2019年8月16日 更新

リュウグウノツカイは地震の前触れ?過去の事例や地震との関連性

リュウグウノツカイは、その神秘的な名前に似合う不思議な姿をした深海魚です。普段は海の底深くに住むリュウグウノツカイが岸辺に上がってくるのは地震の前触れとされ、恐れられています。本当にリュウグウノツカイは地震と関係があるのでしょうか。

2011年1月19日、神奈川県小田原市の定置網にリュウグウノツカイがかかりました。発見当時は生きていましたが、けがと骨折があり、残念ながらその後すぐに死んでしまったそうです。

東日本大震災が起きたのはこの2か月後ということで、このリュウグウノツカイの捕獲は地震の予兆だったのでは?と話題になりましたが、小田原の定置網にはほかにも2010年1月にサケガシラがかかったほか、同じく深海魚のテンガイハタや、ミンククジラも獲れたことがあるとのことです。

また、震災から2年後の2月にもリュウグウノツカイがかかっていることから、2011年に獲れたリュウグウノツカイと震災との関係は不明です。

2011年3月クジラが打ち上げられる

 (549940)

2011年3月4日夜、茨城県鹿嶋市の下津海岸で、クジラ52頭が座礁しているのが見つかりました。クジラは体長2~3mで、小型クジラのカズハゴンドウでした。餌の小魚を追いかけて方向感覚を失い、海岸に上がってきてしまったのではないかと推測されました。

また、震災3日前の3月8日には、三陸海岸に348頭ものクジラが座礁したと言われています。このように、クジラやイルカといった海洋哺乳類が打ち上げられる現象をストランディングといい、特に大量に打ち上げられることをマス・ストランディングと言います。このストランディングと地震との関連性について研究が進められているものの、現在のところ結論は出ていません。

リュウグウノツカイと地震の関係

 (550375)

先ほどご紹介した通り、東日本大震災の前にはリュウグウノツカイの座礁が見られました。しかし、なぜリュウグウノツカイをはじめとした深海魚は、地震の前に海岸に来ると考えられるのでしょうか。

深海魚は活断層の動きを敏感に察知する

 (550374)

メダカや金魚を使った実験では、水を張った箱の中に魚を入れ、電流を流したところ、魚は電流の流れと垂直方向に整列するという結果になりました。

魚だけではなく、多くの生き物は、電流の流れに対して垂直に並ぶという行動を取ります。これは、筋繊維の電気抵抗が、電流と並行では小さく、垂直では7~10倍大きいため、垂直に並んだほうが体内を流れる電流量を少なくできるからです。このように、生き物は電気の流れを感じ取る力を持っています。

地震の前には海底の活断層が動き、電磁気的に変化が起こります。深海にすむリュウグウノツカイは、浅いところに棲む魚よりもその変化を敏感に察知します。その変化から逃げるために海底から上がってきてしまうのではないかと考えられています。

地震前に発生する地電流を回避するため海面に上がる

 (538278)

地震の前には地電流の変化があると考えられています。この地電流の変化は海底の方がより大きいために、深海魚はそれを敏感に感じ取り、回避する形で海岸に上がってくるのだという説もあります。

この地電流の変化を計測することができれば、地震を予知することができるとされ、打ち立てたられたのが「VAN法」です。

これは自然電位の変化を監視することにより、地震前兆の電気信号を捉える手法で、ギリシャでは正式な地震予知法として実用されています。しかし、その有効性については諸説あり、メカニズム解明のためのさらなる研究が必要とされています。

リュウグウノツカイと地震の関係についての見解や研究結果

 (543545)

リュウグウノツカイが打ち上げられると地震が来る、というのは単なる迷信とも思われていました。しかし、現在ではリュウグウノツカイと地震の関連性についての研究や考察も数多くおこなわれています。果たして、リュウグウノツカイは本当に地震の訪れを知らせる海からの使者なのでしょうか。

中国や香港では地震魚とされている

 (559179)

中国は地震多発国と言われており、20世紀にはM8.5クラスの地震が2回(1920年、1950年)発生しています。なんと陸上型地震に限って言えば、全世界の直下型地震件数の3分の1が中国国内で発生しているというのですから驚きです。

そんな中国では、日本以上に動物の行動異常などから地震を予知しようとする動きが大きく、動物の行動から地震の前兆を読み取るための地震防災歌もあるくらいです。もちろん、リュウグウノツカイも地震をもたらす魚としてとらえられ、「地震魚」と呼ばれています。

香港は地震の少ない地域ですが、中国や日本で発生する地震について関心が高いためか、同じようにリュウグウノツカイを「地震魚」と呼び、日本でリュウグウノツカイが海岸で発見されたことをニュースで取り上げているようです。

地震研究家の百瀬直也

 (559164)

百瀬直也は自身を地震予兆研究家と名乗り、ブログで地震・火山噴火など自然災害と防災との関係を研究、情報発信しています。20代の頃から天体の位置と地震の関係に興味を持ち始め、他にも気象現象や動物の異常行動と地震の関連性について研究を続けています。

リュウグウノツカイをはじめとした深海魚と地震の関係についても研究しており、その関連性は高いと述べています。リュウグウノツカイが地震を予知するのは、地震前に発生する電磁波を敏感に感じ取るからであり、本人も地震の前には頭痛や眠気があることから、地震の前兆は動物はもちろん、人間でさえも体感できると断言しています。
 (559169)

しかし、彼の言動にはスピリチュアルな面もあり、夢や霊感のようなもので地震を予知した人などの紹介もしていることから、そういった面に懐疑的な目を向ける人たちにはなかなか受け入れられないようです。

ですが、答えどころかそれにたどり着く方法も分かっていない地震予知は、様々な方向からアプローチする必要があります。彼が発信する情報は、科学者ではないからこその新鮮な見解が含まれているかもしれません。

水産学者の末広恭雄

 (559156)

「お魚博士」の愛称で親しまれた末広恭雄東大名誉教授は、先ほどご紹介した冗談半分の地震予知事件から、深海魚の行動と地震の関連性について関心を持ち、研究をおこなうようになりました。

リュウグウノツカイやシギウナギといった深海魚が海岸に上がるのは、地震前に何らかの刺激によって生息場所を離れたのではないかと考え、深海魚が獲れた場合はすぐに通報するように通告を出しました。

また、1933年に発生した三陸津波の当日、神奈川県三崎で獲れたマイワシが、普段の5倍ものプランクトンを食べていることを発見しました。しかもそれは、普段マイワシが食べている表層のものではなく、底着性のプランクトンだったのです。博士はこれを、地震前に多量の底着性プランクトンが海面近くまで浮かび上がり、それをマイワシが多量に食べたからだと考えました。
 (559159)

末広教授は東大を退官した後、京急油壷マリンパークの館長を務め、様々な演出を取り入れた「サーカス水族館」を確立させつつ、地震と魚類の異常生態の研究に取り組みました。

一般向けの随筆も多く書いており、そのユーモアたっぷりの筆致からは、魚に対する尊敬と愛情が感じられます。1988年に84歳で亡くなるまで、魚を愛し、情熱を傾け続けた人生でした。

2 / 5

関連する記事 こんな記事も人気です♪