2019年2月12日 更新

ファラリスの雄牛の残酷な伝説!実物はまだ存在するのか?

ファラリスの雄牛は楽器としての役割を持った、非常に珍しい古代の拷問具です。実物の雄牛のような形の内部はどのような仕組みで作られているのか、どうやって拷問するのかなどを説明しながら、ファラリスの雄牛にまつわる数々の伝説も合わせて詳しくご紹介します。

ファラリスの雄牛とは

Man Caught Mourning · Free image on Pixabay (57734)

長い歴史の中で、人間は様々な拷問の方法や道具を開発してきました。その中には人道に外れたものも多数存在し、「ファラリスの雄牛」もそれら拷問具のひとつです。

ファラリスの雄牛がどのようなものか、使い方や楽器の機能を持つ仕掛けなど、具体的に説明します。

ファラリスの雄牛とは

Animal Branded Bull · Free vector graphic on Pixabay (57739)

「ファラリスの雄牛」とは、発明された様々な拷問具の中で、残虐非道という点では最悪のもののひとつです。その形はまるで実物のようなリアルな真鍮製の雄牛で、一見するとただの置物のようです。

「拷問具」と聞くと、何本もトゲが生えていたり、明らかに縛る目的だろう固い革ひもが付いていたり、見るからに恐ろしげな形を想像しやすいですが、ファラリスの雄牛は、見た目は実物に近い牛なので、あまり恐ろしさは感じません。

しかし中を開けてみると、罪人とされた者を極限まで苦しめて、最終的には命を奪う仕組みが施されているのです。罪を自白させるための「拷問」なのに、あまりの苦しさのため何もできず、決して助かることはない「ファラリスの雄牛」は、拷問具というより処刑具のほうが近いかもしれません。

作られた経緯

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遡ること約2600年前、紀元前6世紀頃の古代ギリシアの時代、シチリア島アグリジェントにファラリスという僭主(支配者)がいました。ファラリスは新しい刑罰の方法を取り入れるため、職人のペリロスに依頼しました。ペリロスは実物の雄牛のような形の拷問具を作り、楽器のように音を響かせる仕掛けも施しました。

そもそも僭主というのは血筋で決まるものではなく、非合法に支配者の地位を手に入れた者のことです。穏やかな気質の僭主もいたでしょうが、政権を獲得した方法は武力によるところが大きいこともあり、暴君ともいえるほど独裁的な支配者もいたようです。

ファラリスも温和な僭主ではなかったようで、ペリロスに依頼した拷問具は人を残酷に苦しめて、その一部始終を最悪な形で演出し、最後に殺してしまうようなものとなりました。

ファラリスの雄牛の構造や音

Bars Pipes Grid · Free image on Pixabay (57744)

ファラリスの雄牛は真鍮でできていて、その体に付いている扉を開けると、中は人間が入れるほどの空洞になっています。さらに頭部には複雑に配置された筒と栓が、口にあたる部分には外につながる唯一の換気口がありました。

雄牛の頭部にある筒と栓は、内部で発生した声などの音を変える、楽器に近い音響効果を生み出します。この中に入れられた人間が、苦しさに耐えかねて悲鳴を上げると、その声が楽器の仕掛けを通じて別の音に変化します。

中にいる人間が苦悶の叫びを上げるたびに、外にいる人間は、まさに実物の雄牛がうなり声を上げているような、そのように変化した音を聞くことができる。僭主ファラリスに献上した拷問具は、まるでひとつの楽器のような、巧妙な仕掛けが施されていました。

処刑方法

Chains Feet Sand · Free photo on Pixabay (57747)

罪人とされた者は、ファラリスの雄牛の中に入れられ、その扉を固く閉められます。内部は人ひとりが入る大きさですからとても窮屈で、しかも真っ暗です。これだけでも恐ろしいですが、拷問はここから始まります。

まず、雄牛の腹の下を火で炙ります。雄牛は熱せられて、内部は高温になり、中にいる人間は生半可ではない灼熱にさらされます。耐え切れずに叫んだ声は、楽器部分の仕掛けを通って「実物のような牛のうなり声」に変換され、外にいる人間に聞こえるようになります。

