2019年3月26日 更新

千と千尋の神隠しに登場する湯女の意味は?江戸時代に栄えた湯女を解説

大ヒットを記録したスタジオジブリ作品である「千と千尋の神隠し」。宮崎駿監督が『日本は全て風俗産業の様な社会』とも語っているこの作品には、それを象徴とするキャラクターとして“湯女”が登場します。この記事では、そんな“湯女”について意味や歴史と共にご紹介します。

丹前風呂とは

Paper Lantern Festival Nakano - Free photo on Pixabay (122722)

「丹前風呂」とは江戸前期に“湯女”を抱える湯屋で最も勢力のあった町風呂(銭湯)群の総称です。江戸の神田にあり、堀丹後守の屋敷前にあったことが「丹前」の由来になっております。

この「丹前風呂」には容姿の優れた“湯女”を多く抱えていた為とても繁盛しておりました。又、文化や流行の発信地にもなっており、『丹前風』『丹前姿』『丹前六方風』などと言ったファッションからヘアスタイルに至るまで、沢山の流行が生まれていきました。

又、この時期の女性のヘアスタイルで有名な『勝山髷』の流行を生んだ“勝山”という女性は「丹前風呂」に居た“湯女”でもあります。

吉原の有名遊女「勝山」は湯女出身

Water Fish Japan - Free photo on Pixabay (122719)

歴史に詳しい方は“勝山”と聞くと、江戸前期において吉原遊郭で人気を誇った遊女が出てくるでしょう。そんな“勝山”は元々「丹前風呂」で“湯女”をする女性でした。

「丹前風呂」の中で最も知られているのが「紀伊国屋風呂」であり、ここを経営する紀伊国屋風呂市兵衛のお抱え“湯女”だったのがこの“勝山”でした。美貌だけでなく才能もあり、彼女はたちまち江戸中の評判となっていきます。

彼女が考案した『勝山髷』は武家風の結い方は、上品な印象を与えたことから次第に武家の若奥方にも結われるようになっていきました。

勝山が吉原の遊女となった経緯

Japan Japanese-Style Room Houses - Free photo on Pixabay (122724)

“勝山”の“湯女”以前の経歴は未だに不明となっていますが、生まれは武州八王子だそうです。正保3年に「丹前風呂」の“湯女”として働き始めます。前述にもあったように、彼女はその美貌と才能を生かし江戸中の評判を集めます。

後に幕府による“私娼”を抱える店の取り締まりが厳しくなり、その煽りを受けて彼女が勤めていた「紀伊国屋風呂」も閉鎖され、又“勝山”も逮捕されてしまいます。そして承応2年に新吉原の山本芳順に招かれ吉原の遊女となります。

“湯女”の時から既に絶大な人気を誇っていた為、吉原に入ってからの彼女はやがて遊女の最高位「太夫」まで上り詰めていきました。

千と千尋の神隠しに湯女が登場している?

Popcorn Movies Cinema - Free photo on Pixabay (123126)

記事タイトルにもあるスタジオジブリ作品の大ヒット映画「千と千尋の神隠し」。2001年に公開され、興行収入は日本歴代1位である300億円超えを達成しました。

10年以上経った今でも根強い人気があり、モデルになった建物や地域を訪れるファンも多くいます。そんな「千と千尋の神隠し」の舞台に“風俗産業”が取り上げられているというのが都市伝説として語られています。

実はこの事について宮崎駿監督自身も語っており、作品には現代社会に対する風刺も込めた強いメッセージが込められています。そんな「千と千尋の神隠し」という作品を改めて見直すと同時に今回のテーマでもある“湯女”との関係を解説していきます。

千と千尋の神隠しとは?

