2019年7月25日 更新

触れたもの全てを凍らせるブライニクルの恐怖!氷の原理や特徴

海のなかにつららができる現象、“ブライニクル”。触れたものすべてを凍らせてしまうことから、“死のつらら”とも呼ばれています。どのようにして海中につららが生まれ、すべての生物を凍らせてしまうのでしょうか?その原理や特徴をご紹介いたします。

死のつららと呼ばれるブライニクル

Icicle Ice Drip - Free photo on Pixabay (508617)

死のつららと称されるブライニクルの意味や歴史について紹介していきます。おそらく多くの方がブライニクルという言葉を耳にしたことがないでしょう。自然現象の1つなのですが、とても神秘的で、ある種の恐ろしさもあります。ここでは、そのブライニクルについてと、その他の自然現象もご紹介していきます。

ブライニクルとは?

Icicle Roof Water - Free photo on Pixabay (508619)

ブライニクルとは、英語でbrinicleと記述します。語源は、brine(塩水)とicicle(氷柱)からきています。ice stalactite(氷の鍾乳石)とも言われることがあります。海氷の下で形成される、死のつららと呼ばれるものです。つららですので、下向きに成長します。

主に南極の海中において、つららのような形の凍結が起こる自然現象です。恐ろしいのは、それに触れた生物を死に至らしめるところです。「死のつらら」と呼ばれる由来です。海水中に極めて低温の塩水が流入した際に起こります。

1960年代に初観測されており、1974年までは、「氷の鍾乳石」と呼ばれていました。しかし、触れると皆凍りつき死んでしまうことから、「死のつらら」とも呼ばれるようになったのです。

ブライニクルの歴史

Iceberg Moon Arctic The - Free image on Pixabay (508631)

1974年に、イギリスの海洋学者Seelye Martinにより提唱されました。ただし、きちんとして映像として撮影されておらず、2011年に、やっとBBCのシリーズ番組であるフローズンプラネットとして、プロデューサーのKathryn Jeffs、カメラマンのHugh Miller、写真家のDoug Andersonによって撮影されたのです。

この動画は、YouTubeなどで「ブライニクル」と検索すれば、数分の動画が出てきますので、ぜひ実物をご覧ください。ヒトデなど、逃げ遅れた生物が氷漬けになっていく映像が拝見できます。

ブライニクルが形成される原理

Antarctica Mountains Sunrise - Free photo on Pixabay (508633)

ここでは、ブライニクルが形成される原理を分かりやすく説明いたします。少々難しいところがあります。また、研究中の部分もあるため、大まかな流れを捉えていただければ問題ありませんので、ゆっくり見ていきましょう。

ブライニクルが形成される原理と特徴

Arctic Sea Ocean - Free photo on Pixabay (508627)

風が止んで、気温が下がってくると、海の表面の水分だけが次第に凍っていきます。その時、含まれている塩分だけは凍らずに残るのがポイントです。その濃い塩分を含んだ海水が氷の表面に凍らずに残るのです。そして、急激な気温低下によって、氷に割れ目ができます。例えばマイナス20度でも割れます。

すると、その割れた氷のすき間から塩分の濃い水分が海中に流れ込むのです。これがブライニクルと呼ばれる現象の実態です。塩分の濃い海水は、氷の下の海水よりも、濃い分だけ重いので、海底へ沈んでいくように流れ落ちます。
Winter Icicle Snow - Free photo on Pixabay (509951)

ちなみに海水の凍結(凝固点)はマイナス1.8度です。学校で習った水は0度で凍るという知識は、海水には当てはまりません。これは意外でしょう。そして、先ほどのマイナス20度の塩分の濃い水分が沈んでいくと、周囲の海水はマイナス1.8度で凍る為、どんどん凍らせながら沈んでいきます。

海底に届いても周囲に通常の塩分の海水がある限り、どんどん凍らせていきます。動きの遅い巻き込まれた生物も瞬時に凍らせてしまうので、「死のつらら」とも呼ばれる所以となっているのです。

海水中で形成される氷の特徴

Ice Glassy Transparent - Free photo on Pixabay (508626)

ここでは、ブライニクルが形成される先述のメカニズムの整頓と、プラスアルファの知識を加えながら、さらに詳しく説明するとともに、海水中で形成される氷の特徴について解説していきます。原理原則は、より一層冷たくて重いものが流れ込むため、周囲を凍らせてつらら状に沈んでいくことに変わりありません。

不純物が除かれる

Iceland Aerial View Mountains - Free photo on Pixabay (508624)

海水が凍結する際、ほとんどの不純物は氷から除かれるのです。つまり、海水からできた氷は、その海水自体と比べて、より純粋であるといえます。主に、塩やその他のイオンなどが取り除かれます。これは、川の淡水の凍結とは大きく異なる点であるとも言えます。

つまり、川では起こりえないということです。事実、海水のような塩分がない川では、この事象は見受けられません。一定の環境が整わないと発生しないということなのです。

融点が低下する

Icy Ice Antarctica - Free photo on Pixabay (508628)

海水が凍結して、塩分が氷から排出されるにつれ、その排出された塩分がたまっていき、より塩分濃度が高くなります。これにより融点は低下し、密度は上昇します。この融点の低下により、この塩分の濃い水は、すぐに凍ることなく液体をとどめ、マイナス10度、20度と凍らずに冷たくなる事ができます。

また、塩分が濃くなり、密度の上昇により、この水の層は重くなるので沈んでいきます。この過程でbrine channelsと呼ばれる小さなトンネルが海氷に形成されて、ブライニクルは形成されるのです。外気が冷たくなければ、起こりえない事だと言えます。

海底まで到達しても氷り続ける

Iceberg Antarctica Polar - Free photo on Pixabay (508623)

ブライニクルは、海に浮かんでいる海氷層の割れ目から下部に沈みながら伸びるため、つららに似ています。つららの筒の内部は、上部の海氷の成長に伴って発生した、極めて低温かつ塩分濃度の高い水が「brine channels」を通して満たされています。

発生したばかりのブライニクルは非常にもろいです。内壁は薄いのです。しかしながら、周囲に氷が形成されブライニクルが太くなってくると、ブライニクルは安定してきます。このように、適切な状況下において、ブライニクルは海底まで到達することが可能なのです。

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