで歩かせるといった事件も起きています。そんな大混乱となったことで、25日未明までに、窃盗・放火等の罪で138名が逮捕されました。
帰宅困難者が多数発生したことで、24日夜は営団地下鉄が29本・京王帝都鉄道が9本の特発を出し終夜運行を実施、東急・都営地下鉄以外の各社はいつでも終夜運転可能な体制を取っていました。
25日、松戸駅では運行されない電車に対して乗客100人が駅事務所に押しかけ、助役らを拉致して綾瀬駅まで歩かせるといった事件も起きています。そんな大混乱となったことで、25日未明までに、窃盗・放火等の罪で138名が逮捕されました。
国鉄（現JR）の損害総額
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1973年4月24日から再び順法闘争が開始され、4月27日には国鉄・私鉄ともに全面ストライキが予定されており、乗客たちはこの事態にうんざりしていました。上尾事件の鬱憤は、乗客たちの中でくすぶっており順法闘争開始当日に爆発したのです。上尾事件の暴動があった1か月後であり、赤羽駅での暴動の報が伝わると、上野駅・新宿駅の乗客たちは一斉に暴動化し、あっという間に首都圏の各駅に連鎖していくのです。
同時多発的暴動は、恐ろしいほどの被害状況となり、磯崎総督は26日の衆議院運輸委員会において報告を行っています。
同時多発的暴動は、恐ろしいほどの被害状況となり、磯崎総督は26日の衆議院運輸委員会において報告を行っています。
損害額合計9億6,000万円
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多くの駅で乗客たちは駅長室を占拠するなど、38もの駅で破壊・放火を含む被害に遭い同時多発的大暴動となりました。上尾事件が起きた後、問題解決することなくストライキを決行した国鉄・当局の責任は大きく、また乗客たちは上尾事件のときの不満は残っていたため再び暴動を起こしたのです。
その損害額は合計9億6,000万円という凄まじい金額となりました。この金額は当時換算なので、現代においてはこの4～5倍と考えてもいいと思います。想像を絶する金額です。
その損害額は合計9億6,000万円という凄まじい金額となりました。この金額は当時換算なので、現代においてはこの4～5倍と考えてもいいと思います。想像を絶する金額です。
車両損傷1憶円
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