2019年5月26日 更新

津山事件の詳細と都井睦雄の生い立ち!犯行の動機になった村の悪習

日本史上最悪の大量殺人事件、津山事件を知っていますか?「津山30人殺し」という言葉の方が有名かもしれません。今回は、たった1人で集落内の村人を30人も殺した犯人、都井睦雄の生い立ちと、「昭和の鬼熊事件」と報じられていた、戦慄の津山事件について紹介します。

Moonlight Night Photograph - Free photo on Pixabay (327106)

集落を阿鼻叫喚に陥れた、睦雄の襲撃は約1時間半で終わりました。当初の計画は果たしたのでしょう、まだこの時は警察も来ておらず、睦雄は一人で移動を始めます。

事件後、彼は最後の決意を実行する為に、静まり返った集落を後にし、次の行動に移りました。ここでは、事件後の睦雄の行動について紹介していきます。

隣の集落で遺書を書く

Paper Note Memo - Free vector graphic on Pixabay (327114)

血まみれのまま睦雄は、隣の集落へと移動して一軒の家に入りました。そこの家の主達は、異様な姿の男の訪問に、腰を抜かすほど驚きました。

睦雄は最後に、遺書を書く紙が欲しくて訪れただけなのですが、突然夜中に、武器を持った男が現れたのですから、恐怖でしかありません。しかし、そこにいた子供が睦雄だということに気が付き、恐る恐る声を掛けました。その子は、睦雄のお話を聞きに来ていた子供で、睦雄はその子に紙と鉛筆を借りました。

家を出て行くとき、睦雄は子供に「勉強して偉くなれよ」と言って、その家を跡にしたのです。そのことからも、この時にはすでに彼が落ち着いていたことが分かります。

遺書の内容

Hand Pencil Paper - Free photo on Pixabay (327130)

最後に訪れた家の少年に紙と鉛筆を貰い、睦雄は最後の遺書を書きました。そこには大量殺人を犯した後の、生々しい睦雄の本音が残されていたのです。どのような内容であったかと言えば、一番初めに書いてあったことは、犯行時の失敗を悔いている文章から始まっています。

「うつべきものをうたず、うたずによいものをうった」という所から、一番恨みを持ち殺したかった相手を仕留め損ねたことの悔しさが残されていました。その他には、自分の人生に対する不満、世間の冷たさなどの恨み、そして犯行の理由が書かれていたのです。

遺書の半分は、祖母への懺悔と姉への謝罪が書かれており、祖母を殺した理由は、事件後村で一人殺人者の祖母としては残していけないようなことで、祖母を殺したことに対してだけは、激しく後悔の念を綴っています。姉にも、「野にくさればよい」と迷惑を掛けたことを謝っています。

遺書には関係者の実名も

Background Blood Stain - Free image on Pixabay (329356)

遺書の最後には、その日に犯行を決意した理由と、恨みのあった者4名の実名が残されていました。

「うつべきをうたず」と言われたのは、4件目に襲われたD家の逃げ出して、E家の床下に隠れて生き延びたD家の四女です。実際睦雄は、D家の四女とE家の四女が隠れた床下に向け、激しく銃を撃っていましたが、諦めて次の家に向かっています。

遺書の中でも、「逃した」と書いてあることからも、一番の目的はその女性だったことが窺えます。他2名、激しく悪口を書かれている男性2人の名前も残されていました。

仙の城で自殺

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紙と鉛筆を借りてから、睦雄は一人また歩き出しました。彼は、仙の城と呼ばれている荒坂峠に向かっていたのです。集落から3km以上離れた場所までの間、睦雄は何を考えていたのでしょう。

身体が弱く、結核で徴兵検査に落ちる程の体力だった睦雄は、皮肉も犯行計画をしている内に、強くなっていったのです。荒坂峠の頂上に辿り着いた頃、すでに朝方になっていました。

