2019年9月7日 更新

四日市ジャスコ誤認逮捕事件とは?冤罪が中々認められない理由は?

四日市ジャスコ誤認逮捕事件は、事件が解明されないまま、うやむやになってしまった悲しい事件の一つです。被害者は、加害者に仕立てられただけではなく、遺族や本人共に大きな被害も被りました。この記事では、事件の真相と、警察の不適切な対応についてご紹介していきます。

目次

女性は、男性がATMに立ち寄る数分前、店内にいました。店は、事件が発生したATMから3~4メートル程度しか離れていません。女性は店内で買い物していたわけではなく、ATMを訪れる人々を物色していたと考えられます。

その理由は、女性が店内からATMを数回うかがう仕草を、監視カメラがとらえられていたからです。つまり、加害者に仕立て上げた女性は、自分より力の弱そうな被害者男性に目を付け、ATMを訪れた可能性が高いでしょう。

被害者男性の体を執拗に触った

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ATMに訪れた男性を見計らったように、女性がATMに入室します。その後女性は、ATM機を操作するわけでもなく、男性に近づき、肩をぶつけた後身体を執拗に触り始めました。その映像は、ATM内に設置されていた監視カメラにも収められています。

女性は男性の身体を触りながら、何かを奪おうとしていました。男性が女性に抵抗するような素振りを見せた時、女性は男性に向かって「泥棒」と叫びます。監視カメラの映像からもわかるように、男性は自ら女性に接近したわけではないのです。

財布やキャッシュカードの窃盗目的

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女性が「泥棒」と叫ぶと、騒ぎを聞きつけて近くの店を訪れていた買い物客が数人、ATMコーナーに入ってきました。被害者男性が買い物客や店員に取り押さえられると、女性は突然姿を消します。

こういった映像から、男性に接触したのは女性であり、その目的は財布やキャッシュカードを奪う目的であったと考えられるでしょう。女性は子供を抱えていたことから、常習ではなく、突発的に窃盗行為におよんだと考えられます。

他には、男性と以前トラブルもしくは一方的な逆恨みから、男性を陥れる目的で騒ぎを起こした可能性も考えられるでしょう。いずれにしても、被害者男性を死亡させてしまったことから、真相究明は難しくなりました。

冤罪を認めつつ争う姿勢を見せる警察の矛盾

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四日市ジャスコ誤認逮捕事件では、時間がかかったものの、警察側は男性の無罪を認め、誤認逮捕であったことも公式に発表しました。しかし、遺族が起こした裁判では、徹底的に争う姿勢を見せるという矛盾した姿を、世間に見せつけたのです。

ここからは、遺族が裁判を起こした理由と、警察がどういった内容で争ったのか詳細にご紹介していきましょう。また、遺族が裁判を起こす際、「金目的」という間違った世間の認識についても、解説していきます。

2007年誤認逮捕され死亡した男性の遺族が民事訴訟を起こす

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加害者に仕立て上げられ、命を落としたの男性の遺族は、2007年に三重県を相手取り民事訴訟を起こしました。警察官を訴えたい場合、公務員個人ではなく国または公共団体を訴えることになります。

2007年時点では、警察側は男性の無実を発表していなかったため、被害者遺族は男性の無実を証明するために裁判を起こしたのです。被害者遺族は、三重県を相手取り、損害賠償として約5,700万円支払うようにという訴訟を起こします。

被害者側が国や公共団体を訴えると、「金が欲しいからだ」と主張する人々がおり、その発言は遺族に深い悲しみを与えてきました。
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四日市ジャスコ誤認逮捕事件で被害者遺族が裁判を起こした際も、こういった批判、そしてそれに便乗するような被害者遺族への心無い言葉が飛び交います。これまで、無言を貫いてきた遺族が、なぜ、今になって裁判を起こそうと思ったのか、考えてみましょう。

裁判を起こすには、長い時間と労力、そして金銭的負担が生じ、決して楽なものではありません。被害者遺族がそうまでして、何を求めたのか、冷静に考えればわかりそうなものです。

三重県側は対応が適切だったとし争う姿勢を見せる

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三重県側、つまり警察側の主張は、男性への対応や現場での対応は適切であったと主張し、遺族と徹底的に争う姿勢を見せました。

68歳の男性を、約20分にわたって押さえつけたことも、嘔吐が見られた時、すぐに救急車を手配しなかったことも、当事者の女性を取り逃がしたことも、正常で真っ当な職務遂行だったと主張したのです。

年齢や容姿、性別によって拘束に関する対応を変えることは、被疑者の逃走に繋がるため、20分間緊張感をもって拘束し続けた警察職員は正しい判断をしていると主張しました。また、拘束と死亡の因果関係を問われること自体、遺憾だとも発表しています。
Barbed Wire Video Camera - Free photo on Pixabay (612729)

さらに、事件の当事者である女性の公開捜査を行わない理由も、真っ当であり今後も行わないという主張を繰り返しました。

女性の公開捜査を行わない理由は、女性が一般人で被害者であるというものですが、窃盗罪が成立していなかったという見解を双方にしていたにも関わらず、被害者という位置づけは不可解と言えます。

2010年原告の訴えを一部のみ認め880万円の支払いを命じる

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被害者と三重県側の主張は大きく食い違い、それぞれ譲る姿勢を見せませんでした。遺族の主張は、警察官の違法な制圧行為によって、被害者男性は死亡したというものです。2010年11月18日、地方裁判所は被害者遺族の主張を一部認め、三重県側に880万円の支払いを命じます。

四日市ジャスコ誤認逮捕事件での警察の制圧行為は、限度を超え違法だったと認定するも、被害者男性が死亡した直接の理由だとは言いづらいという理由から、地方裁判所は被害者遺族の主張を退けたのです。

遺族側は判決を不服とし控訴

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2010年11月27日、遺族側は地方裁判所が下した判決を不服とし、控訴しました。遺族が控訴した理由は、880万円という支払額が原因ではありません。遺族側は、死亡した男性は無罪であり、何の罪もない1人の人間が、警察官の判断によって死亡したという事実を、認めさせることでした。

また、早急に誤認逮捕であることを、警察に認めさせることを目的としていたのです。遺族側が無罪だと信じていても、世間は警察や司法の判断を尊重します。このままでは、被害者男性はいつまでも、窃盗により死亡したと思われ続けることになり、それは残された遺族にとって深い悲しみでしかないのです。

2011年名古屋高等裁判所は3,640万円の支払いを命じる

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一審では、死亡した男性は、その場にいた女性やその他に居合わせた買い物客から泥棒扱いされ、押さえられた際も過度なストレスを感じていたと考えられました。こういったことから、死亡要因が警察側だけとは言いづらく、警察官によって殺されたという被害者遺族の主張を一部のみ認める判決となります。

しかし二審では、一審判決が不当だという判決となりました。体重94キロの男性警察官に20分間押さえつけられた状況は、他買い物客の取り押さえとは異なり、はるかに強いストレスを与えたと認定され、三重県にたいして被害者遺族に、3,640万円の支払いを命じる判決に変わります。

警察から遺族に対して公的な謝罪は一切ない

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