しかも、雄牛の口についている換気口から空気が中に入るため、中にいる人間は窒息することができません。意識を失うこともできず、地獄のような熱さに苛まれながら焼け死んでしまうのです。

ファラリスの雄牛の残酷な伝説

Fire Flame Carbon · Free photo on Pixabay (57749)

恐ろしい拷問具・楽器として誕生したファラリスの雄牛は、実物はとてもそのようには見えませんが、身の毛もよだつような残酷な伝説を残しています。ここでは、その犠牲者となった者など、様々なエピソードを紹介します。

ファラリスの最初の犠牲者

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ファラリスの雄牛は、献上された僭主ファラリスによって、時期を待たずに使われることになります。その最初の犠牲者は、製作者であるペリロスです。

ペリロスは普通の職人であり、本来であれば拷問されることはないはずです。しかし思いの外、素晴らしい出来となった拷問具をすぐに試したくなったのでしょうか、ファラリスは「実際に中に入って、楽器部分の仕掛けがちゃんと動いて、本当に実物の牛の声が聞こえるのか確認しろ」とペリロスに命じます。

命令されたペリロスは雄牛の中に入り、その楽器の仕掛けを操ります。実物に近い牛の声が聞こえて安心したその隙をついて、扉が閉められたあげく、火で炙られ始めます。ファラリスに騙され、半狂乱になるペリロスでしたが、自らが作った雄牛の最初の犠牲者として、焼け死んでしまいました。

ファラリスで処刑された人々

Cross Sunset Sunrise · Free photo on Pixabay (57767)

自らの製作者の命を奪ったファラリスの雄牛は、その後も長い間、当時の為政者により使われることになります。ローマ帝国の時代に迫害されたキリスト教の信者らも、この拷問具の犠牲になったと伝えられています。

犠牲者のひとり、キリスト教の聖エウスタキウスは、自分の信仰以外を受け入れるようにとの言葉を拒絶し、自らの信仰を貫く意思を曲げなかったため、彼の家族と共にファラリスの雄牛に入れられ、炙り殺されてしまいます。

迫害を受けてもキリスト教の信者でい続けた殉教者の中には、このように残酷な方法で拷問されて、理不尽にもその命を散らされてしまった、そんな悲しい歴史がありました。

ファラリスの雄牛の最後の犠牲者

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ファラリスの雄牛を献上させ、その製作者ペリロスを残忍にも処刑してしまった僭主ファラリスですが、この拷問具によって同じ運命を辿りました。一説によると、僭主の座を追われたファラリスが、最後の犠牲者となっているようです。

しかし、他の犠牲者であるキリスト教の信者が殺された時期は、ファラリスが生きた時代より数百年以上後のことです。ファラリスは数百年も生きていた、ということは考えにくく、とても長生きをしたとしても100年程度でしょう。

このことから、最後の犠牲者はキリスト教信者である可能性が高いですが、もしかしたら、伝承には残らなかっただけで、歴史の闇に埋もれてしまった犠牲者がいたかもしれません。

犠牲者の骨がブレスレットに

Diamond Brilliant Gem · Free image on Pixabay (57773)

ファラリスの雄牛の中で炙り殺された犠牲者は、その死後も非道な扱いは続きます。高温で焼かれた後で残った骨は、光り輝く宝石のようだったため、ブレスレットとして仕立てられたそうです。

現代でも実は、遺骨を宝石として蘇らせるサービスをスイスの会社が行っています。やり方はこちらのほうが遥かに科学的ですが、高温にすることは同じです。

しかし、このサービスは故人を偲ぶ気持ちから生まれたもので、ファラリスの雄牛からブレスレットを作った人間の気持ちとは全く正反対であり、異質とも言えるものです。そもそも、想像以上の苦しみを受けた犠牲者の骨をブレスレットにする、それはもはや普通の人間らしい感覚があるのか、疑問が残るところです。

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