2019年7月24日 更新

無罪確定までに34年を要した松橋事件とは?事件の概要と問題点

無罪が言い渡されるまでに34年間も要した冤罪事件である松橋事件をご存知でしょうか。捜査に問題点が多かったので担当刑事や国選弁護士までが批判を受けることになりました。警察が犯人を決めつけていたため未だに真犯人は捕まっていません。

目次

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宮田浩喜さんは再審申し立て時には認知症を患っていて裁判を受けたことも覚えていない状況でした。再審決定からすぐに裁判が開かれていれば裁判の内容を理解できたはずだったと、次男が述べています。

検察が再審開始を遅らせたのは宮田さんが亡くなるのを待っていたのではないかとして後に批判を浴びました。再審開始時には脳梗塞の後遺症で寝たきりの状態となっており、高齢者住宅に住んでいました。

認知症の症状も進み感情が表情に表れないようになっていたのです。

父や長男とは疎遠になっていた次男が裁判を傍聴

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父親は認知症、父を支えてきた兄は病死したため再審初公判は父とも長男とも疎遠になっていた次男が傍聴しました。傍聴する際は兄がよく着ていたジャケットを着用しました。

再審の閉廷後には「あと2年早ければ、この場にいたのはずっと父を支えた兄だった。さらに2年早ければ、おやじも裁判を理解できたはずだ。検察には一言でも謝ってほしかった」と語っています。

また弁護団には「これで宮田家の矜持を保てた。感謝の言葉しかない」と話し、さらに「冤罪をつくり、判決を引き延ばした警察や検察の責任は今の法律では追及できない」と批判をしました。

無罪が確定

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2019年3月28日に判決公判が開かれて無罪が確定しました。銃砲刀剣類所持等取締法違反及び火薬類取締法違反については懲役1年となりましたが収監はされていません。

検察側が証拠とした自白などは信用性がなく、犯人である証拠はないと結論付けられたのです。脳梗塞の後遺症で寝たきりとなり、認知症が進んでいて表情が表れることもない宮田さんでしたが無罪の連絡を受けた際には頬を緩めて目に涙を浮かべたと言います。

警察側は「無罪判決が言い渡されたことは真摯に受け止め、今後の捜査に生かしていきたい」と述べるにとどまりました。警察は宮田さんのみを疑っていたため真犯人は未だに捕まっていない未解決事件となりました。

即時抗告審を担当した検察官國井弘樹とは

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即時抗告審を担当したのは國井弘樹という他の冤罪事件にも関わっていていた人物です。関わったのは障害者郵便制度悪用事件で、無実の罪で逮捕された村木厚子さんの取り調べを担当していました。

取り調べを受けた村木さんは國井について「非常に思い込みが強いタイプ」だとしています。2件の冤罪事件に関与しましたが現在も仕事を辞めていません。

國井弘樹が関わった冤罪事件の概要や現在の仕事について見ていきましょう。

障害者郵便制度悪用事件に関わった人物

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國井弘樹は障害者郵便制度悪用事件に関わった人物です。障害者郵便制度悪用事件とは障害者団体向けの郵便料金の割引制度の不正利用があったとして2009年に大阪地方検察庁特別捜査部が摘発した事件です。

郵便制度では発行者が心身障害者団体の場合低料金で郵便物を発行できるため、障害者団体の定期刊行物と装いダイレクトメールを違法に郵送して差額の数十億円を不正に免れたとして関係者が逮捕されました。障害者団体の証明には厚生労働省の証明書が使用されていて、文書の発行権限があった当時厚生労働省局長の村木厚子さんが指示をしたと判断され逮捕に至ったのです。

その後検察が証拠を偽装していたことや國井弘樹らが村木さんの取り調べのメモを破棄していたことが明らかになり無罪が確定しました。関係者の多くが村木さんの関与を否定していたことが裁判の争点になりました。

現在はミャンマー日本国大使館一等書記官

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國井弘樹は偽証及び証拠隠滅の罪で告発されましたが不起訴となりました。さらに取り調べ時に机をたたくなどしたことを報告しなかったため戒告と懲戒処分を受けています。

検察官適格審査会にかけられましたが不適格とは認められないとして不罷免になっています。事件後は法務省法務総合研究所国際協力部教官に異動し独立行政法人国際協力機構長期派遣専門家としてミャンマーの連邦法務長官府チーフリーガルアドバイザーを務めました。

2016年に福岡検察庁検事となり2017年には再び法務省法務総合研究所国際協力部教官、2018年からは外務省在ミャンマー日本国大使館一等書記官として活動しています。

無罪までに34年かかった理由

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無罪が確定するまでには34年もの時間が費やされました。原因はたくさんありますが、当初の国選弁護人に問題があったことや検察が証拠を隠したことが挙げられます。

さらに検察は再審開始を先延ばしにするなど悪質な行動を取りました。松橋事件では裁判の中立公平性とそれへの国民の信頼が破壊されたとして強く批判を受ける事態となっています。

無罪が確定するまでに長い期間を要した理由について見ていきましょう。

当初の国選弁護人に問題があった

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裁判が始まる前に宮田さんは最初の国選弁護人に対して起訴事実を否定して争いたいと伝えましたが、国選弁護人は無罪を争うのは困難だとしました。

起訴事実を認めて情状酌量を求める弁護方針を立てていたからです。さらに「どうしても無罪を争いたいのであれば私選弁護人を依頼した方が良い」と言いました。

金銭的にも時間的にも宮田さんには余裕がなかったためやむを得ず国選弁護人の言うとおりに起訴事実を認めることになったのです。

検察が証拠を隠した

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犯行後に燃やしたと供述していた布片は起訴直後には警察に領置されていたことから、きちんと証拠が見つかったことを警察が伝えていれば懲役13年の判決は違った結果となったかもしれません。

再審請求審第一審では「検察官がシャツの布片を証拠として提出しなかったのは凶器に巻き付けられたものだと断定できず、シャツを証拠として提出する意味はないとしたから」だという意見を提出しています。

弁護団は「自白の内容が虚偽であることが明らかだという証拠を持ちながら、その証拠を隠したのは被告人に対する防御権の侵害だ」と非難しました。

警察が事情聴取を74時間続けて精神的に参らせた

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事情聴取は合計74時間にも及びました。自白をした1月20日は観たいテレビがあるとして出頭を断った宮田さんの自宅に行き取り調べをしていました。

公判で宮田さんは「もう精神的にも参っておりましたので、もうこれは早く自白して楽になったほうが自分でもいいんじゃないかというような、やけくそのような気持が起こりましたので、もう17日頃からもう早く逮捕しなさいよというようなことを警察に迫っておりました」と述べています。

警察が任意の取り調べを長々と行い自白を強要するのは冤罪事件によく見られる手法です。

検察が再審開始を先延ばしにした

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