目次
- いとをかしとは?
- 「いとをかし」の意味とは?
- いつの時代の言葉か?
- 「いとをかし」の表現が使われている作品
- こんな使い方もされた!?「をかし」の意味とは
- 興味深い 心惹かれる
- 趣がある 風情がある
- 美しい 優美だ
- 愛らしい
- すぐれている 見事だ 素晴らしい
- 滑稽だ 変だ 可笑しい
- 枕草子ではどのように使われた?「をかし」の例文
- 他にはどんな言葉があった?平安時代の言葉
- もののあはれ
- わろし
- めでたし
- つきづきし
- うつくし
- にくし
- したり顔なり
- をかしが多用される枕草子はどんな作品?
- 平安時代に書かれた随筆
- 日本で最も有名な古典文学のひとつ
- いとをかしが有名な表現
- 作者は中宮定子に使えた清少納言
- 同じ時代の作品に、紫式部「源氏物語」がある
- 枕草子とよく比較される源氏物語とは?
- 枕草子と同じ時代に書かれた長編小説
- 宮中の政治や恋愛模様がわかり、歴史的価値が高い
- 「もののあはれ」の世界観を表現されているとした
- 作者は中宮彰子に仕えた紫式部
- 枕草子と源氏物語はなぜ比較される?
- 同じ平安時代に書かれているから
- どちらも日本を代表する古典だから
- 作者の置かれていた立場が似ていたから
- 現代でも使う?「いとをかし」という言葉
- 「いとをかし」という言葉自体は現在にはない
- 使うことはなくても教養として知っている人は多い
- 「エモい」という言葉 同じ概念という意見も
- 教養を磨こう!平安時代に思いをはせて
・・・・鶏のひなの、足だかに白うをかしげに、衣短なるさまして、ひよひよよかしがましう鳴きて 人の後先(しりさき)に立ちてありくもをかし・・
(鶏の雛が、細長い足をひゅっとだし、白く愛らしい姿で、ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後ろや先に立って歩きまわるのは面白くてかわいい)
「枕草子」
(鶏の雛が、細長い足をひゅっとだし、白く愛らしい姿で、ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後ろや先に立って歩きまわるのは面白くてかわいい)
「枕草子」
すぐれている 見事だ 素晴らしい
via pixabay.com
・・・・笛をいとをかしく吹き澄まして,過ぐるなり「更級日記」
(笛を見事に吹いて、通り過ぎてしまった)
(笛を見事に吹いて、通り過ぎてしまった)
滑稽だ 変だ 可笑しい
via pixabay.com
・・・・妻、をかしと思ひて笑ひてやみにけり「今昔物語」
(妻は滑稽と思って、思わず笑ってしまった)
(妻は滑稽と思って、思わず笑ってしまった)
枕草子ではどのように使われた?「をかし」の例文
紫式部も、清少納言も、和泉式部、菅原孝標女(たかすえのむすめ)といった、平安女流文学のスターたちは受領階級の家の娘たちです。今でいうと、中流インテリ階級の娘という感じでしょうか。経済的にも裕福で自由な気風があり、かなりのびのびと育てられた女性たちです。
清少納言の枕草子を読むと、大胆で正直な発言が多いことに気が付きますが、育った背景の自由な環境を考えると、納得できるところがあります。
たとえば以下の例文を読むと、清少納言が、どういった女性だったかがうかがえます。
百八十二段 好き好きしくて人かず見る人の・・(色好みでプレーボーイの)
…暁に帰りて、やがて起きたる、ねぶたげなるけしきなれど、硯取り寄せて、墨こまやかに押し磨りて、事なしびに、筆にまかせてなどはあらず、心とどめて書くまろひげ姿もをかしう見ゆ。
(女と会って、明け方に帰ってきたプレーボーイがそのまま起きている。眠そうな様子だけど、「後朝の文」(きぬぎぬのふみ)を、昨夜会っていた女に出すために、硯を引き寄せ、墨をていねいにすって、通り一遍に筆に任せるのではなく、心を込めて書いている。そのくつろいだ姿ってなんて優雅で素敵なの。)
ここでは「こういう男って好みよ!」という感じで「をかし」が使われてますね?
