2019年9月9日 更新

体に人の顔のある人面瘡は実在する?妖怪人面瘡の伝説についても

「人面瘡」という言葉をご存知でしょうか?体に人間の顔のような瘡ができ、突然喋り出したり、食べたり飲んだりすると言われています。ブラックジャックにも取り上げられている「人面瘡」は、妖怪や怨念、架空の病気と言われていますが本当に実在するのでしょうか?

人面瘡とは?

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皆さんは人面瘡という言葉を聞いたことがあるでしょうか?人面瘡とはその名の通り、人の顔をした痣が人間の体にできることで、妖怪・奇病の一種と言われいます。原因は体の一部などに付いた傷が化膿することと言われていますが、化膿した傷が人の顔のようなものになり、その顔が話をしたり、物を食べたりするとされる架空の病気です。

自分の体に人の顔の痣ができたらそれだけでも恐ろしいのに、その痣が話したり、物をたべるなんて考えただけでぞっとしますね。この人面瘡は、薬あるいは毒を食べさせると療治するとされています。また、現在では奇病、架空の病気というイメージになっていますが、過去には妖怪として人々の興味を惹きつけていました。

そんな恐ろしい人面瘡について、人面瘡を取り扱っている書物や漫画などに触れながら、詳しく解説していきます。

妖怪人面瘡の伝説

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現在では奇病、架空の病気とされている「人面瘡」ですが、一昔前は「人面瘡」は妖怪の仕業だと言われて恐れられていました。「人面瘡」とは具体的にどんな状態なのでしょうか?

体に人の顔が浮かび上がるなんて、想像しただけでとても気味の悪い光景ですが、どのようなことが原因となって妖怪の仕業だと言われるようになったのでしょうか?人面瘡の伝説について詳しく解説していきましょう。

「伽婢子」九巻

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江戸時代に浅井了意によって書かれた、ひらがなまじりの物語を集めた草子を「伽婢子」(おとぎぼうこ)といいます。寛文6年に刊行されており、怪談や奇妙な話を集めたもので全13巻もあります。怪談と言えば今では怖い話を意味しますが、怪しい話、奇妙な話、心霊の話、不思議な話という幽霊、妖怪に関する話だけとは限らないようです。

その「伽婢子」にも「人面瘡」について書かれているのです。「人面瘡」の話が書かれているのは「伽婢子」の九巻です。「人面瘡」は妖怪として書かれており、この「伽婢子」が初めて「人面瘡」を取り上げた書物でしょう。

農夫の腫物

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「伽婢子」に書かれている「人面瘡」の話は、農夫にできものができるところから始まります。今の京都南部の小椋と言うところの農民が、長い間体を壊していました。その病気の症状は、悪寒や発熱を繰り返し全身がひりひりと痛んで通風のように感じ、農夫をとても苦しめました。

様々な治療をしましたがどれも効果が無く、半年が過ぎた頃、左の股の上にできものができたのです。そのできものは目と口はあるが鼻と耳は無く、まるで人の顔のように見えました。できものはとても痛みましたが他の症状はぱったりと消えたのです。

腫物に食べ物

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農夫はそのできものがあまりに人の顔に見えたため、試しにできものの口に酒を入れてみました。するとできものの顔が赤くなり、他にも餅やご飯を入れれば、まるで人が食べるように口を動かして食べてしまうのです。

食べ物を与えれば、その間は体の痛みが止んで苦しみがやわらぎ、食べさせないときは、再び痛みだしてしまうのです。農夫は痩せ細り、いつ死んでもおかしくないような状態でしたが、我こそはとたくさんの医者が集まって治療をしてもやはり効果がないのです。

その時、修行の旅に出ている僧侶が通りかかり、「このできものができた人は必ず死ぬ。しかし助かる方法は一つだけある。」と農夫にいったのです。農夫はそれを聞いて自分の土地を売りに出して、そのお金を僧侶に渡して頼みました。

貝母を食べさせて治療

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僧侶はそのお金を使って様々な薬の材料を買い集めました。金、石、土、草、木と一種類づつ順番にできものの口へ入れてできものの様子を見ましたができものはなんでも食べてしまいます。

しかし、貝母(ばいも)という草を食べさせようとしたところ、眉をしかめて口をふさぎ嫌がりました。それをみた僧侶は、貝母を粉にしてできものに飲ませると、それから十七日以内にそのできものはかさぶたを作って治ったのです。

これが「伽婢子」9巻に書かれてる「人面瘡」の話の全容です。

人面瘡の存在を記した文献

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人面瘡の始まりは、先ほどご紹介した「伽婢子」と言われていますが、それ以降にも人面瘡についてかかれた文献がたくさんなります。

今回ご紹介していくのは「怪霊雑記」、「新累解脱物語」、「絵本百物語」、「諸国百物語」、平田銕胤の日記の5つの文献です。それぞれどのような内容で書かれているのか詳しく解説していきましょう。

「怪霊雑記」

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「人面瘡」の話が載っているのは「怪霊雑記」という文献です。横溝正史さんの小説が原案とされる「人面瘡」の話は、先ほど紹介した「伽婢子」とは異なり、人間の業が人面瘡の原因となるという話になっています。

「怪霊雑記」にある人面瘡の話の内容は、ある男が女を殺したところ、自分の股にその女の顔の人面瘡ができてしまったというなんとも奇妙な話です。この人面瘡には医療も祈祷も効果はなく、切り落としてもまた出てきてしまうので、男は人目を忍んで隠れ住むようになったという話になっています。

男が人を殺してしまった後ろめたさからできてしまうのか、はたまた殺された女の怨念なのか、人によって解釈が変わってくる話になっています。

「新累解脱物語」

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「新累解脱物語」は、怪談で有名な江戸時代小説の「累ヶ淵」をもとにした曲亭馬琴の小説です。その小説の中にも人面瘡が登場しているのです。「新累解脱物語」の話の中では、殺された累の怨霊でできた人面瘡が毒気を吹き出し、それを浴びた人々の顔が累と同様の醜い顔になったという内容で登場しています。

この小説では怨念によって人面瘡ができ、その怨霊によって人々が呪われてしまうという内容になっているので、人面瘡が妖怪というよりは霊的な扱いになっています。いずれにせよ恐ろしい話です。

「絵本百物語」

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