2019年7月18日 更新

動物の帰巣本能が凄い!人間に帰巣本能はある?帰巣性の仕組み

動物は巣を遠く離れても戻ってくることができます。これを帰巣本能と言います。犬や猫、鳩などの動物が持つこの力は、人間からすると超能力としか思えない驚きの力です。動物たちは今いる場所や巣の位置をどのように知るのでしょうか。帰巣本能の神秘についてご紹介しましょう。

第一次大戦の時代には有線や無線と言った通信技術も発達していましたが、戦時中は通信が敵に切断されたり故障することも多く、鳩が大活躍していました。前線からの貴重な情報や救助連絡を運ぶ他、小型カメラを取り付けて敵の陣地を撮影するなど、今でいうドローンのような役割も果たしていたそうです。

日本でも関東大震災により大打撃を受けた通信機関の代わりに鳩たちが情報を運びました。日中戦争、第二次世界大戦でも多くの軍鳩が飛び交い、その多くが命を落としていきました。

戦争が終わった後は新聞社で特ダネ記事や写真を運び活躍しました。この鳩通信は1960年代頃廃れましたが、朝日新聞東京本社屋上には伝書鳩のブロンズ像が立てられ、その功績と感謝の気持ちは現在に伝えられています。

レース鳩

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伝書鳩の子孫は、今「鳩レース」で活躍しています。日本では日本鳩レース協会と日本伝書鳩協会と言う2つの団体が鳩レースを主催しており、ここに登録することによってレースに参加できます。

レースは主に、同じ地点で一斉に鳩を放し、誰の鳩が早く帰ってくるかを競います。先ほどご紹介した通り、レースの距離は長いものでは1000㎞以上にもなり、戻ってくることすら難しい過酷なレースになります。

鳩レース界で有名な「旭王号」は、北海道から福岡までの1539㎞を4日間で飛び、その名を鳩レース界に轟かせました。このような血統の良い鳩の子供は高額で取引され、一羽100万円を優に超える鳩もいるそうですから驚きです。
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鳩レースで最も有名なのは、フランスのオルレアンでおこなわれる「オルレアン・ナショナルレース」です。オランダのレース協会が主催するこのレースでは、生後1年にも満たない若い鳩が、なんと18~20万羽も集められ、一斉に飛び立ちます。その瞬間、空が鳩で真っ黒に染まるというほどスケールの大きなレースです。

鳩レースの魅力は、鳩が飛び立つ瞬間と帰ってきた瞬間しか見られない「不可視性」にあると言われています。大切に育てた鳩が飛び立ち、大空を越える危険な旅の末帰ってくる…その見えないドラマに、人は惹きつけられるのでしょう。

ベランダの巣を駆除してもムダ?!

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ベランダに鳩が来ていた、小枝が数本落ちている…そんな状況を見過ごしていると、ある日突然、鳩がベランダに卵を産み、ヒナを育て始めてびっくりすることがあります。

こうなるとなかなか厄介です。まず、鳩は鳥獣保護法により保護されている動物で、自治体の許可なく駆除ができません。駆除するためには自治体に届け出をしないといけませんが、原則として狩猟免許が必要になります。

また、卵が産まれていない時に駆除したとしても、鳩はまた巣を作りに来ます。鳩は帰巣本能が強く、ひとつの場所に固執するからです。
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一番手っ取り早いのは、業者に依頼することです。お金はかかりますが、さすがプロ、痕跡がなくなるまできれいに掃除してくれます。自治体への手続きも代行してくれるので、楽に鳩やその巣とお別れできるでしょう。

お金がかかるのが嫌、という場合は、最初から鳩が巣を作りづらい環境を整えておくことが大切です。鳩は高い所や周りを囲まれた場所を好みます。
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マンション5〜10階のベランダ、室外機の裏側、屋根太陽光パネルの下などは特に気をつけて、ベランダはきれいに片付け、室外機や太陽光パネルは隙間ができないよう仕切りをつけましょう。

また、鳩は自分の糞の臭いに安心感を得ますので、糞は掃除し、エタノールを使って消毒しましょう。大変ですが、巣ができてからでは人も鳩も不幸になります。最初の段階から気をつけることが大切なのです。

ミツバチの帰巣本能

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あの小さな体で草原を飛び回り、蜜や花粉を集めるミツバチたちにも、驚異の帰巣本能が秘められています。ミツバチたちはどのように巣へと戻ってくるのでしょうか。ご紹介しましょう。

色彩感覚が優れている

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ミツバチの色の見え方は人間とは違っていますが、花を探し蜜を集めるという点で非常に合理的なものとなっています。まずオレンジから緑までは同じ色調に見えます。青緑は青からも緑からも良く区別され、青から紫まではかなり似た色、紫外線は紫とははっきりと区別されています。

また、純粋な赤は判別できず、黒と同じに見えます。しかし、純粋な赤い花は熱帯地方にしかなく、花の芯は大抵黄色いので、不都合はありません。ハチにとって最も大切なのは、紫外線が見えるという点です。

自然界に多い白い花は、人の目には白く見えますが、紫外線を吸収するため、紫外線とは反対色の青緑に見えます。ミツバチは青緑を良く区別できるため、白い花(ミツバチにとっては青緑の花)は良く目立ちます。
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チョウなどでは色に好みがある場合がありますが、ミツバチには色の好みはありません。しかし、例えばレンゲの花から蜜を取ることができたミツバチは、その色を覚えていて、レンゲばかりから蜜を取るようになります。作業の効率化とともに、レンゲの側からしても、同種の花粉を運んできてくれるミツバチはありがたい存在です。

ミツバチはこのように優れた色彩弁別能力を持ち、それによって巣から花への道のりを正確に覚えることができます。巣に帰るときの視覚情報にも、色彩に関するものが多く含まれていることでしょう。

地形や物の位置関係を学習

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ミツバチは巣から飛び立つ際、巣の周りを飛び回ります。これを定位飛行(オリエンテーションフライト)といい、これによって巣箱の場所を覚えています。このように、ミツバチは周りの地形や物の位置関係を記憶し、それによって遠く離れても巣に帰ることができるのではないかと考えられています。

それを実証するため、ミツバチの目を塗りつぶして見えなくし、正常なミツバチと一緒に巣から1㎞離れた場所に放つ実験がおこなわれました。1㎞という距離は、ミツバチからすると良く知っているご近所といったところですが、目が見えないミツバチは、見えるミツバチよりずっと遅く帰ってきたのです。このことからも、ミツバチは帰巣のために視覚情報を用いていることが分かります。

太陽の位置

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主に昼に活動するミツバチたちは、ハトやムクドリと同じく太陽の位置から自分が行くべき道筋を割り出します。ミツバチを巣箱の北側にある餌場に通わせ、蜜を吸っている間に餌場を巣箱の南に運ぶと、ミツバチは騙されて南の方へ飛んでいきます。

このようなことは、周りに目標物のない砂地に限って見られることから、ミツバチはまず地形や物の位置関係を目印とし、それがない場合は太陽の位置を頼りにしていることが分かります。
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また、鳩と同様に、ミツバチも体内時計内の太陽と実際の太陽を照合させ、方角を読み取れることが実験により判明しています。太陽の動きが全く違う外国に連れて行ったり、太陽を全く見せずに人工的に育てたりするとこの能力は発揮できません。

つまり学習によって太陽から方角を割り出す方法を得ているということで、あの小さな虫の中にそのような能力があることに驚かされます。

動物の本能は計り知れない

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