2019年6月8日 更新

国鉄で起きた上尾事件の概要と被害状況とは?根本的な原因やその後も

上尾事件は、国鉄でストライキや順守闘争が関係した事件です。国鉄と乗客の間で暴動が起き、後の首都圏国電暴動にまで発展していきます。高崎線にある上尾駅で、なぜ暴動が起きたのでしょうか。上尾事件の概要について紹介していきます。

目次

国鉄は順守闘争を行ったことでダイヤに激しい乱れが生じた

Crowd Overpopulation Chaos - Free photo on Pixabay (342562)

この順法闘争により、上記のようなことをやっていてノロノロ運転となりダイヤが乱れ、それと同時に前日までのダイヤ乱れが解消できず運休続発となりました。加えて通勤型でも近郊型でもなく、2扉の急行形電車を3本運休したあとの列車に投入したので、混雑で身動きが出来ない状態でした。しかも上尾駅に電車が到着した段階で超満員なので、そこに乗ろうとしたが乗れるわけもなく、またダイヤが乱れるという悪循環に陥りました。

順法闘争での要求

Ask Sign Design - Free photo on Pixabay (342586)

上尾事件の起きた頃、国鉄では賃金上げや労働環境の改善・合理化反対を目指して、労働闘争が頻繁に行われていました。そして当時の国鉄の2大組合である国労(国鉄労働組合)と動労(国鉄動力労働組合)は、「昔・陸軍・今・濃国労」「鬼の動労」などと言われるほど絶大な権力を誇り、歴代の経営陣は全く手の出せない状況にあったのです。

上尾事件当時に、運営側から2大組合からの順法闘争での要求とはいったいどんなものだったのでしょうか。

赤字が膨らんでいたためコスト削減をしたい国鉄側

Dollar Currency Money - Free photo on Pixabay (342634)

国鉄は1960年代から赤字経営が常態化しており、1970年代に入ると膨大な赤字を抱え破綻寸前に陥っていました。その原因は人件費の異常な増加、なにより組合が強すぎて合理化が全く進まないばかりか、毎年のように賃金が上がり人件費が膨れ上がっていく状況で、国としてはたまったものではありません。

赤字解消に向け国鉄は「国鉄機関士1人乗務」を提唱していたが、動労は組合の死活問題(職を奪われるという不安)として反対し続け、S42年の暮れからストライキやATS闘争を繰り返してきました。

安全確保を建前に人員増員を望む労働組合

Loco Steam Locomotive Train - Free photo on Pixabay (342653)

「安全のため」2km以上のトンネルがある区間と深夜時間帯の運転士を2人勤務にするという要求を行っている。運転士2人勤務とは蒸気機関車(SL)時代の名残だったが、SLが電化や気動車の導入など動力近代化が推進され、全廃の方向に向かったことや保安設備の近代化によって機関助士の出番が無くなり運転手は1人でまかなえるようになった。このため経営陣と動労は1972年5月までに蒸気機関車や特別な事情がある場合を除き運転士1人勤務を原則とする労働協定が締結されています。

ところが動労はSLの終焉が早まったためか、1973年になって2人勤務の話を蒸し返し、2月1日から「第2次順法闘争」がはじまり、3月5日から散発的に全国的に順法闘争を実施したのです。安全確保を建前に、職を奪われることを恐れた結果の順法闘争でした。これについて経営側は、拒否しています。

警報機と遮断機を全ての踏切に設置すること

Level Crossing Railway Line - Free photo on Pixabay (342661)

踏切において道路を通行する歩行者や車両運転者等に対して音と光によって列車が接近していることを警告するために用いられるものを警報装置、踏切などにおいて優先される交通を確保するためなどに用いられる通行を制限するための装置を遮断機といいますが、これらがあるため踏切での事故というのは少なく、安全を確保されていると言っても過言ではありません。

上尾事件当時は、全ての踏切には遮断機などが設置されていませんでした。そのため、2大組合は、踏切事故を防ぐために警報機と遮断機を全ての踏切に設置することを要求したのです。これに対して経営側は、全部は無理だが実施するとした回答をしていました。

