2019年7月18日 更新

動物の帰巣本能が凄い!人間に帰巣本能はある?帰巣性の仕組み

動物は巣を遠く離れても戻ってくることができます。これを帰巣本能と言います。犬や猫、鳩などの動物が持つこの力は、人間からすると超能力としか思えない驚きの力です。動物たちは今いる場所や巣の位置をどのように知るのでしょうか。帰巣本能の神秘についてご紹介しましょう。

また、その猫が室内飼いか外に出しているかでも迷ったときの行動範囲が変わります。完全室内飼いされている猫の75%は失踪場所から137m以内で発見されたのに対し、外に出している猫の75%は1,609mだったそうです。普段から猫を外に出している場合、外の環境に慣れてはいますがその分行動範囲が広がり、探すのが難しくなってしまいます。

猫を迷子にしない一番の方法は完全室内飼いにすることです。交通事故や病気感染も防げますし、近所の人の家で糞をした、車に傷をつけたといったトラブルも回避できます。

また、迷子札やマイクロチップも有効です。先ほどご紹介したホリーが最終的に家に帰れたのもマイクロチップのおかげです。大切な猫が迷子にならないよう、普段から気をつけなくてはなりません。

猫の帰巣本能の実験

 (475055)

猫の持つ帰巣本能について、色々な実験もおこなわれています。そこから一体どんなことが分かってくるのか、見ていきましょう。

へリックの実験

 (486710)

1922年、フランシス・H・ヘリックは、子猫を生んだばかりの母猫を使い、猫の帰巣性を調べる実験をおこないました。母猫は離乳前の子猫に強く執着します。それが帰巣への強い動機付けになるとヘリックは考えたのです。

ヘリックは母猫を袋に入れ、車に乗せて実験場所まで運びました。そして実験場所に到着すると母猫を開放し、自力で子猫の元へ帰れるかどうかを観察しました。
 (486712)

その結果、母猫は8回中最初の7回は子猫の元へ帰ることができました。戻ってこられた7回は、設定距離が1~4.6マイル(1.6~7.3㎞)、唯一帰ってこられなかった8回目は16.5マイル(26.4㎞)とかなり遠くに設定されていました。また、8回の実験中4回は、放たれた瞬間に正しい方向へ向かって歩き出したそうです。

それにしても、育児期の母猫を子猫から引き離した上に、二度と家に帰ってこられない場所に放つなんて残酷な実験です。例え相手が動物であろうとも、実験における倫理性の大切さは今後さらに問われていくことでしょう。

プレヒトの実験

 (486741)

1954年、ドイツのプレヒトらは、猫の帰巣性を調べるためにヘリックよりは倫理的な実験をしました。猫を自宅から離れた場所に作った迷路に入れ、6つある出口のどれを選ぶかを調べたのです(なお、この迷路では出口から出ることはできないようにして、猫が外に迷い出ないように配慮がされていました)。

その結果、迷路が自宅から3.1マイル(5㎞)の距離では、60%の猫が自分の家の方向を向いている出口を選びましたが、それ以上になると、家の方向が分からなくなるようでした。
 (486757)

また、結果には個体差があり、自宅と迷路の間を往復した経験のある猫は成績が良くなり、実験室で育てられた猫は成績が悪くなったとのことです。

ヘリックやプレヒトの実験により、猫は家の方角を知る能力を持っていること、しかしその能力は家からの距離が遠くなればなるほど失われることが分かりました。ただ、猫がどのようにして家の方角を判断するのかはまだはっきり分かっていません。

犬の帰巣本能

 (475072)

最初にご紹介した笑い話の通り、犬は強い帰巣本能を持っています。本能が強い事ももちろんですが、飼い主に強い忠誠心を持つこともその理由でしょう。大好きなご主人様の元に帰りたいという想いが、犬の足を家へと運ばせるのです。

犬はどのようにして帰巣本能を発揮するのか、実例も交えてご紹介しましょう。

犬の帰巣本能が働いた事例

 (485977)

1923年、オレゴン州に住むブレイザーさんは、愛犬「ボビー」を連れてインディアナ州の親戚を尋ねに行きました。ボビーは2歳半のコリー種で、子犬の頃からとても気性が強く、リスを追いかけて前歯を折ったり、馬に蹴られて目の上に傷を負ったりしたこともありますが、自然の元で伸び伸びと過ごした元気いっぱいの犬でした。

ブレイザーさんは長い旅の末無事にインディアナ州に到着しますが、車からボビーが飛び出し、行方不明になってしまいます。ブレイザーさんはボビーを探しましたが見つからず、諦めてオレゴン州へ帰っていきました。
 (486010)

しかし、それから6か月後、なんとボビーはオレゴン州の家に戻ってきたのです。インディアナ州からオレゴン州までの直線距離は3300㎞、目撃者たちの情報をつなぎ合わせるとなんと4000㎞を超える旅路の末の帰還であることが分かりました。

ボビーが家に帰れたのは、若くて気性が強かったこと、犬好きな人を見分けるふしぎな能力を持っていたことが挙げられます。

何人もの親切な人がボビーを助け、そのまま飼おうとしましたが、ボビーはどの家にもいつかず、ひたすら旅を続けました。大好きな主人に会いたいという強い気持ちも、ボビーの帰巣本能を高める動機となったのでしょう。

磁気を感じる磁覚がある?

 (475085)

磁場の方向、場所、強さを感じる能力を磁覚といいます。先ほどご紹介した通り、鳩のような鳥類は網膜に磁気コンパスがあります。正確に言うと、それは「クリプトクローム1a」と呼ばれるたんぱく質の一種です。

このクリプトクローム1aが哺乳類の網膜にもあるか調べた結果、犬の網膜には類似物質の「クリプトクローム1」があることが分かりました。これによって、犬は磁場が見えているのではないかという仮説が立てられています。
 (486141)

なお、このクリプトクローム1は、他にもオオカミ、クマ、キツネ、アナグマ、オランウータンなどで発見されていますが、ネコ、ライオン、トラにはありません。

では、ネコなどには磁場を感知する能力はないのでしょうか?そもそもクリプトクローム1は、本当に磁場を見るためにあるのでしょうか?これらの謎は、これからの研究によって明らかになることでしょう。

用を足すときの習性

 (475088)

犬は排便するとき、くるくる回ります。そして位置を決めると背中をこんもりと丸め、真剣な表情で気張り始めます。この排便の時に向いている方角が地磁気と関係しているのではないかと考えられています。

チェコ生命科学大学の研究では、2年間に渡って37犬種70頭の排便1893回と排尿5582回を観察したところ、犬は南北どちらかに頭を向けて排便する傾向が見られたそうです。

また、地域の地磁気の変化を調べたところ、安定している時は好んで南北を向きますが、不安定な時はそれが見られませんでした。このことから、犬は地磁気を感知し、それに合わせて排便をしていると考えられました。

3 / 6

関連する記事 こんな記事も人気です♪