2019年9月21日 更新

ブラジル史上最悪と呼ばれるバスジャック事件とは?事件のその後は?

ブラジルの首都リオデジャネイロで、銃で脅かしてお金を奪おうとしていただけの若い男が「バスジャック」を起こすことになってしまい。乗客が開放されるまでのショッキングな一部始終が、地元メディアで4時間も完全生中継で流されるという事件が起こりました。

ブラジルで起きた悲惨なバスジャック事件とは

Brazil Flag Flags South - Free photo on Pixabay (643355)

2000年6月、早朝のブラジルのリオデジャネイロの『マレ』地区で、拳銃らしきものを持った20歳の男が人質に銃を突き付け大声で叫びながら11人を人質に立てこもり、バスが乗っ取られるという「バス174」と呼ばれる事件が起こりました。

現場には軍警察の特殊部隊などが駆け付け、事件発生から約3時間半後に男は射殺されましたが、乗客らにけがはありませんでした。男が持っていた拳銃は偽物で、乗客を脅して金をゆすり取ろうとしていただけだったはずが追い込まれ、ブラジル中が見つめる中で、バスジャック犯となってしまったのです。

なんと!このショッキングな「史上最悪のバスジャック事件」の一部始終や、人質となっていた乗客らが解放される様子などは、地元メディアで4時間も生中継されたのです。

リオデジャネイロのマレ地区

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ブラジル南東部に位置するリオデジャネイロ州の州都で、国内最大の観光都市『リオデジャネイロ』の北部に、リオデジャネイロで最大のスラム街『マレ』地区があり、ブラジルにある最も危険と言われるスラム街『ファベーラ』の1つに、約13万人のギャングなどの住民が暮らしています。

ファベーラは徐々に拡大しており、深刻な暴力と貧困に直面しています。軍や警察による厳しい犯罪追放作戦が頻繁にされており、麻薬取引に伴う紛争による死者も多くで続けているのです。

治安が悪いことで有名

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リオデジャネイロは、サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)で決勝を含む7試合が行われる予定となっており、日常的に殺人事件や銃撃戦が起こるほどの治安が悪く、リオデジャネイロで最も危険とされ組織犯罪の温床になっているマレ地区には、大量のサッカーファンが通る可能性がありました。

そこで、ドラッグ密売組織を一掃するために、1000人以上の警官隊が、ヘリコプターと海軍の装甲車による支援を受け、リオの国際空港に近いマレ地区のスラム街『ファベーラ』を制圧しましたが、状況が変わることはないまま放置されています。

2014年には、BBCドキュメンタリーシリーズ「Welcome to Rio」で、この『マレ』地区が取り上げられました。

イボーネという母親がいた

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リオデジャネイロで最大のスラム街『マレ』地区で、心に傷を抱えた子どもたちに教育支援をするのが『イボーネ・ベゼーラ・ネベロ』という女性です。

イボーネさんは、人生のすべてを捧げ、ストリートチルドレンやスラムの子どもたちの教育支援を続けてきた「ストリートチルドレンの母」で、町を取材をする現地スタッフも決して立ち入ることはできないほど危険な地区で育った「バス174」事件の犯人の「育ての母」でもありました。

バスジャック事件の経過

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職もなく家もなくあてもない貧しい青年が「今日何を食べよう?」と思いつくことといえば、ゆすり・たかり・盗みでしょう。

ブラジルのスラム街では、日常茶飯事にこのような日々が繰り返されているため、誰も驚きもしないことでした。

しかし、ちょっとした小銭欲しさにバスでお金をゆすろうとしていた犯人は、警察に取り囲まれ、やじ馬やテレビカメラで生中継されるという事態まで追い込まれてしまい、殺人事件まで引き起こしかねない事態に追い込まれてしまっていたのです。

バスジャック事件の始まり

Brazil Man Person - Free photo on Pixabay (643366)

マレ地区でバス停に並んでいた乗客の一人が、拳銃を所持している男を目撃し警察に通報しました。現場に駆け付けた警察官がバスに乗り込み、男に「今すぐバスを降りろ」警告しました。

すると、男は近くにいた女性を抱え込み、拳銃を頭に突き付け「お前たちが降りろ。さもないとこいつの頭を吹っ飛ばす」と叫び、11人を人質にバスに立てこもったのです。

警察は至近距離でバスを取り囲み、事件を聞きつけたメディアとやじ馬が集まり、すぐにテレビの生中継が始まりました。慌てた男は車内から外に向けて発砲し、逃げ惑うメディアとやじ馬たちで現場は騒然となったのです。

警察への要求

Bodyworn Body Camera Police - Free photo on Pixabay (643367)

犯人がこのバスに乗り込んだのは、銃で乗客を脅して金をゆすり取ろうとしたためでしたが、バスの窓から身を乗り出す犯人の男は、生中継を続けるテレビカメラに向かい「おい、ブラジル! 俺を映せ! 俺はカンデラリアにいた」と叫びました。「逃走用の車を用意しろ!警察は卑怯者だ」と叫びました。

ブラジル人なら誰もが知る「カンデラリア」とは、ストリートチルドレンたちに開放されたリオデジャネイロの市内に立つ『カンデラリア教会』のことです。

1993年、パトカーに投石した8人のストリートチルドレンに怒った警察官が、深夜の教会に車で乗り付け、寝ている子どもたちに無差別に発砲し8人が殺害したのです。これは『カンデラリア教会虐殺事件』として未だに語り継がれている惨劇で、この犯人もそこにいたと言うのです。

特殊部隊を要請するも進展せず

Dangerous Police Helicopter - Free photo on Pixabay (643369)

軍警察は特殊部隊の出動を要請し、市街戦では世界最強と言われる特殊部隊『BOPE(ボッピ)』がバスを取り囲み、腕利きのスナイパーが狙撃態勢に入っていました。

しかし、一向に自分の要求に応じない警察に業を煮やした犯人は、人質の女子大学生に銃を突き付け窓に連れて行き、口紅を渡し文字を書かせて見せるという驚くべき行動に出たのです。

その模様は、完全生中継でテレビカメラに収められ、ブラジル中がかたずを飲んでその様子を見つめていました。完全生中継の事件が放送されているということは、最終的にこの事件がどうなるのか誰にもわからないままということでした。

生中継という足かせ

Children Tv Child - Free photo on Pixabay (643373)

しかし、特殊部隊は男を撃つことができませんでした。やじ馬で溢れている中で、テレビで生中継がされている中で、特殊部隊の手で、男の頭が撃ち抜かれる瞬間をブラジル国民に見せるわけにはいかなかったのです。

「人質の命を守った上で、犯人を生きたまま確保する」ということが特殊部隊に課せられたミッションでした。1993年の「カンデラリア教会虐殺事件」で、警察に強い不信感を抱くのは犯人だけではありませんでした。

ブラジルは経済状況が良くなるという経験をしたことなどなく、どうすれば経済が良くなるのかを知る人や、経済を良くして治安を立て直そうとする人さえいませんでした。もしろん警察も堕落しており、、国民全体が警察には正義感などないことを知っていたのです。

「午後6時に全員を殺す」

Splatter Blood Drops - Free vector graphic on Pixabay (643850)

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