2019年6月12日 更新

江戸しぐさは嘘や捏造がほとんど?江戸しぐさの例一覧と矛盾点

江戸しぐさとは、江戸時代に通用していたとされるマナーのことです。一時期メディアで大きく取り上げられ、学校の道徳教育にも取り入れられましたが、現代では嘘のマナーだったとされています。今回は、江戸しぐさとされるマナーの一覧や捏造説などについて、詳しく解説します。

江戸しぐさは、江戸時代の商人・町人のネットワークの中で伝承されていったマナーであるとされています。しかし、江戸しぐさの存在を証明する文献資料は皆無であり、学問的な検証は不可能です。

江戸しぐさの存在を信じる人たちは、時の政府によって文献資料が燃やされてしまったから資料がないのであり、不自然なことではないと主張しています。
Books Reading Read - Free photo on Pixabay (357654)

しかし、江戸時代に江戸っ子の間で広く親しまていたマナーの資料がどこにも残っていないというのは、やはり不自然です。直接的な資料がなくとも、落語や俳句などにそのような文化が描かれるはずですが、江戸しぐさに関連する記述は見当たりません。

江戸しぐさは、学問的な検証に耐えうるものではないのです。実際に、歴史学者や民俗学者からはまともに相手にされていません。

江戸しぐさの存在を主張する人の言い分が首尾一貫していない

Truth Lie Business - Free photo on Pixabay (357663)

先に解説した通り、江戸しぐさは戦後、小林和雄によって復興され、越川禮子が中心となって普及させたマナーです。江戸しぐさの存在は、小林や越川の主張による部分が大きいのですが、彼らの主張が首尾一貫していないという批判があります。

江戸しぐさ衰退の理由は、政府による江戸っ子虐殺であるという説はすでに解説した通りです。しかし、江戸しぐさを復興した小林は、政府による虐殺などということは言っていません。
Road Sign Attention Shield - Free image on Pixabay (357667)

小林は、江戸しぐさ衰退の理由を「明治時代に入って江戸っ子自身が自ら語らなくなってしまったため」と説明しており、江戸っ子虐殺などという話は出てきません。

しかし、江戸しぐさの普及に努めている越川は、政府による虐殺説を主張しており、師と弟子で主張が異なってます。他にも小林と越川で主張が異なる点が多々あり、多くの人から批判されています。

具体的な江戸しぐさの例とその矛盾点

Japanese Cherry Trees Flowers Pink - Free photo on Pixabay (357677)

江戸しぐさとされているマナーは多数ありますが、それらのマナーが江戸時代に存在していたとすると、明らかにおかしい点があるという批判もあります。

具体的な江戸しぐさの例とその矛盾点について解説します。

傘かしげ

Umbrella Asia Myanmar - Free photo on Pixabay (357683)

最も有名な江戸しぐさと言われているのが、「傘かしげ」という所作です。傘かしげとは、傘を差して道を歩いている際に、同じく傘を差している人とすれ違うときに傘を外側に傾けてぬれないようにするという所作のことです。

このマナー自体は確かに良いことですが、江戸時代の文化とは明らかに矛盾する点があります。そもそも江戸時代の傘は高級品であり、庶民が簡単に手を出せる代物ではありませんでした。
Girl Umbrella Rain - Free photo on Pixabay (357685)

江戸時代に一般的だった雨具は傘ではなく、笠(頭に被る日よけ、雨よけ)や蓑(藁で作られた雨よけで衣服の上にまとう)だったため、このようなマナーが江戸に存在したとは考えにくいという批判があります。

また、江戸時代の狭い路地で傘を傾けてしまうと逆に歩きづらくなってしまうため、むしろ迷惑なのではないかという指摘もあります。

こぶし腰浮かせ

Train Railway S Bahn - Free photo on Pixabay (357689)

「こぶし腰浮かせ」とは、乗り物に乗る際にこぶし1つ分を空けて座るマナーのことです。江戸時代の狭い舟に乗る際に、後から座る人のスペースを確保するという意味があり、現代の電車内でのマナーにも適用できます。

ただし、このようなマナーが江戸時代に存在していたとは考えられないという批判があります。江戸時代の舟にはそもそも座席がなかったため、このようなマナーがあってもほとんど役に立たないというのです。

むしろこのマナーは、電車のように長い座席のある乗り物が存在する現代こそ有効なため、現代人による創作・捏造だと批判されています。

時泥棒

Clock Alarm Watch - Free photo on Pixabay (357701)

先に少しだけ触れた「時泥棒」というマナーを具体的に解説しましょう。時泥棒とは、突然相手を訪問すると相手の時間を奪ってしまって相手に失礼なので、必ず事前に約束を取り付けるというマナーです。

しかし、繰り返しになりますが、江戸時代の時間感覚は現代の時間感覚よりも相当ルーズです。江戸時代の時の数え方は不定時法(日の出から日の入りまでを12で割って1時間の長さを算出する方法)であり、季節によって時間の長さが全く違っていました。
Time Management Stopwatch - Free image on Pixabay (357704)

時計も普及しておらず、人々が時間を正確に知る手段もない江戸時代に、このようなマナーが存在したとは考えにくいと批判されています。

日本で時間を正確に守ることを良しとするマナーが生まれたのは、明治以降です。政府主導で時間についての教育が行われた結果、このようなマナーが生まれたと考えられています。

逆らいしぐさ

The Old Man Beard Texture - Free image on Pixabay (357711)

逆らいしぐさとは、年長者の教えに対して逆らうような言葉や態度のことです。江戸時代の商人の間では、このようなしぐさは厳禁であり、年長者を敬っていたとされています。

年長者を敬うことを良しとする考えは、現代にもあります。しかし、厳しい商売の世界で、年長者の教えに逆らってはいけないなどという考えが本当に通用するのかどうかという批判があります。
Hand Walking Stick Arm - Free photo on Pixabay (357712)

そもそも年長者を敬うという考えは、儒教の影響を強く受けたものです。江戸時代以前は、仏教の僧侶などによって学ばれており、江戸時代以降は武士の基礎教養となりました。商人ではなく、僧侶や武士などの教養ある身分の考えです。

明治以降に広く庶民に教育が普及した結果、このようなマナーが生まれたとされており、江戸時代の庶民にはない考えであると批判されています。

ロク

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