睦雄は遺書の最後で、「もはや夜明けも近づいた死にましょう」と書き残しています。彼は遺書を書いた後、自分の心臓を猟銃で打ち抜き自殺しました。

当時の文化や村の風習

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津山事件のきっかけになる背景に、当時の日本と世界の情勢、文化、そして村の風習など、現代とは異なる価値観が見えてきます。

睦雄が世間や村人達を恨み、犯行に及ぶことになったことにも、少なからず係わりがありました。ここではそんな、当時の文化や村の風習を紹介していきます。

兵役

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元々は武士が行っていた戦ですが、明治維新によって身分制度が廃止され、兵役の義務が出来ました。そもそも、明治維新のきっかけは、アメリカやイギリス、フランスやソ連などが、世界中を侵略し、ついに日本にも外国船が次々にやってきたことから始まります。

現代の中国大陸にあった、清(しん)の国は、すでにイギリスに侵略されており、日本でも開国かそれとも戦うか?と武士達が国の方針を決める為に起きたのが、明治維新です。結果、薩摩と長州(現代の鹿児島と山口県)が徳川を倒し、政権を取りました。

薩長は尊皇攘夷(そんのうじょうい)という、天皇を主体として外国と戦うという思想でしたが、当時の日本ではすぐに戦えるような武器や組織も無かった為、彼らは開国して世界の文化や技術を学び、まずは国力を上げてから戦えばいいという方針になったのです。その結果、兵役義務と富国強兵という思想になるのは当然のことです。
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昭和13年、睦雄が事件を起こした頃の時代は、前年の昭和12年に日中戦争が始まり、男子は大陸に渡って戦うことが義務でもあり、夢や憧れでもあったのです。

この頃はまだ、全ての男子を徴兵するとは言っても、兵役検査で甲種(こうしゅ)合格した、体力や健康に優れた者達がメインでした。

徴兵検査は、甲、乙、丙、丁、戊の5種類に分けられていましたが、いつしかこれが男子達にとっては、自分の価値観を判断されるものとなってしまい、乙種以下は男子に非ずと感じるようになっていきます。睦雄が丙種合格にショックを受け、涙を流して悔しがった理由も、このような背景と価値観がある為なのです。

夜這い

Japanese-Style Room Japan Japanese - Free photo on Pixabay (329711)

日本は古くから、性に大らかな国でした。羞恥心や嫌悪感を持つ思想は、明治維新後少しずつ入ってきた、キリスト文化の価値観です。

この国は、集落や家を守るという価値観が強く、その分性は子孫繁栄、御家繁栄にとって大切なものでした。個人主義や核家族化の思想は、戦後の昭和後半以降の価値観であり、自由になった分、現代は少子高齢化や晩婚化が問題となってしまったのです。

話が逸れましたが、事件当時の日本の田舎では、まだ夜這い(よばい)という風習が残されているところが多くありました。夜這いは成人男子の儀式として、未亡人がセックスの仕方を教えたり、相手をしたりすることです。娯楽も少なかった時代は、セックスは娯楽の一環でもあり、コミュニケーションの場でもあったのです。
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家や集落単位で考えるので、夜這い文化は大っぴらに外に言えるものではありませんが、きちんとルールがあり、それに乗っ取って楽しむものです。

女性が断る権利もありますし、そこで出来た子供は誰の子であれ、その村の子として大切に育てられましたし、父親を指名することも出来ました。まだ医学が発達していない時代、子供が成人するまで育つことも少なく、子孫繁栄は村を守るためにも大切なことでした。

睦雄は、金で無理矢理関係を迫ったり、断られてもしつこく誘ったりと、ルールを無視して夜這いをしていた為に女達に嫌われていったのです。追い打ちを掛けるように、移れば自分も死ぬかもしれないという結核を持っていたことで、尚更避けられるようになっていきました。

事件当時の世間の反応

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小さな集落で30人もが殺されたこの事件を、当時の人々はどう受け止めたのでしょうか?未だに、津山事件程の大量殺人は起きていないので、相当なショックを受けたことでしょう。

前年に起きた、阿部定事件もあり、猟奇的な事件は世間を騒がせました。ここでは、事件当時の世間の反応を紹介します。

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