2019年9月29日 更新

メスメリズムは医学的なものではない?オカルトの一種?

あなたは催眠術をご存知でしょうか?実は催眠術のルーツをたどると、最後に行きつくのは18世紀に登場したメスメリズムと言われています。今回は、医学とスピリチュアルが混在する18世紀のウィーンやフランスで、多くの人を癒し魅了したメスメリズムについてご紹介します。

目次

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メスメルはイエズス会系の大学で学んだ後、1759年からウィ―ン大学の医学部で学び始めました。ウィーン大学はドイツ語圏最古の名門大学で、医学・物理学・哲学・化学・生物学・動物行動学・経済学・文学など数多くの分野でノーベル賞受賞者を輩出している総合大学です。

メスメルはウィーン大学でも、誰もが認める頭の良さで壮大な理論を好む傾向があり、当時標準的とされていた医学教育を全て修了し、医学の学位を修得しています。

1766年「人体への惑星の影響について」の論文を発表

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そして、1766年メスメル32歳の時「人体への惑星の影響について」という論文を発表します。メスメルは神学校や大学で学んだ知識があったため、医学だけでなく哲学や神学に関する造詣も深く、科学についても実験と理論の両方を会得していたと言います。

メスメルは当時の文化を深く広く理解し、医学以外の知識も兼ね備えた医師だったのです。

その証拠に、メスメルの「人体への惑星の影響について」という論文には、人間の身体の様々な機能の変化は、引力を含む宇宙の力と関係しているということが書かれていました。

1768年に結婚し医者として開業する

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ウイーン大学卒業後の1768年、メスメルは結婚しウィーンで開業します。妻は10歳年上の貴族の家の女性で、彼女には既に一人息子がいました。名前を、マリア・アンナ・フォン・ボッシュと言い、この年上妻との結婚の動機に、経済的な理由があったことは否定できません。

当時メスメルの仕事は非常に順調で、彼はこの時代まだ少年だったモーツァルトをパトロンとして支援していたそうです。今では古典音楽を代表する作曲家として認められているモーツァルトですが、メスメルが彼を発掘した時にはまだ世に出ておらず、メスメルはモーツァルトの才能を誰よりも早く見抜いていたと言います。

メスメル自身も、クラヴィコードとチェロを弾きこなし、音楽が趣味の人だったようです。

メスメリズムの誕生

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ここまでは、メスメルの生い立ちや学生時代の話、ウィ―ン大学で医学を学んだこと、そして大学卒業後結婚し開業したところまで、メスメル自身のことについて触れてきました。

メスメルという人物が裕福な家庭で育ち、非常に頭の良い探求心旺盛な人物であったことが分かりましたね。また、後に彼は多くの人をメスメリズムによって治療するのですが、お金の無い人からは料金は一切取らなかったと言います。

そんな彼のもとに、助けを求めて大勢の人が詰めかけたのだそうです。それでは、メスメリズムの誕生について見て行きましょう。

1774年女性患者に調合剤を飲ませる

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メスメルが住んでいた家には、妻のマリア・アンナと息子の他にフランチスカ・エスタリンクという妻の親戚が同居していました。フランチスカは当時、うつ状態や嘔吐発作、痙攣、歯痛や耳痛、腸炎や排尿困難、卒倒や幻覚などのヒステリー発作に悩まされていたと言います。

メスメルはそんな彼女の症状を和らげるために、鉄を含む調合剤を飲ませました。なぜそんなものを彼女に飲ませたのかというと、フランチスカの体に人工的に干満を生じさせることを目的としていたと言われています。干満とは、潮の満ち引きのことです。

患者の体に磁石をつける

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フランチスカに鉄の調合剤を飲ませた後、メスメルは患者の体中に磁石をつけるという治療を行いました。磁気治療なんて聞くと「本当に効果なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、磁気は現在でもうつ病の治療に使われています。

そう考えると、今から300年以上前に磁気治療を行っていたメスメルは時代の最先端を行っていたことになりますが、そもそもメスメルが磁気治療を行った根拠には、パラケルススという人物の「大地や天体は流体を発しており、その流体は人間の体に絶えず流れ込んでいる。」

「そして人体は、磁石のように良性及び悪性の流体を引き付けている。そのため、このバランスが崩れると人は病気になる。だから、こういった原因で起こる病気に関しては、身体の悪い部分に磁石を当てれば、悪性の流体が吸い出され、大地や天体へと還って行く」という考えに基づいて行われていました。

体内に液体の流れを感じ病状から解放される

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フランチスカに磁気治療を行ったメスメルは、彼女の症状の変化をつぶさに見ていたと言います。そして、磁石をフランチスカのどの部分に当てれば「どんな症状が現れるのか?」あるいは「消えるのか?」を綿密に観察しました。

この時メスメルは、メスメルの身振りや手振りに反応するフランチスカに対して、磁気化したコップを指さし、彼女に触らせることで症状が変化する姿を目にしており、それは遠隔操作でも可能だったと言います。

そして、磁気を当てられたフランチスカは、自分の体内に不思議な液体の流れを感じており、数時間病状から解放されたのだそうです。

動物磁気による力だとメスメルは思った

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メスメルは、フランチスカが磁石を当てただけではなく、メスメル自身の手をかざしたり指示をすることでヒステリー症状から解放されたことから、磁石や天体・大地から出てくる磁気だけではなく、人間の体そのものからも磁気が出ており、それがフランチスカの体に作用したのだと結論付けました。

そしてメスメルは自身の体を流れる生命エネルギー(流体)を「動物磁気」と名付けたのです。メスメルは「病気は人間の体に行きわたる流体の配分がバランスを崩すことが原因で、病気を治すには体内に新しい流体を入れる必要があり、それが生命エネルギー」なのだと唱えました。

1775年悪魔祓いについて問われ動物磁気が原因とした

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1775年、メスメルはミュンヘン科学アカデミーから、エクソシストという称号を持つ司祭のヨハネ・ヨーゼフ・ガスナーの行った悪魔祓いに関して意見を求められました。

ガスナーは信仰によって患者が治ったのだと主張しますが、メスメルは悪魔祓いに科学的根拠は無いとして、ガスナーが高度な動物磁気を持っていた結果であると答えています。

そして、彼が提唱する動物磁気による治療についての科学的根拠を主張していたようですが、メスメルの治療を受け実際に回心(神の道へ心を向ける)する人が出たというエピソードがあることからも、メスメルの治療を受けた患者と悪魔払いを受けた患者の反応には、共通点があるのではないかと考えられています。

個別療法と集団療法があった

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メスメルの治療法には、一人の患者に対して行う個別療法と、多くの患者を集めて行う集団療法がありました。個別療法とは、メスメル自身が患者と一対一で動物磁気を送り込むというスタイルです。

一方の集団療法とは、バケツと呼ばれる円形の大きな筒状の入れ物を使って行うもので、メスメルはこのバケツを生命エネルギーの受け皿と考え、20本ほどの金属棒が突き出ているフタをバケツの上に置き、それを大勢の患者に掴ませるスタイルで治療を行いました。

バケツの中にはガラスの粉末や鉄くず入りの磁気を帯びた水の入った大きな瓶と、それを取り囲むように数本の瓶が配置されており、そこに多くの磁気を集めて一気に大勢を治療してしまうのが目的でした。

メスメリズムでメスメル追放

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