2019年7月15日 更新

ペプロウの看護理論と事例!看護は人間関係のプロセス?

ナイチンゲール以降の近代看護における看護学に多大な貢献をしたヒルデガード・ペプロウ。彼女は精神看護の母と呼ばれ対人関係理論で知られているアメリカの看護学者です。この記事ではそのヒルデガード・ペプロウについてご紹介していきます。

看護者の演ずる二次的な役割

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看護者は患者の回復過程毎に役割を演じ問題解決へと進めていきます。主に演じられる役割として、母親・友人・指導者・治癒者・未知・代理人・カウンセラーなどがあります。

例えば母親的な役割を演じる場合、看護者は患者に対しあるがままを受け止め否定的でなく患者のニーズに順応するようにします。また、友人的な役割を演じる場合であれば友好的な対人関係を築き、患者に対し世間的な話し相手となってあげます。

この様にして、看護者は患者・回復過程を見極め役割を演じます。

4つの段階について

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ペプロウの看護理論には患者と看護者が初めて対面し、人間関係を構築していくにあたる人間関係のプロセスを大きく4つの段階に分けて考えられているという特徴があります。

“方向付けの段階”、“同一化の段階”、“開拓利用の段階”、“問題解決の段階”を指します。看護者は患者に対し、この4つの段階を活用しつつ問題解決へと共に向かっていきます。次はそんなペプロウの看護理論で用いられる4つの段階について具体的に説明していきましょう。

方向付けの段階

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“方向付けの段階”とは、つまり看護者と患者の“出会い”のことを指します。患者と看護者がお互いを「未知の人」として出会う時期に当たります。初対面ですからお互いは緊張状態にあります。

また、この時期の患者には切実なニードがあり、その困難な健康問題を解決する為に見知らぬ者同士で歩み始める段階です。この段階の特徴は、患者は心配事を常に抱えている為に情報を与えられてもすぐに忘れてしまうという事があります。

よって、看護者は患者自身が置かれている状況を理解しやすいように援助をする必要があります。

同一化の段階

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次の“同一化の段階”では“求める時期・患者が信頼出来る看護者を選び、反応する時期”を指します。患者が今後行われる治療、問題解決の為に行われる処置の内容に対し看護者と患者同士で解決していく為の準備をする段階です。また、自身の健康問題とも向き合えるようになる時期でもあります。

その中で近づきやすい雰囲気であったり、患者は自分の為に情報を提供してくれる看護者に対しての信頼を置く事が出来ます。患者自身が健康問題と向き合える時期である為、様々な変化の中で看護者を活用できるように援助していく事が求められます。

開拓利用の段階

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更に“開拓利用の段階”では患者が看護者や環境などを大いに“活用”する時期を指します。患者にとって信頼の置ける看護者は“同一化”の対象となります。“同一化”とは例えると、憧れる人物の仕草や特徴を真似する事で誰かの思考や状況を自身の体験であるように思うことを言います。

つまり患者は看護者に同一化する事で自身の問題・ニードを自覚する事ができるようになります。それによって患者は問題を解決する為に与えられている環境やサービス、人を大いに利用する事が出来るようになります。このことを“開拓利用の段階”と言います。

問題解決の段階

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最後に“問題解決の段階”です。これは、“問題の解決と別れ”を指します。“開拓利用の段階”では同一化によって自分のニードの確認、問題解決に向かっていきます。問題解決に向かっていくにつれ、患者は同一化から徐々に抜け出しつつ自立する力を強めていきます。

ただし、この段階では問題である病気が完治するわけではなく、患者自身に共存できる成熟さが備わり整った状態となります。このことを“問題解決の段階”と呼びます。

ペプロウが説いた不安の定義と実例

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ペプロウは患者の不安を「ストレスに反応し、生み出されるもの」とし、レベルごとに分類し定義しています。“軽度”、“中等度”、“強度”、“パニック”の4つです。

また、ペプロウの不安の定義には次のような特徴があります。患者が不安を抱くと不安を抱くとそれは患者のエネルギーとなる。結果、凶暴性を持ったり自傷行為などを行ってしまいます。更に不安は伝達しやすい為、看護者は一層の注意が必要となります。

この様にして①不安というエネルギー、②感じ取れるが直接的に観察することは出来ない、③不安は人に伝達しやすい、という特徴があります。最後は不安のレベルの定義と実際に行われた看護者の対処の実例をご紹介しましょう。

不安のレベル“軽度”の解説と実例

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不安レベル“軽度”の場合、日々の生活における緊張が関係します。“軽度”の段階では主に知覚領域が鋭くなります。用心し、見ることや聞くこと、理解することなどを指します。“軽度”の不安は学習の機会となり個人の創造力などの個人の成長を生み出してします。

実例では、とある患者の治療において化学療法の副作用によって引き起こされる食思の低下・吐気に対する不安が引き起こされました。そこで対処として、栄養士の相談・食事内容の変更を勧める・家からの差し入れ等が可能であることを伝えた結果、食思の低下を解消することが出来ました。

不安のレベル“中等度”の解説と実例

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不安のレベルが“中等度”になると、直面する心配ごとに焦点が合う為、他のことに対して無関心となります。それによって知覚領域が低下し、見ることや聞くこと、理解することに影響が及びます。

不注意になるという特徴がありますが、しようと思えば更に注意をすることが出来ます。実例では、とある患者が病気の影響によって現在の体の状態がこのまま更に悪化するのではないかという理由で不安が引き起こされました。

そこで、患者が信頼を置いている看護者が観察結果だけでなく、確実に観察を行っているということを伝わる様に説明を行い、不安が増強しないような働きかけをしたことにより患者の不安が解消されました。

不安のレベル“強度”の解説と実例

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不安のレベルが“強度”まで上がると、“軽度”“中等度”と比べて知覚領域が著しく低下します。それによって全ての行動が安心を得ようとするものになり、他のことには何も考えられなくなる程に細部に集中してしまいます。

つまり、“強度”まで不安のレベルがあがった人に対して他の領域に意識を向けさせる為には強い指示が必要となります。実例では、癌を患った患者が抗がん剤治療によって副作用が現れ、そのことによって不安が引き起こされました。

そこで看護者が患者の意向に沿える様に主治医、家族と話を詰めていきました。最終的に患者の希望に向けて話が進んでいくことで食事をとる努力や生きることへの意欲へと繋がり、また患者の家族も力になれているという実感へ繋がり患者の不安は改善されていきました。

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