アウティングとは何か?アウティングの問題点や加害者の心理とは?

「一橋大学アウティング事件」の裁判が2019年2月に結審されました。アウティングとは何か、カミングアウトとどう違うのか、アウティングにおける加害者の心理とはどのようなものなのか、アウティングの問題点を含めて解説していきます。

目次

アウティングとは

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アウティングという言葉をご存知ですか?最近徐々に広まり、定着してきた言葉ですので聞いたことのある人も多いでしょう。

しかし聞いたことがあっても、具体的な意味は少し解りづらいかもしれません。アウティングとは何か、どうやって生まれた言葉なのか、LGBTとの関連性…知らないと取り返しのつかない事態を引き起こしてしまう可能性があります。

現代においてアウティングは、性的指向を語る上で欠かせない言葉です。カミングアウトとの違いも含めて解説していきましょう。

アウティングの意味

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アウティングとは、他人の性的指向を本人の許可なく第三者に暴露することです。

性的指向とは、「どの性を性的対象、恋愛対象にするか」ということで、代表的なのはLGBTでしょう。L(レズビアン)G(ゲイ)はホモセクシャリティ(同性愛)、B(バイセクシャル)はバイセクシャリティ(両性愛)、T(トランスジェンダー)は戸籍上の性と自覚している性が違う人のことを言います。

性的指向は非常にデリケートな問題で、LGBT活動家として公にしている人もいますし、隠して生活している人もたくさんいます。

アウティングと見なされる情報の種類

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アウティングは本人の意思とは関係ないところで個人情報を第三者に暴露されることですが、個人情報であればすべてアウティングと言われるわけではありません。

アウティングとみなされるのは「性的指向」「性的マイノリティ」に関することと限定されています。例えば「女性だけど女性が好き」「戸籍上は男性だけど、自分の中の性は女性」といった内容です。

またLGBT以外にも、アセクシャル(誰に対しても性的対象にならない)やパンセクシャル(様々な性が性的対象になる)などの性的指向も暴露すればアウティングとみなされます。

アウティングの歴史

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アウティングという言葉がいつ始まったのかはっきりしたことはわかっていませんが、一般的に広まったのは1990年のタイム誌で評論家ウィリアム・A・ヘンリー3世が「マイク・ホーズのようにクローゼットを出されるゲイ達」という記事によってと言われています。

歴史をみると多くの政治家や俳優がライバルやホモフォビア(同性愛を否定的する価値観を持つ人)によって、アウティングされてきました。中にはLGBT活動家により、人権運動の一環として強制的にアウティングされることもあったようです。

カミングアウトとの違い

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個人情報を開示するという意味の言葉で「カミングアウト」というものがあります。このカミングアウトは、個人情報に関わる言葉というところはアウティングと共通していますが、全く違うものです。

アウティングは「第三者」が勝手に「他人の」性的指向を公開するという意味です。一方カミングアウトは「本人」が自分の意思で「自分の」性的指向を公開することです。

カミングアウトは公開する時期、公開する相手を任意で決めることができますが、アウティングはいつ、どこまで公開するかが本人の意思と無関係のところで勝手に決められてしまいます。

一橋大学アウティング事件の概要

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2015年、アウティングの危険性を世の中に知らしめる大きな事件がありました。「一橋大学アウティング事件」です。

一橋大学は東京都国立市にある日本で最も古い社会科学系の国立大学で、卒業生にはファミリーマート初代社長の沖正一郎さんや、アナウンサーの村尾信尚さんがいます。

そんな一流の国立大学で、アウティングにまつわる事件が起きました。その中で尊い一つの命が失われたのです。この事件は、性的指向マイノリティの人々を始め、多くの人に大きな衝撃を与えました。

一橋大学のロースクールの男子学生が自殺

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2015年の8月、一橋大学法科大学院の男子学生(以下A)が、授業の模擬裁判の途中にパニックを起こし構内の保健センターで投薬などの処置を受けたのち、同じく大学構内のマーキュリータワー6階ベランダから転落、死亡しました。

Aは転落前、クラスのLINEグループに「今までよくしてくれてありがとう」「○○君(以下B)が弁護士になるような法曹界なら、もう自分の理想はこの世界にない」と投稿しています。この状況から、Aは投身自殺をしたとされました。

同級生によるアウティングを苦に自殺したとされる

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実はAは同性愛者、ホモセクシャリティでした。前項のグループLINEにでてきたBとは、Aのクラスメイトの男子学生です。Aはこの男子学生に恋愛感情をもっていたようです。

2015年4月にAはBに恋愛感情を告白しています。Bは「友人でいたい」「しかい同性愛者であることは恥じることではない」と伝えて、この話は終わるはずでした。しかしこの後、Bは複数のクラスメイトに、Aの性的指向をアウティングするのです。

アウティングされたAは、授業でBに会うたびにパニック症状を引き起こし、心身ともに不安定な状態になりました。心療内科では不安神経症と診断されました。

これらのことからAの投身自殺は、アウティングを苦にした自殺だと考えられています。

事件の経緯

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Aはゲイであることを公表せず生活していました。Bに恋愛感情を告白した後も、自分で周囲にカミングアウトする意思はなかったものと推測されます。

AはBに「友人でいたい」と言われたためか、特別避けることなく友人関係を続けようとしていました。他の友人も含めたハイキングに誘ったり、食事に誘ったりしていたようです。

Bによるアウティングは告白直後に電話で女性の友人1人、告白翌日に口頭でAと共通の男子学生1人、1ヶ月後に同級生のグループLINEで9人に行われました。
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アウティング後、Aは大学の担当教授やハラスメント相談室、保健センターにBにアウティングされたこと、そのことにより精神的に苦痛を感じていることを3回にわたり相談しています。

しかし大学側はアウティングというハラスメント行為に対してクラス替えなどの特別な対処をすることはありませんでした。結果としてAは精神的に追い詰められ、自死に至ったのです。

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