上尾事件の時系列

Clock Pocket Watch Movement - Free photo on Pixabay (342961)

日本では、暴動事件というのはほとんど起きないため、想像がつかない・暴動があったなんてと驚く人もいるのではないでしょうか。上尾事件が起きた当時、今では考えられないほど鉄道関係は破綻寸前であり、自分たちで行動し改善を要求しなければならない状況でした。

そんな中でのストライキと同様の順法闘争を行ってきた国鉄側と、その被害に遭った乗客。その上尾事件について時系列でくわしく説明していきます。

昭和48年3月13日上尾駅で暴動化

Railway Station Cologne Train - Free photo on Pixabay (342962)

昭和40年代は高度経済成長の真っ只中であり、東京近郊の埼玉・千葉などでは大規模な公団住宅が次々に建設され、ベットタウン化が急速に進みました。特に高崎線の上尾、桶川、北本、鴻巣では急速な人口流入が続き、上尾市の人口は10年間で約2倍になるという全国1の人口急増地域となっていた。
 
しかし東京へ通勤をする人々に対する公共交通機関の整備は進まず、朝夕のラッシュ時の乗車率は240%を越えるほどの混雑で、車内では揺れる度に苦痛を耐えるうめき声がもれる程の超満員。電車がホームに止まる度に待ちかねた乗客が無理やり乗り込んでくる、それでも乗客からは怒りの声も上らず、毎朝苦痛に耐えて通勤していました。

この混雑に追い討ちをかけるように国鉄と労働組合との労使交渉が紛糾、組合側は職員の合理化反対、事故防止のための鉄道施設の安全確保等を掲げ、ストライキや順法闘争を繰り広げており、通勤ラッシュに一層の拍車をかけていた。
India Mumbai Bombay - Free photo on Pixabay (342966)

事件当時、普通電車の運行が少なく、定員840名に対して3,000人ほどの乗客が電車に乗る事態となっていました。前日に起きた順法闘争が原因で、前日に遅れてしまった電車が、次の日になっても遅れていたのが原因です。高崎線上尾駅では、多くの乗客が待機している中、1時間に1本しか電車が来ないという状況だったのです。

電車は定員オーバー状態で、何時間待っても電車に乗れない状況でイライラしている中で、「運転打ち切り」のアナウンスが流れたことで、乗客の怒りが爆発し暴動化するのです。乗客はまず運転士に対して怒りをぶつけようと、運転室の窓ガラスを割り始めます。運転士は恐怖のあまり駅長室へ逃げますが、乗客は駅長室まで追いかけ中になった機材等を壊し始めるのです。
Fist Strength Anger - Free photo on Pixabay (342975)

その後、他の停車していた電車でも暴動が起こり、最終的には分岐器や信号が壊されたり、ヘッドマークも破壊される結果となります。損傷が激しく、これ以上の運行は不可能と判断されることになりました。

上尾駅には6,000人が待機している中、3,000人を乗せた電車が到着。さらにバスで駅に来た乗客も合わせ1,0000人を超える人がいたと言います。そんな人数が怒りで破壊行為を繰り出したのです。乗務員たちが制御できるわけがありません。

警察に出動要請があり70人が出動する

Police Urn Esu The Riot - Free photo on Pixabay (342976)

上尾駅は1,0000人を超す暴徒化した乗客の破壊行為によって、列車の運転設備をはじめ駅の分岐器や信号機なども破壊されてしまい運行不可能な状態になってしまいました。国鉄の職員や列車の乗務員だけでは乗客を整理することができず、混乱はますます大きくなっていきました。

暴徒化した乗客を止めようとした多くの駅員や乗務員がケガをしたことで、駅員・乗務員は全員で駅を退避せざるを得ない状態となってしまい、暴動の沈静化には機動隊が対応することになったのです。事件が始まって2時間ほど経ち、機動隊が集まり70人で暴動の沈静化にあたりました。

駅長及び助役は怪我で運ばれ駅員は総撤去

Ambulance Medical Vehicle - Free vector graphic on Pixabay (342979)

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