2019年4月4日 更新

フランスは黒人の割合が多い?差別の歴史とサッカーフランス代表の実情

2018年のサッカーワールドカップで優勝したフランス代表に黒人選手が多かったことが話題を集めました。確かにフランスは移民国家という印象が強いですが、実際に黒人の割合が多いのでしょうか?今回はフランスにおける黒人を含む移民の実態や差別の歴史について解説します。

目次

救急オペレーターに相手にされず死亡

Ambulance Medicine Hospital Health - Free photo on Pixabay (145215)

2018年にフランスのストラスブールで衝撃的な事件が起こりました。コンゴ出身の女性が体調不良で救急車を呼ぼうとしたところ、オペレーターに冷たくあしらわれ、結果的に亡くなってしまったのです。

必死に苦痛と死の恐怖を訴える女性に対し、オペレーターは「人間はいつか死ぬ」と言い放ち、同僚と共に女性をからかったと言われています。その後、女性は病院に搬送されましたが、心臓発作で亡くなりました。

この事件はあくまでフランスの医療制度の問題であって人種差別ではないという意見もありますが、亡くなった女性がコンゴ出身だったこともあり、人種差別だという批判もあります。

アラブ人/ムスリムへの風当たり

Men People Smiling - Free photo on Pixabay (145218)

フランスには、アラブ人などのムスリム(イスラム教徒)移民も多く、フランス社会に溶け込んで暮らしています。しかし、近年はアラブ人/ムスリムへの風当たりが強くなっています。

フランスは伝統的に政教分離(ライシテ)へのこだわりが強く、これがムスリムとの軋轢の原因になっています。象徴的な出来事は1989年に起きた「スカーフ事件」です。
Hijab Headscarf Portrait - Free photo on Pixabay (145228)

この事件はムスリムの女子中学生がヒジャーブ(スカーフ)を付けて登校しようとしたところ、学校側がヒジャーブを付けて登校してはいけないと要請し、生徒を追い返したという事件です。

宗教的な要素を公共の場に持ち出すことを嫌うフランスの政治、社会を象徴する事件であり、似たようなことは現在でも起こっています。また、後ほど詳しく解説しますが、フランスではイスラム過激派によるテロ事件も起こっており、ムスリムに対する風当たりの強さは増す一方です。

黒人フランス人がアジア人を差別することも

African Women American - Free photo on Pixabay (145230)

差別というと白人による黒人の差別が問題になることが多いですが、アジア人が差別されることも多くあります。先に解説したGACKTのケースが典型的ですが、他に普段差別されている黒人フランス人がアジア人を差別することもあります。

フランスに限らず、アジア人が差別されるケースは世界中であります。さらにアジア人が同じアジア人を差別するケースもあります。普段差別される側が差別してしまうという非常に複雑な問題が世界中で起こっています。

なぜ差別が多い?フランスの差別の歴史

France Flag Map French - Free image on Pixabay (145231)

人種差別はヨーロッパを始め、世界中で問題になっており、フランスだけが突出して多いわけではありません。しかし、移民が多いフランスで差別が問題になっていることは事実です。

フランスのおける差別について理解するために、フランスの差別の歴史を見てみましょう。

フランスの差別の始まりは1960年代から

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人種差別はどの地域にも古くからありますが、フランスで現在も問題になっている差別は、第二次世界大戦後、フランスが経済発展に沸いていた頃から始まっています。

先に解説した通り、フランスで移民が増え始めたのは戦後の経済発展に伴う労働力需要の増加が原因です。加えて1962年には、フランスと最も近い関係にあった植民地、アルジェリアが独立しました。

移民や独立した旧植民地の国民に対するフランス人の優位が崩れていくことに対する不安が、移民に対する差別へとつながった面があります。

労働移民に対する差別の歴史

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フランスにおける差別は、特に労働移民に対して顕著に表れています。経済が潤っているころはまだ良かったのですが、経済成長が止まり、景気が悪くなって失業者が増えると、その原因を移民の増加に求める人が出てくるようになりました。

特に保守的な価値観を持つ人は、元々移民に良い感情を持っていない人が多く、移民反対を叫ぶようになったという歴史があります。

もちろん、全てのフランス人が差別をしていたわけではありませんが、そのような差別が歴史上あり、現在もあることは紛れもない事実です。

移民が国の情勢を脅かしていると考えられていた

New York City 1890 Vintage - Free photo on Pixabay (145241)

フランスで移民が増えたことで、移民に国の情勢が脅かされていると考えるフランス国民が多くいました。移民が増えたことにより、仕事を奪われたり治安が悪化したりすることに不安を覚える人が一定数いたのです。

このような考えはフランスに限ったことではありません。国や自分たちの権利が脅かされているという考えが差別への第一歩となるケースは世界中にあり、移民を受け入れている国では、多かれ少なかれ似たような問題を抱えています。

近年はこのような考えが再び支持を集めており、フランスだけでなく、ヨーロッパ全体で移民を国の脅威と捉える政治家や政党が台頭して問題になっています。

移民が流れ込むことでフランス文化を汚していると考えられた

Paris Eiffel Tower France - Free photo on Pixabay (145246)

移民の中には元々生まれ育った国の文化に慣れ親しんでいる人も多く、それらの国の文化とフランスの文化が衝突することも珍しくありません。その結果、移民がフランスの伝統的な文化を汚していると考える人が出てくるようになりました。

先に解説した「スカーフ事件」が典型的な事例ですが、他にもこのような例が多数あります。多くの国から移民を受け入れれば、当然このような文化衝突が増えてくるので、そのことを脅威と捉える人が移民を差別するようになってしまうのです。

移民がフランスを乗っ取ろうとしていると考えられていた

Workers Construction Site - Free photo on Pixabay (145250)

移民が増加すると、フランスという国が移民に乗っ取られるのではないかと考える人も出てきました。しかし、先に解説した通り、フランスで移民が占める割合は19%程度です。いくら移民が増えたとはいえ、国を乗っ取れるほどの力があるとは思えません。

実はこのような突飛な考えは歴史上、それほど珍しくはありません。例えばヨーロッパでは歴史的にユダヤ人に対する差別が根強くあります。理由はさまざまですが、中には少数のユダヤ人が国を乗っ取ろうとしているという荒唐無稽なものもあります。

冷静に考えるとおかしな話ですが、不景気などで社会的な不安が大きくなると、このような陰謀論的な考えに取りつかれてしまう人は珍しくありません。この考えだと自分たちは被害者ということになるので、移民を差別することが正当化できるわけです。

2015年パリ同時多発テロ事件

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