2019年8月21日 更新

ポーランドの兵隊熊ヴォイテクの生涯!熊と人間の友情物語

ヴォイテクは大二次世界大戦中、ポーランドの兵士たちに拾われた熊です。成長したヴォイテクは軍務を助けるだけではなく、そのかわいい仕草や優しい心で兵士たちの心を支えてきました。不思議でおもしろく、そして感動的な熊と兵士たちの友情物語をご紹介しましょう。

ポーランド第2軍団第22弾薬補給中隊に配属

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1944年、ヴォイテクはポーランド軍に正式に徴兵され、ピョートルたちが所属する第2軍団第22弾薬補給中隊に配属されました。そして部隊と共にイラク、シリア、パレスチナやエジプトを経由し、南イタリアに渡りました。

エジプトからイタリアへの渡航の際、動物は輸送船に乗れないという規定があったため、ヴォイテクのために伍長の階級を授与し、軍籍番号と軍隊手帳も発行されました。伍長というと下士官ですから、一般の兵士より階級は上になります。

イタリアの港で、到着した兵士を名簿と照らし合わせる作業をおこなうため彼らを待っていたイギリスの役人は、檻に入って到着した「ヴォイテク伍長」に驚き、そのことを何度も周囲に話したというエピソードも残っています。

モンテ・カッシーノの戦いで活躍

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伍長の階級を与えられ、無事イタリアについたヴォイテクは、仲間たちと一緒にモンテ・カッシーノの戦いに参戦します。モンテ・カッシーノは山岳地帯で、イタリアでの激戦地のひとつでした。

中東での比較的穏やかな暮らしとは違い、常に砲火の音や地響きが轟く最前線での生活となりましたが、ヴォイテクはすぐに慣れ、時には木の上から爆発を眺めることもありました。

彼らの仕事は最前線に砲弾を運ぶことでした。ヴォイテクはその様子をじっと眺めていましたが、そのうちに自分も砲弾の入った箱を運び始めました。
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その前から中隊のメンバーは、ヴォイテクに砲弾の箱を運ばせる訓練をしていましたが、ヴォイテクには面倒くさがり屋の一面があり、いつも空の箱ばかり運んでいました。しかし今回ばかりは、最前線での真剣な兵士たちの様子を見て、自分も一緒に働かなくてはと思ったのかもしれません。

12kgの弾がぎっしり詰まった箱の重さは100kgもあり、兵士たちはそれを4人がかりで運んでいました。しかしヴォイテクは一頭でその箱を2つ抱え、慎重に運び、足場の悪い山岳地帯でも決して落とすことはなかったと言います。

中隊のメンバーはヴォイテクの奮闘ぶりに勇気をもらい、1カ月の任務中に2万tの物資を運びました。その活躍によりモンテ・カッシーノの戦いは勝利のうちに終わり、ヴォイテクは英雄となりました。

第22弾薬補給中隊の部隊章

ファイル:Wojtek soldier bear.png - Wikipedia (573071)

モンテ・カッシーノの戦いが終わった後、ポーランド軍の司令部はヴォイテクの人気を認め、前足で砲弾を抱える熊をかたどった図柄を22中隊の部隊章とすることを正式に認めました。

紋章は兵士たち全員のベレー帽と制服につけられただけではなく、すべてのトラックの車体にも描かれました。ヴォイテクがトラックに乗り込み、自分をモデルとした部隊章を見ているような写真も残されています。

彼らは新しい部隊章を身に着け、最後の戦いに向かいました。4週間続いた大きな戦いの中で、ヴォイテクは仲間たちと一緒に銃弾や迫撃砲、手りゅう弾、砲弾とどんなものでも運び、彼らの乗ったトラックは戦争によって破壊された道を進み、どこにでも向かいました。そしてついに1945年9月2日、7年にわたり続いた第二次世界大戦は終わりを告げたのです。

熊の兵士ヴォイテクのかわいいエピソード

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ヴォイテクは奇跡的とも言えるほど人に慣れやすく、人懐こい性格をしていました。そのヴォイテクの素質は、兵士たちに大切に育てられることによってますます引き出され、優しくおもしろく愛らしい熊に成長しました。熊とは思えない、ヴォイテクのかわいいエピソードをいくつかご紹介しましょう。