清少納言の枕草子を読むと、大胆で正直な発言が多いことに気が付きますが、育った背景の自由な環境を考えると、納得できるところがあります。
たとえば以下の例文を読むと、清少納言が、どういった女性だったかがうかがえます。
百八十二段 好き好きしくて人かず見る人の・・(色好みでプレーボーイの)
…暁に帰りて、やがて起きたる、ねぶたげなるけしきなれど、硯取り寄せて、墨こまやかに押し磨りて、事なしびに、筆にまかせてなどはあらず、心とどめて書くまろひげ姿もをかしう見ゆ。
(女と会って、明け方に帰ってきたプレーボーイがそのまま起きている。眠そうな様子だけど、「後朝の文」(きぬぎぬのふみ)を、昨夜会っていた女に出すために、硯を引き寄せ、墨をていねいにすって、通り一遍に筆に任せるのではなく、心を込めて書いている。そのくつろいだ姿ってなんて優雅で素敵なの。)
ここでは「こういう男って好みよ!」という感じで「をかし」が使われてますね?
さらに続きを見てみましょう。
・・・・手洗ひて、直衣(のうし)ばかりうち着て、六の巻(まき)そらによむ、まことにたふたきときに、近きところなるべし、ありつる使ひうちけしきばめば、ふとよみさして、返事’(かえりごと)に心移すこそ、罪得らむと、をかしけれ。
(手を洗い、直衣をはおって、法華経をそらんじている。何とも尊い感じなのに、使いのものが、先ほどの手紙の、女からの返事を持ってくると、お経もやめて、夢中になって手紙を読み始める。罰があたるんじゃないかしら、おかしくって)
ここでは、この色男め!って感じで「をかし」が使われてますね。
・・・・手洗ひて、直衣(のうし)ばかりうち着て、六の巻(まき)そらによむ、まことにたふたきときに、近きところなるべし、ありつる使ひうちけしきばめば、ふとよみさして、返事’(かえりごと)に心移すこそ、罪得らむと、をかしけれ。
(手を洗い、直衣をはおって、法華経をそらんじている。何とも尊い感じなのに、使いのものが、先ほどの手紙の、女からの返事を持ってくると、お経もやめて、夢中になって手紙を読み始める。罰があたるんじゃないかしら、おかしくって)
ここでは、この色男め!って感じで「をかし」が使われてますね。
via pixabay.com
・・・・夏は夜。月の夜はさらなり。闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。また、ただ、ひとつふたつなど、ほのかにうち光りてゆくもをかし。雨など降るもをかし。
(夏はやっぱり夜。月が出ていれば最高だけど、月のない闇夜でも蛍なんかがとびかっているのがいい。ほのかに光る蛍が一つ二つ飛んでいるのも風情があるわ)
有名な第一段 春はあけぼのです。ここでの「をかし」は風情あるという意味で使ってますね。
(夏はやっぱり夜。月が出ていれば最高だけど、月のない闇夜でも蛍なんかがとびかっているのがいい。ほのかに光る蛍が一つ二つ飛んでいるのも風情があるわ)
有名な第一段 春はあけぼのです。ここでの「をかし」は風情あるという意味で使ってますね。
via pixabay.com
第百四十五段 うつくしきもの
・・・・をかしげなるちごの、あからさまに抱きて、遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。
(愛らしい赤ん坊をあやして遊んでいるうちに、縋り付いて寝てしまうのって、ほんとうにいじらしい)
ここでは、愛らしいの意味で(をかし)が使われています。
・・・・をかしげなるちごの、あからさまに抱きて、遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。
(愛らしい赤ん坊をあやして遊んでいるうちに、縋り付いて寝てしまうのって、ほんとうにいじらしい)
ここでは、愛らしいの意味で(をかし)が使われています。
他にはどんな言葉があった?平安時代の言葉
それでは、平安時代には、ほかにどんな言葉がよく使われていたのかを見てみましょう。
もののあはれ
via pixabay.com
平安時代の言葉というとなんといってもあとは「もののあはれ」ですね。
「あはれ」というと、なんといってもこの人でしょう。
心なき身にもあはれは知られけり鴫たつ澤の秋の夕暮 西行法師
「あはれ」は一言でいえば無常観です。仏教とも関係しますが、日本人には、とてもなじみのある感性ですね。
また、
