2019年7月18日 更新

動物の帰巣本能が凄い!人間に帰巣本能はある?帰巣性の仕組み

動物は巣を遠く離れても戻ってくることができます。これを帰巣本能と言います。犬や猫、鳩などの動物が持つこの力は、人間からすると超能力としか思えない驚きの力です。動物たちは今いる場所や巣の位置をどのように知るのでしょうか。帰巣本能の神秘についてご紹介しましょう。

動物の帰巣本能の不思議

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「お父さんが犬を捨てに行ったら、犬の方が先に帰ってきた」、昔から良くある笑い話です(もちろん、犬を捨ててはいけませんが)。犬だけではなく、動物は住んでいた場所や餌のある場所に正確に戻ってくる能力があります。これを帰巣本能、もしくは帰巣性と言います。

遠く離れた場所から放たれた伝書鳩が手紙を携えて巣箱に帰ってくるのも、海に出た鮭が、繁殖のときにまた生まれた川へ戻ってくるのも、この帰巣本能のなせる業です。

人にはこのような能力はありません。急に遠いところに連れてこられ、しかもそれが辺り一面何もない砂漠や海だったとしたら…帰ることはほぼ不可能でしょう。今回は人の持ちえない不思議な力、帰巣本能について詳しくご紹介していきましょう。

動物はなぜ戻ってこられるのか?

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動物はある程度住みかを離れても、元来た場所にちゃんと戻ってきます。自分の意志で行ったときに限らず、無理やり連れてこられ、しかもどの道を通ったか分からない状態でもちゃんと戻ってきます。

人間は見知らぬ土地へ行ったとき、地図やGPSを頼りにします。では、動物たちは何を頼りにして家への道筋を知るのでしょうか。いくつかご紹介しましょう。

太陽の位置

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まず、第一に挙げられるのが太陽の位置です。昼に渡りをするムクドリを使った実験で、鳥が太陽から方角を知る驚くべき方法が分かりました。

渡りの時期、晴れた日に良く慣れたムクドリをかごに入れて観察すると、ムクドリはバタバタ羽ばたき、一定の方向に首を振ります。その首を振る方向は正確に渡りの方角を向いています。

しかし、曇りの日には首が向く方向はてんでばらばらになります。また、鏡を使って本来の位置からずれた角度に太陽が見えるようにすると、そのずれた分、首の向く角度もずれます。このことから、ムクドリは太陽の位置から渡りの方角を知っていることが分かります。
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さらに、人工太陽を使った実験により、なんとムクドリはその時見た太陽の位置と、自身の体内時計内で「今の時間だったらこのあたりに太陽が昇っているはず」という情報を照らし合わせ、方角を計っていることが分かりました。これは人間でも航海術を学んでいるなど特殊な知識を持っていないと分からないことで、驚異の能力としか言いようがありません。

この体内時計と実際の太陽を照合することによって位置を知る能力を特に顕著に持っているのが伝書鳩です。また後の項目で詳しくご紹介します。

星の位置

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ムクドリのような昼に渡りをする鳥は、太陽の位置を目当てに方角を知ります。それに対して、夜に渡りをする鳥は星を使っていると考えられています。

夜に渡りをするムシクイという鳥を使った実験では、やはりムクドリと同じように、曇天の時は首の向く方向がでたらめになりました。そういう時にムシクイを放つと、町明かりや月など明るい方向に飛んで行ってしまいます。

渡り鳥が灯台の灯りに引き寄せられ、ぶつかって死ぬという事故が多くありますが、これはこの性質に寄るものかもしれません。
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ドイツのザウアー夫婦は、プラネタリウムを使った実験をおこなっています。ムシクイをプラネタリウムに連れてきたところ、ムシクイはちゃんと渡りの方向が分かることが実証されました。これはヒナの時から室内で育てられ、全く空を見たことのないムシクイでも成功したそうです。

鳥たちが星をどのように利用しているかは不明ですが、もしかしたら星の日周運動を捉え、その回転の中心にある北極星を見極めて方角を知っているのかもしれません。星を見てもどこにどんな星座があるか分からない人間より、遥かに星空の知識があるようです。

磁気感知

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方位磁石は地球の磁場を利用して方角を知る道具です。地球はまるで一本の棒磁石のように磁力を持ち、磁場を形成しています。動物たちもこの地球の磁場から生まれる磁気を独自のコンパスで読み取り、方角を知っているのではないかと考えられています。

鳩を使った実験では、周囲の磁場を乱すために頭にコイルをつけて飛ばしてみたところ、晴れた日はちゃんと帰ってきたのに対し、曇りの日は帰巣が妨げられることが分かりました。鳩は帰巣のために様々な手がかりを組み合わせていること、その中に磁気も含まれていることが立証されたのです。
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類似した実験はワニでもおこなわれており、やはり磁場を乱されたワニは帰巣できなかったことから、鳩だけではなく他の動物も磁気を使って方角を知っていることが推測できます。

さらに、鳩がどこで磁気を感じているか研究が続けられ、面白いことが分かりました。鳩の磁気コンパスは網膜にあること、そしてそれとは別に鼻腔内に磁気図(磁場の分布)を読み取る部分があったのです。

完全に独立したこの2つの器官により、鳩は磁場の「方向」と「強さ」を感知することができ、その情報をまとめることによって正確に帰るべき方向を割り出すことができるのです。

地上の目印

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人も道に迷ったときに、ビルやタワーなど背の高い建物を探して、自分がどの位置にいるか知ろうとします。それと同じように、地上にある目印を元に巣に帰ってくる生き物もいます。

例として良く挙げられるのがジガバチです。ジガバチは巣穴を掘り、それにふたをした後獲物を探しに行きます。イモムシやクモといった獲物を捕らえると、針を刺して麻痺させ、巣穴に持ち帰って卵を産み付けます。

獲物はマヒしているだけなので死んで腐ることはなく、孵化したジガバチの幼虫たちの新鮮な餌兼揺りかごとなるわけです。
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それにしても、蓋までして地表から見つけづらくなった巣穴を、ジガバチはどのようにして見つけるのでしょうか。それを検証するための実験がおこなわれました。

巣のそばにコインを置いておき、ジガバチが獲物を捕りに行った隙にコインの位置を変えます。すると、返ってきたジガバチは、コインの近くを巣を探して飛び回ります。このことから、ジガバチは巣の周りの目印を頼りに巣を探していることが分かりました。

このように、地上の目印、また山や川と言った地形などが帰巣の目当てになることもあります。このあたりは人間も良く使いますので、納得しやすいのではないでしょうか。

嗅覚

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嗅覚と言えばすぐに思い浮かべるのは犬でしょう。犬は人間の100万倍~1億倍の嗅覚を持っており、なんと30億種類以上のにおいをかぎわけることができます。

特に汗のにおいを出す物質である脂肪酸にもっとも敏感に反応し、20時間前に残された足跡の汗のにおいを嗅ぎ分けることができます。救助犬や警察犬はその素晴らしい嗅覚を活かし、人の手助けをしてくれます。

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