2019年4月10日 更新

真善美の意味と弓道で大切にされる理由!カントやプラトン哲学との関連も

弓道では最高目標とされている真善美は、ヨーロッパ哲学に端を発しています。真善美の意味や弓道における真善美、ソクラテスからプラトン、カントへと続くギリシャ哲学の中で、真善美がどのようにとらえられてきたのかをご紹介しましょう。

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弓道においても、「真・善・美」は大切な指標とされています。ただ技を磨き、上達して勝つことのみにこだわるのではなく、自分自身の心を磨き、心技を一体とすることによって、人生そのものを深く豊かにすることが、弓道の最高目標です。弓道における「真・善・美」について、詳しく見ていきましょう。

「真」の弓は偽らない

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弓道には「正射必中」という言葉があります。これは正しい射法で射られた矢は、必ず中る(あたる)という意味です。性別も年齢も段位も関係なく、正しい方法で矢を射られさえすれば、矢は的に当たります。

弓道では射法八節という、矢を射る際の基本ルールの動きがあります。射法八節は弓道の基準であり、法則であるとされています。

そうした一本筋が通った真理において、正しい射法をおこない、そしてその結果は的に矢が当たるか否かによってすぐに分かります。弓道は一射一射が完結した「真」であり、その「真」を追求していく武道であると言えます。

「善」は平常心に宿る

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弓道では敵対する、争うといったことはありません。敵がいるとすれば、それは自分の心の中にいます。弓道は、あらゆる競技の中で、最も精神面が影響する競技と言われています。

例えば、一緒に試合をする相手が自分より段が上だと、「レベルが違うから勝てない」と委縮してしまったり、逆に段が下だと、「負けたら恥ずかしい」と自分を追い込んで、失敗してしまうことがあります。
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先ほどご紹介した通り、正射必中、正しく射れば必ず矢は当たります。自分と向かい合い、常に平常心でいられる心を養うことが弓道の本来の目的です。

また、弓道では礼節を重んじ、相手を慈しむことが大切です。自分自身を大切にし、平常心を保つことで、相手も大切にする「善」の心を持つことができるのです。

「美」は真と善の結晶

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「真」の形と「善」の心が一体となった時、弓道における「美」は実現されます。正しい構え、正しい動作、正しい心が一体となった時に、理想とされる美しい弓が表現されます。

弓道を修行の一つとしている超禅寺の須原和尚は、弓道をこのように語っています。
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『我々は自分の人格が虹の七色のごとく輝くように弓を引かなければならない。二十八メートル先の的に当てるだけに満足していてはならない。矢と心を一つにし、それを全霊をもって真っ直ぐ的に送ってやるのだ。それが精神的な弓道なのだ。(中略)たとえ矢は的に当たらなくても、美しく素晴らしい弓道であり続けるのだ』(ケネス・クシュナー著 櫛田如堂訳/細川道彦監修 『一射絶命』 ベースボール・マガジン社より引用)

勝ち負けや当たる、当たらないにこだわらず、自分自身の人格や精神を磨き上げ、ただただ一心に矢を的に送ることの大切さを、この言葉から感じることができます。矢を送ること、つまり射法(真)と人格や精神(善)が一つになり、美しい弓道(美)が完成するのです。

真善美とプラトンの関係性

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人間の究極の理想とされる真善美は、プラトンのイデア論と深い関係があります。プラトンが真善美をどのようにとらえていたのか、またイデアとはどういうものかをご説明します。

プラトンの思想

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プラトンは紀元前428年に、ギリシャのアイギナ島で誕生しました。師匠は古代ギリシャの偉大な哲学者ソクラテスです。当時ソクラテスがいたギリシャのアテナイでは、知識や弁論術を人々に教えるソフィストと呼ばれる教育学者が多くいました。

ソクラテスは彼らは処世術を教えているに過ぎないと強く批判し、魂(プシュケー)への配慮の大切さを説きました。そして、富、健康、名誉と言った人間の財産というべきものを、すぐれた魂によって正しく使われた場合にのみ、幸せを生み出すこと、またすぐれた魂のためには真善美を正しく知ることと考えたのです。
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しかしソクラテスの思想は国家に「人々を惑わせた」と批判され、裁判にかけられて死刑になってしまいます。プラトンをはじめとした弟子たちは国外逃亡を進めましたが、ソクラテスは「大切なのはただ生きることではなく善く生きることだ」と言って死刑を受け入れます。ソクラテスにとっては、例え自分の思想が正しいとしても、脱獄は不正であり、おこなってはいけないことだったのです。

尊敬する師匠を失ったプラトンは深いショックを受けますが、ソクラテスの思想をまとめ、その遺志を引き継いで、人間が本当に考えるべきことは何か、いかに生きるべきかを探求していくことになります。

イデア論

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プラトンが打ち立てたイデア論では、全てこの世のものは仮の姿であり、天上のどこかに「イデア」と呼ばれる「本体」があると説かれています。イデアはこの世界の全てのものにあり、花には花のイデア、木には木のイデアがあります。イデアがあるからこそ、私たちはどの花を見ても、どれも「花」だと判断することができるのです。イデアは「本質」であり、「共通の形」と考えると分かりやすいかもしれません。

イデアは形あるものだけではなく、正義や美にもあり、理性の目で見ることができます。プラトンはその中でも、「善」のイデアが最高のものであること、真の善や美を知るためには、理性を働かせてイデアを探求することだとプラトンは考えました。

洞窟の比喩

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理性を働かせて考えることの重要性を、プラトンは洞窟の比喩を使って説いています。イデアを知らない人々は、洞窟に閉じ込められ、手足を縛られて洞窟の奥を見ている人です。その人の後ろには悪魔がいて、何らかの像を松明で照らし、洞窟の奥に影絵を作っています。人はその影絵を見て、「これが本物なんだ」と思い込んでしまいます。

その人に本物を見せるためには、洞窟の外に出して、本当の世界に連れて行ってあげなくてはなりません。その外の世界が、イデアの世界というわけです。

プラトンは全ての存在の根本原理である善のイデアを、外の世界の全てのものを照らす太陽に例えました。また、感覚だけで物を見るのではなく、理性を使ってイデアを見るように促せる存在として、統治者には哲学者がなるべきだと考えました。

真善美とカント哲学の関係性

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