2019年7月15日 更新

割れ窓理論の概要と事例!恋愛や教育への応用と割れ窓理論への批判

割れ窓理論について詳細を知りたい方に向けて、その理論に対する批判や嘘か真実かの真偽性についてや、具体的な理論の適用事例や教育、恋愛、職場における割れ窓理論について等、身近な例をご紹介しながら、わかりやすく解説していきます。

1980年のニューヨーク市

Statue Of Liberty New York Ny - Free photo on Pixabay (367947)

ニューヨーク市は、1980年代頃から、アメリカでは有数の犯罪が多発する都市として有名になっていました。とても危険な雰囲気の状態であり、安心して夜は外に出れないような都市でした。落書きや割れた窓など、いかにも近寄っては危険な雰囲気を醸し出していたのです。

そこで、1994年に検事出身のルドルフ・ジュリアーニが、治安の回復を公約に市長に当選しました。そうすると「家族連れにも安心な街にする」と宣言したのです。そして、割れ窓理論の提唱者のジョージ・ケリングを顧問として、相談を仰ぎ、この理論を応用することで、治安対策に乗り出したのです。

軽犯罪の徹底した取り締まりや懲罰

Manhattan Empire State Building - Free photo on Pixabay (367946)

上述したルドルフ・ジュリアーニの政策は、「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策と名付けられており、こちらも先述したように、徹底して罰則を作り、遵守しなければ厳しく対応するというものです。そのために、警察に予算を多めに重点配分して、警察職員を5000人増員した後、街頭パトロールを強化しました。

そして、落書きや未成年者の喫煙、無賃乗車から万引きなどの他に、花火や爆竹、騒音や違法駐車など、比較的軽い犯罪に対しても、徹底的な取り締まりを行なったのです。さらに、ジェイウォーク(歩行者の交通違反)と、タクシーの交通違反、また、飲酒運転の厳罰化も実施しました。

ホームレスやポルノショップの締め出し

New York Cityscape Night - Free photo on Pixabay (367948)

厳しくしたのは上記の内容だけにとどまらず、路上屋台の禁止や、ポルノショップなどの雰囲気を悪くしたり治安を悪化させる可能性のあるものを締め出しました。そして、さらには、ホームレスを路上から徹底的に排除し、保護施設に強制収容することで、労働を強制するような施策まで行ないました。

多くの予算を使って、ここまで実行したのです。現在の日本ですらまだホームレスが存在していますが、当時のニューヨークにおいて、すでにこのようなところまで重点的に予算を使い、対応したのです。

効果

Blue Sky Green - Free photo on Pixabay (367927)

そして、ここまで徹底して計画を実行し続けたことで、就任してから5年間で、犯罪の認知件数は、「殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%減少」したのです。このようにして治安が回復していきました。さらに、中心街においても活気を取り戻しはじめ、なんと住民や観光客が戻ってきたのです。

その反面、厳しくし過ぎた結果、無実の人間が警官に射殺されてしまう、という深刻な事態も発生してしまいました。アマドゥ・ディアロ射殺事件というものが有名で、当時は大規模なデモにまで発展したのです。このような副作用を伴いつつ、数値として結果も出て、体感治安も改善しました。

日本での割れ窓理論の採用

Tori Japanese Shrine - Free photo on Pixabay (367934)

ここでは、アメリカでの成功事例を見習い、日本でも割れ窓理論を採用した地域の効果について、ご紹介いたします。2001年には、札幌中央署が採用し、また、東京の足立区でも割れ窓理論を採用し「ビューティフル・ウィンドウズ運動」と名付けて開始しました。

さらに、今でも大人気のディズニーランドでも取り入れられたのです。それぞれの目的と、どのような効果があったのかを実例としてご紹介いたします。

2001年に札幌中央署が採用

Japan Hokkaido Winter - Free photo on Pixabay (367928)

2001年に札幌中央署(北海道警察札幌方面中央警察署)が、割れ窓理論を採用しました。ここでの割れ窓は、実際には窓ではなく、違反駐車に置き換えて、的を絞り込みました。これは「すすきの」で行われたので、すすきの環境浄化総合対策として犯罪対策が実施されたのです。

警察庁は平成14年度版の「警察白書」において、見解を述べています。それは「犯罪に強い社会を構築するには、これまで取り締まりの対象外であった秩序違反行為に対しても、きちんと規制をすることにより、犯罪の増加に歯止めを掛けることも重要な対策の一つであると認められる。」というものでした。

詳細は、警察庁編「平成14年警察白書」第1章第3節に記載されています。このように、日本においても札幌で先陣を切って実行に移したのです。

駐車違反を徹底的に取りしまる

Japanese Cherry Trees Flowers Pink - Free photo on Pixabay (367931)

本来の割れ窓理論では、秩序に反するものを全て厳しく対象としましたが、日本の札幌の場合では、1つの事に焦点を絞り、その1点において減少させる目的で行われました。具体的には、北海道内で最大の歓楽街と言われる「すすきの」において、駐車違反を徹底的に取り締まったのです。

このように、日本の事例では、的を絞り込んで取り入れる事例があります。このように取り入れるのであれば、ハードルも下がり、効果も測定しやすくなります。考え方はあらゆるものに活用されており、常に清潔にしておくことや、肩だ受けや断捨離を維持することも、同じ理論を活用しているのです。

見られた効果

Landscape Rice Terraces Sunset - Free photo on Pixabay (367932)

札幌での取り組みによる効果はどのようなものだったのかと言いますと、まず、「路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少」しました。そして、「地域ボランティアとの協力による街頭パトロールの強化によって、2年間で犯罪を15%減少」させることに成功したのです。

これを受けて、各地の警察署から、詳しく知りたいとヒアリングなどが活発化しました。成功事例がないと取り入れに消極的になりがちなのが世間の風潮なので、まずは成功体験を公表することで、他の団体や施設も取り組もうとする流れが活発化するのです。

ビューティフル・ウィンドウズ

Pedestrians People Busy - Free photo on Pixabay (367933)

東京都足立区は、東京都でもっとも治安が悪いとされており、割れ窓を美しい窓に保つという意志から「ビューティフル・ウィンドウズ運動」と名付けて実施しました。割れ窓理論を参考に、「美しいまち」を印象づけることで、犯罪を未然に抑止していこうという事が目的でした。

地域による防犯活動や美化推進活動の支援、路上喫煙禁止と放置自転車の防止。また、商店街でのシャッターアートや学校や地域での草花による美しいまちづくりにより、「花いっぱい運動」が実施されました。毎年夏休みには、都立足立高校や、私立潤徳女子高校の学生たちが美しい絵を描いたりもします。

効果

Zen Garden Meditation - Free photo on Pixabay (367929)

効果としては、刑法犯罪認知件数の総数の減少効果が見られています(警視庁の「犯罪情報マップ足立区全刑法犯」参照)。また、花壇の育成や、道に落ちているゴミを拾うといった日頃の小さな運動を見た人に「このまちは意識が高い」と思ってもらうことが大切であると考える人が増えました。

そして、この考え方が広まっているまちで育った子供たちは、高い規範意識をもって成長し、いずれ自分の子供の手本になるという環境が生まれてくる事を期待するように改善されたのです。

2 / 4

関連する記事 こんな記事も人気です♪