Projector Movie Cinema - Free image on Pixabay (123104)

「千と千尋の神隠し」は宮崎駿監督によるスタジオジブリが制作した長編アニメーション作品で、2001年に公開された映画です。興行収入は日本歴代1位となる300億円超えを記録し、現在でもこの記録は塗替えられておりません。

10歳の少女、千尋は引っ越しの途中に立ち寄ったトンネルから神々の居る不思議な世界に迷い込んでしまう所で物語は始まります。その世界は人間が来てはいけない場所で、それを知らない千尋の両親はそこの世界にある食べ物を口にする事で掟を破ってしまい豚の姿に変えられてしまいます。

千尋は魔女の湯婆婆が経営する「油屋」で湯婆婆と契約を交わし『千』という名で働くこととなります。両親と共に元の世界に帰ろうと沢山の出会いと経験を積みながら奮闘し「生きる力」を身に付けていきます。

千尋が働いた油屋は江戸時代の湯屋の設定?

England Lanterns China - Free photo on Pixabay (123103)

湯婆婆が経営する「油屋」は八百万の神々が身体を休める為に訪れる温泉施設です。ここで千尋は『千』という名の“湯女”として働くことになります。劇中、街並みや「油屋」で特に目を引くのが赤い提灯や赤を基調とした豪華絢爛なインテリアデザインです。

街並みに関しては宮崎監督が学生時代に見た赤線地帯の光景をモチーフにしており、「油屋」の内装は江戸時代の遊郭を想起させます。更に赤提灯は売春宿の印でもあります。

又、「油屋」には大浴場が無く全て個室に区切られており、この様な作りにした理由について監督自身も『いかがわしい事をする為であろう』と回答していることから、「油屋」は江戸時代の「湯屋」の設定であることが分かります。

湯屋である証拠①湯屋は遊郭と違って客を選べない

Doors Choices Choose - Free photo on Pixabay (123106)

「湯屋」は遊郭と違って客を選ぶことが出来ません。これは劇中で湯婆婆が『腐れ神』を「油屋」に迎え入れた描写にあたります。“湯女”のいる湯屋では客を選ばない事が売りであり、どんな汚い客であっても受け入れます。

この『腐れ神』のシーンでは、最終的に川に捨てられゴミが出てくるという描写で現代社会の環境問題を表現していると同時に溜まっていたものを「湯屋」でスッキリして帰るという性的な隠喩も含まれています。

湯屋である証拠②働いている湯女の姿が色っぽい

Body Dark Feet - Free photo on Pixabay (123109)

作品を観ていただくと分かるように「油屋」で働く女性達は皆色っぽく描かれています。というのも前述してきたように江戸時代の“湯女”達が色も売っていたという点がその理由にあるでしょう。

又、「油屋」で色っぽく描かれている“湯女”は一部を除き、全員がナメクジをモチーフにされているそうです。ナメクジのヌメヌメとしている所を色を売る“湯女”たちのなまめかしさと重ね合わせいるのだとしたら面白いですよね。

湯屋である証拠③宮崎駿の風俗産業に関するコメント

Business Meeting Silhouette - Free vector graphic on Pixabay (123110)

「今の世界として描くには何がいちばんふさわしいかと言えば、それは風俗産業だと思うんですよ。日本はすべて風俗産業みたいな社会になってるじゃないですか」


「今の女性たちは売春婦が似合いそうな人がものすごく増えている」
「千と千尋の神隠し」について、日本版『プレミア』で宮崎監督自身がインタビューで言ったコメントです。この様に述べている事から、「千と千尋の神隠し」は“湯女”の居る湯屋、つまりは風俗産業というテーマが密接であると考えられます。

湯屋である証拠④劇中に「回春」という文字

Singapore China Town Colorful - Free photo on Pixabay (123102)

「油屋」が江戸時代の「湯屋」をモチーフにしたことを裏付けるものとして最も分かりやすい証拠が劇中で映る「油屋」の入り口の屏風に書かれている『回春』という文字です。

『回春』とは元々「春が巡ってくる」ことを意味していますが、それに転じて「病気回復」や「若返り」を指す言葉として用いられていました。しかし、現代の日本では「衰えた精力を取り戻す」という意味に転じ性的な意味でこの言葉が使われています。

2 / 3

関連する記事 こんな記事も人気です♪