・・・・あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊やりのふすぶるもあはれなり。「源氏物語」
(みすぼらしい家に、夕顔の咲くのがちらっと白くみえて、蚊やりの煙がたっているのも寂しくていい感じだ)
有名な「夕顔」です。この時代は、美意識が洗練されていたので「いかにも」という構え方が嫌われました。廃屋に近い豪邸に美しさを感じたり、みすぼらしい家に高貴な人がひっそりすんでいるのが奥ゆかしさだったのです。
「あはれ」というと、なんといってもこの人でしょう。
心なき身にもあはれは知られけり鴫たつ澤の秋の夕暮 西行法師
「あはれ」は一言でいえば無常観です。仏教とも関係しますが、日本人には、とてもなじみのある感性ですね。
また、
・・・・あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊やりのふすぶるもあはれなり。「源氏物語」
(みすぼらしい家に、夕顔の咲くのがちらっと白くみえて、蚊やりの煙がたっているのも寂しくていい感じだ)
有名な「夕顔」です。この時代は、美意識が洗練されていたので「いかにも」という構え方が嫌われました。廃屋に近い豪邸に美しさを感じたり、みすぼらしい家に高貴な人がひっそりすんでいるのが奥ゆかしさだったのです。
わろし
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・・・・ふと心おとりとかするものは、男も女もことばの文字いやしう使ひたるこそ、よろづのことにまさりてわろけれ。
(ふっと軽蔑したくなるのは、男でも女でも品のない言葉を使うのが何よりもみっともない) 「枕草子」
「わろし」は今使われている「悪い」と変わらないですが、この場合はみっともないです。
・・・・年頃はわろく描きけるものかな。「宇治拾遺物語」
(長い間下手な絵を描いてきた)
この場合は下手という意味です。
・・・・年頃、わたらいなどもひどくわろくなりて・。・「大和物語」
(長年の間に暮らし向きもひどく貧しくなって・・)
これは貧しいという意味でつかわれている「わろし」ですね。
・・・・いやしきこともわろきことも、さと知りながらことさらに言いひたるは、あしうもあらず。・・「枕草子」
(品のない言葉も悪い言葉も、知りながら使うのは、それほど悪くはない・・)
この場合は「悪い」です。
ちなみに、「あし」は奈良時代から使われてましたが「わろし」は平安時代から見られるそうです。
(ふっと軽蔑したくなるのは、男でも女でも品のない言葉を使うのが何よりもみっともない) 「枕草子」
「わろし」は今使われている「悪い」と変わらないですが、この場合はみっともないです。
・・・・年頃はわろく描きけるものかな。「宇治拾遺物語」
(長い間下手な絵を描いてきた)
この場合は下手という意味です。
・・・・年頃、わたらいなどもひどくわろくなりて・。・「大和物語」
(長年の間に暮らし向きもひどく貧しくなって・・)
これは貧しいという意味でつかわれている「わろし」ですね。
・・・・いやしきこともわろきことも、さと知りながらことさらに言いひたるは、あしうもあらず。・・「枕草子」
(品のない言葉も悪い言葉も、知りながら使うのは、それほど悪くはない・・)
この場合は「悪い」です。
ちなみに、「あし」は奈良時代から使われてましたが「わろし」は平安時代から見られるそうです。
めでたし
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・・・・藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし。「枕草子」
(藤の花は、花房のしだれがながく、藤色の濃いのが素晴らしい)
「素晴らしい」という意味の「めでたし」です。
・・・・果報こそめでたうて、大臣の大将にいたらめ。「平家物語」
(前世の果報が喜ばしいので、近衛の大将になるのであろう)
「めでたし」はおめでたいの意味に近い、喜ばしい、ですね。
(藤の花は、花房のしだれがながく、藤色の濃いのが素晴らしい)
「素晴らしい」という意味の「めでたし」です。
・・・・果報こそめでたうて、大臣の大将にいたらめ。「平家物語」
(前世の果報が喜ばしいので、近衛の大将になるのであろう)
「めでたし」はおめでたいの意味に近い、喜ばしい、ですね。
つきづきし
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