2019年3月4日 更新

今さら聞けない「いとおかし」の意味!枕草子や源氏物語との関係は?

知っておきたい「いとおかし」の意味。知れば知るほど面白くなる平安時代の女流文学。今生きてる私たちとそんなに変わらなかった? 「枕草子」と「源氏物語」を通して、当時の女性たちの魅力に迫ります!

目次

・・・・鶏のひなの、足だかに白うをかしげに、衣短なるさまして、ひよひよよかしがましう鳴きて 人の後先(しりさき)に立ちてありくもをかし・・
(鶏の雛が、細長い足をひゅっとだし、白く愛らしい姿で、ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後ろや先に立って歩きまわるのは面白くてかわいい)
                      「枕草子」

すぐれている 見事だ 素晴らしい

Moon Night View Superman - Free photo on Pixabay (83602)

・・・・笛をいとをかしく吹き澄まして,過ぐるなり「更級日記」
   (笛を見事に吹いて、通り過ぎてしまった)

滑稽だ 変だ 可笑しい

Sheep Bleat Communication - Free photo on Pixabay (83609)

・・・・妻、をかしと思ひて笑ひてやみにけり「今昔物語」
  (妻は滑稽と思って、思わず笑ってしまった)

枕草子ではどのように使われた?「をかし」の例文

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紫式部も、清少納言も、和泉式部、菅原孝標女(たかすえのむすめ)といった、平安女流文学のスターたちは受領階級の家の娘たちです。今でいうと、中流インテリ階級の娘という感じでしょうか。経済的にも裕福で自由な気風があり、かなりのびのびと育てられた女性たちです。

清少納言の枕草子を読むと、大胆で正直な発言が多いことに気が付きますが、育った背景の自由な環境を考えると、納得できるところがあります。

たとえば以下の例文を読むと、清少納言が、どういった女性だったかがうかがえます。

百八十二段 好き好きしくて人かず見る人の・・(色好みでプレーボーイの)
 …暁に帰りて、やがて起きたる、ねぶたげなるけしきなれど、硯取り寄せて、墨こまやかに押し磨りて、事なしびに、筆にまかせてなどはあらず、心とどめて書くまろひげ姿もをかしう見ゆ。

(女と会って、明け方に帰ってきたプレーボーイがそのまま起きている。眠そうな様子だけど、「後朝の文」(きぬぎぬのふみ)を、昨夜会っていた女に出すために、硯を引き寄せ、墨をていねいにすって、通り一遍に筆に任せるのではなく、心を込めて書いている。そのくつろいだ姿ってなんて優雅で素敵なの。)

ここでは「こういう男って好みよ!」という感じで「をかし」が使われてますね?

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さらに続きを見てみましょう。

・・・・手洗ひて、直衣(のうし)ばかりうち着て、六の巻(まき)そらによむ、まことにたふたきときに、近きところなるべし、ありつる使ひうちけしきばめば、ふとよみさして、返事’(かえりごと)に心移すこそ、罪得らむと、をかしけれ。

(手を洗い、直衣をはおって、法華経をそらんじている。何とも尊い感じなのに、使いのものが、先ほどの手紙の、女からの返事を持ってくると、お経もやめて、夢中になって手紙を読み始める。罰があたるんじゃないかしら、おかしくって)

ここでは、この色男め!って感じで「をかし」が使われてますね。
Ladybug Drop Of Water Rain - Free photo on Pixabay (83862)

・・・・夏は夜。月の夜はさらなり。闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。また、ただ、ひとつふたつなど、ほのかにうち光りてゆくもをかし。雨など降るもをかし。

(夏はやっぱり夜。月が出ていれば最高だけど、月のない闇夜でも蛍なんかがとびかっているのがいい。ほのかに光る蛍が一つ二つ飛んでいるのも風情があるわ)

有名な第一段 春はあけぼのです。ここでの「をかし」は風情あるという意味で使ってますね。

Baby Girl Sleep - Free photo on Pixabay (83878)

第百四十五段 うつくしきもの

・・・・をかしげなるちごの、あからさまに抱きて、遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。
(愛らしい赤ん坊をあやして遊んでいるうちに、縋り付いて寝てしまうのって、ほんとうにいじらしい)

ここでは、愛らしいの意味で(をかし)が使われています。

他にはどんな言葉があった?平安時代の言葉

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それでは、平安時代には、ほかにどんな言葉がよく使われていたのかを見てみましょう。

もののあはれ

Autumn Leaf Colorful Color - Free photo on Pixabay (83890)

平安時代の言葉というとなんといってもあとは「もののあはれ」ですね。

「あはれ」というと、なんといってもこの人でしょう。

心なき身にもあはれは知られけり鴫たつ澤の秋の夕暮      西行法師

「あはれ」は一言でいえば無常観です。仏教とも関係しますが、日本人には、とてもなじみのある感性ですね。

また、
・・・・あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊やりのふすぶるもあはれなり。「源氏物語」

(みすぼらしい家に、夕顔の咲くのがちらっと白くみえて、蚊やりの煙がたっているのも寂しくていい感じだ)

有名な「夕顔」です。この時代は、美意識が洗練されていたので「いかにも」という構え方が嫌われました。廃屋に近い豪邸に美しさを感じたり、みすぼらしい家に高貴な人がひっそりすんでいるのが奥ゆかしさだったのです。

わろし

Still Life School Retro - Free photo on Pixabay (83953)

・・・・ふと心おとりとかするものは、男も女もことばの文字いやしう使ひたるこそ、よろづのことにまさりてわろけれ。
  (ふっと軽蔑したくなるのは、男でも女でも品のない言葉を使うのが何よりもみっともない)        「枕草子」

「わろし」は今使われている「悪い」と変わらないですが、この場合はみっともないです。

・・・・年頃はわろく描きけるものかな。「宇治拾遺物語」
  (長い間下手な絵を描いてきた)
この場合は下手という意味です。

・・・・年頃、わたらいなどもひどくわろくなりて・。・「大和物語」
  (長年の間に暮らし向きもひどく貧しくなって・・)
これは貧しいという意味でつかわれている「わろし」ですね。

・・・・いやしきこともわろきことも、さと知りながらことさらに言いひたるは、あしうもあらず。・・「枕草子」
 (品のない言葉も悪い言葉も、知りながら使うのは、それほど悪くはない・・)
この場合は「悪い」です。

ちなみに、「あし」は奈良時代から使われてましたが「わろし」は平安時代から見られるそうです。

めでたし

Wisteria Blue Rain Flowers Climber - Free photo on Pixabay (83985)

・・・・藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし。「枕草子」
  (藤の花は、花房のしだれがながく、藤色の濃いのが素晴らしい)

「素晴らしい」という意味の「めでたし」です。

・・・・果報こそめでたうて、大臣の大将にいたらめ。「平家物語」
(前世の果報が喜ばしいので、近衛の大将になるのであろう)

「めでたし」はおめでたいの意味に近い、喜ばしい、ですね。

つきづきし

Forest Fog Trees - Free photo on Pixabay (84048)

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