人間のような愛らしい仕草

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ヴォイテクは子供の頃から人と一緒に過ごしてきたためか、自分を人間だと思っていたふしがありました。ヴォイテクの写真や動画を見た人は、「これは中に人が入っているのではないか」と言うくらい、人のような仕草を見せていました。

ヴォイテクは怒られたり怖い思いをしたりすると、前足で目を隠し、体をゆする癖がありました。その様子はまるで親に怒られたいたずら坊主のようで、愛らしく見えたことでしょう。

休暇中に訪れた農園では、お椀を手に持って飼われているヒヨコが近づいてくるのを待ち、ヒヨコの上にお椀をかぶせて捕まえてしまいました。ちなみにお椀の中をのぞこうとして持ち上げたところ、ヒヨコはその隙間から逃げて行ってしまったそうです。がっかりしたヴォイテクの顔が想像できる、愉快なエピソードです。

兵士と一緒に寝るのが好き

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ヴォイテクはとても甘えん坊で、人と一緒に寝るのが大好きでした。小さいうちは金だらい、大きくなってからは木の箱でベッドを作ってもらいましたが、その中ではあまり眠らず、ピョートルと一緒にベッドに入り、小さいときと変わらず、指をしゃぶりながら寝るのが好きでした。

このようにヴォイテクは普段は母親代わりに育ててくれたピョートルと一緒に寝ていましたが、ある兵士が目の前で仲間が死に、落ち込んでいたところにやって来て一緒に眠ったというエピソードがあります。

ヴォイテクと一緒に暮らした兵士たちは、ヴォイテクは人の心を良く理解していたと断言しています。ヴォイテクが人と一緒に寝るのは、甘えん坊だからというだけではなく、その温もりで人を癒すためだったのかもしれません。

好きな食べ物

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体長180cm、体重250kgの巨体に成長したヴォイテクは、もちろん食べるのが大好きでした。マーマレードやシロップ、果物、豚肉など、毎日大量の食べ物をもらっていました。イギリス軍のテントに忍び込んでクリスマスディナー用の貴重な桃の缶詰を盗み、食べてしまったこともあります。

そんなヴォイテクが最も好きだったのは、ビールとタバコでした。ビールが好きなのは、子供の頃ウォッカの瓶を哺乳瓶代わりにしていたため、アルコールに慣れていたからだとも言われています。また、タバコを良く食べましたが、火のついたものが好きで、火のついていないものは食べなかったそうです。

意外ですが熊はタバコが好きなようで、後述する畑正憲氏(ムツゴロウさん)は、その著書の中で熊がタバコの煙をなめようとしたり、灰を食べようとしたりする様子を紹介しています。他の動物はタバコのにおいを嫌がるのに、熊が好むというのは不思議な話です。

他の動物とも仲良し

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ヴォイテクとポーランド兵たちが暮らす宿営地には、他にも毛の生えた住人たちがいました。その中でヴォイテクが最も仲良くなったのはダルメシアン犬でした。ヴォイテクとダルメシアンはいつも一緒にいる友達になり、ふざけ合う様子は兵士たちの心をなごませました。

しかし、同じく宿営地の住人である「カシカ」の存在には悩まされていました。カシカは動物園から贈られたメスの猿で、テントに忍び込んではお菓子や服を盗んだり、夜中に金切り声を上げたりして、兵士たちをいら立たせていました。
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カシカはヴォイテクに砂を投げつけたり、両耳を引っ張っていじめたりしました。ヴォイテクの方がずっと大きいのですが、彼はカシカを怖がって、両手で目を隠してカシカが「いないこと」にしていたそうです。

カシカは子供を産んでから劇的に性格が変わり、ヴォイテクとも仲良くなりました。しかし、その後子供を亡くし、そのショックからか衰弱して死んでしまいます。ヴォイテクは悲しみのあまり、しばらくの間食べ物を受け付けなかったと言われています。

いたずらっ子な一面も

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