2019年7月18日 更新

動物の帰巣本能が凄い!人間に帰巣本能はある?帰巣性の仕組み

動物は巣を遠く離れても戻ってくることができます。これを帰巣本能と言います。犬や猫、鳩などの動物が持つこの力は、人間からすると超能力としか思えない驚きの力です。動物たちは今いる場所や巣の位置をどのように知るのでしょうか。帰巣本能の神秘についてご紹介しましょう。

 (485949)

ただ、犬がにおいをかぎ取れるのはせいぜい1~3メートル程度です。もし何10㎞、何100㎞と家を離れてしまうと、においを辿って家に帰ることはできません。では、嗅覚は帰巣においてどのような役割を果たすのでしょうか?

これにはいくつかの説がありますが、辺りのにおいをかいで少しでも家や主人に関係するにおいが感じ取れたら、そちらに向かって進むというのが一つ目、また、場所によって変わるにおいをつなぎ合わせ、地図のようなものを頭の中に描くことができるというのが二つ目の説です。しかし、嗅覚が帰巣にどれほど寄与しているかは良く分かっていません。

人間に帰巣本能はある?

 (484554)

人間にも、視覚的に自分たちがいる位置を正確に把握する能力と言う点での帰巣本能は備わっています。ビルが並び、数十メートルおきに行き先を示す看板が並ぶ街に住む人たちはそういった能力が失われつつありますが、広大な自然の中に暮らす人々は、自分が今どこにいるのかを知り、正しい方向へ向かう能力がとても優れています。

その代表として挙げられるのが北極に住むイヌイットです。イヌイットは私たちには同じようにしか見えない切り立った崖やフィヨルドをランドマークとし、はるか遠くからでも見つけられるその目印を元に、自分たちの進むべき道を正確に把握することができます。
 (484553)

また、「イヌクシュク」と呼ばれる人の形をしたランドマークを高台に建てることにより、釣り場や人の住む場所を知る目印を作ってもいました。

イヌイットたちはそうした物体や景色の視覚的特徴を正確に見極める卓越した観察力や知恵、技術を駆使し、北極という極限まで厳しい自然環境の中を何千年も生き抜いてきたのです。

別の意味での人間の帰巣本能

 (487492)

先ほどご紹介したような優れた空間認知能力は、私たちのような街で暮らす人間は持ち合わせていないことが多いです。しかし、ちょっと違う意味合いでの帰巣本能なら、誰しも携えているものです。帰巣本能に例えられる、人の面白い行動をご紹介しましょう。

酔っ払いの帰巣本能

 (474965)

「酔っぱらって記憶がないけど、朝起きたら家にいた」、良く聞かれる話です。記憶も判断力もなくなるほどへべれけに酔っぱらっているのに、なぜ人は家に帰れるのでしょうか。

これは脳の記憶を蓄えておく部分が、記憶の種類によって異なるからです。記憶には長期記憶と短期記憶があります。長期記憶は「歯を磨く」、「ミシンを踏む」などといった繰り返しにより得た記憶で、脳の「側頭連合野」という部分に蓄えられます。

短期記憶は、「レジ打ちをしていて、さっき渡したお釣りの額」、「初めて聞いた人の名前」など、数十秒から数十分という短い時間しか保持できない記憶で、脳の「前頭前野」という部分に蓄えられます。
 (484571)

アルコールにより能力が低下するのは前頭前野で、側頭連合野はあまり影響を受けません。そのため酔っぱらうと短期記憶は保持しづらくなる、つまり忘れてしまいますが、長期記憶はちゃんと保持されています。家へ帰る道順は長期記憶なので、酔っぱらっていても失われることなく、家にたどり着くことができるのです。

しかし、短期記憶は忘れているので、宴席での行動やどうやって家まで帰ったかは覚えていないというわけです。普通に家に帰っているだけなので帰巣本能とは違いますが、記憶の種類の違いから生まれる面白い現象です。

男性の帰巣本能

 (475018)

男女の恋愛観の違いを表す言葉として、女性の恋は「上書き保存」、男性の恋は「名前を付けて保存」というのがあります。女性は次の恋人ができたら前の恋人をきれいさっぱり忘れてしまいますが、男性はかつて愛した女性のことをいつまでも美しい思い出として取っておきます。

そして、日々の生活に疲れた時、ふと昔の彼女を思い出します。優しい笑顔、抱きしめた時のぬくもり、愛情をこめて作ってくれた美味しいご飯…思い出は美化され、「やはり、おれが帰るところは君なんだ」と、前カノに連絡をするのです。これは一種の帰巣本能と言えなくもないでしょう。

しかし、その「巣」は、既に他のオスの縄張りとなっている可能性もあります。また、本物以上に思い出が美化されてしまい、再会するとガッカリ…というのも良くあることです。古巣は古巣、思い出は思い出です。故郷は遠きにありて思うもの、そっと心の中にしまっておいた方が良いかもしれません。

猫の帰巣本能

 (486632)

「猫は家につく」という言葉がある通り、猫は縄張り意識が強く、捨てられたり迷ったりしても家に帰ってくることがあります。猫の帰巣本能について詳しくご紹介していきましょう。

猫の帰巣本能が働いた事例

 (486629)

2013年、アメリカで行方不明になった一匹の猫が、自力で自宅に帰ってきたというニュースがありました。その猫の名前はホリー、リッチャー夫妻に飼われていた4歳の三毛猫です。

夫妻はホリーを子供のようにかわいがり、デイトナへの旅にも連れていきました。しかしここで事件が起こりました。花火を見ていたところ、ホリーはその音に驚いて逃げて行ってしまったのです。

ホリーにはマイクロチップが埋め込まれていましたが、その追跡も途絶え、リッチャー夫妻は悲しみに打ちひしがれながらパームビーチの自宅へ帰りました。
 (486630)

しかしそれから63日後、ホリーは自宅そばの路上で見つかりました。体重は半分以下になり、鳴くこともできないほど弱っていましたが、マイクロチップのおかげで無事にリッチャー夫妻の腕の中に帰ってきたのです。

ホリーの歩いた距離は320㎞以上。爪や肉球はボロボロになっていたそうです。これはホリーが自力で家までの道のりを探し当て帰ってきたことを示しています。

帰巣本能には個体差がある

 (475054)

このホリーのエピソードから、「猫の帰巣本能は強いから、迷子になっても帰ってくる」と安心してはいけません。ニュースになるくらいですから、とても稀なことなのです。

猫は何かに驚いて逃げ出すと、基本的には安全な場所でじっとして動きません。迷い猫の探偵は、まず家のそばの、低い場所や物陰を探します。そこに猫が隠れていることが多いからです。

オーストラリアのクイーンズランド大学が行った調査では、迷子猫が失踪場所から50m以内で発見される割合は50%、500m以内で発見される割合は75%と報告されています。それだけ近い場所にいて家に帰れないのは、怖いことがあると、安全な場所から動かないという猫の特性のためかもしれません。
 (486648)

2 / 6

関連する記事 こんな記事も人気です♪