2019年7月13日 更新

ひかりごけ事件の詳細と判決は?なぜ船長は食人を行ったのか?

この記事では、日本で唯一裁かれた食人事件「ひかりごけ事件」は、なぜ起こってしまったのか、ひかりごけ事件の内容や実際に世界で起きた残忍な食人事件など、カニバリズム(共食い)に関する事件について、いくつかご紹介していきます。

目次

遭難しながらも、なんとか漁民一家の老夫婦に助けを求めた船長は、過酷な知床岬から無事に生還し、故郷に帰って来ることが出来ました。

真冬の知床岬は、突風と猛吹雪が半島全体を吹きさらしている為に、現地の人からは死の領域と呼ばれており、現地の漁師達も5月中旬から8月中旬までしか漁に出られない程、危険な場所とされています。

ただでさえ死の領域とも呼ばれている危険な真冬の知床半島に、12月から2月と言う最も天候が厳しい中から生還するのは奇跡だと言い、多くの人が故郷に帰った船長を「奇跡の神兵」ともてはやしました。

周囲が食人を疑い始める

Police Fog - Free photo on Pixabay (401466)

町民の間で「奇跡の神兵」と船長をもてはやしている間、警察や軍部内では船長の言動、生還した状況に不自然な箇所が幾つもあり、疑問を抱いていたと言う。

そもそも船長は、海藻やアザラシで食いつないでいたと話してるが、1月は流氷の関係で海は凍結しやすくなっており、海藻類は漂流することはなく、アザラシも12月から1月は全く現れないのである。

また、現実にはありえない話や船長に不可解な行動が見られたので「乗組員達を食べて生き延びていたのではないか」という疑いを周囲が持つようになります。

2月18日・5月に遺体発見

Human Man Mourning - Free photo on Pixabay (401516)

疑いを持った警察は、2月に船長が上陸したペキンノ鼻の南に行き、現場検証を行ったのです。その際に、ペキンノ鼻の北に位置する場所で炊事夫の凍死体を発見したと言う。

そして、5月に船長がしばらく過ごしていたとされる小屋の持ち主が、小屋の近くにあったリンゴ箱の中に入っていた白骨を発見し、警察に通報しました。

警察が現場検証を行うと、新たに2人の遺体がペキンノ鼻の北で発見され回収されました。乗組員7人中、4人の遺体が発見されたことになり、残る2人についても船長が食人行為をしたのではないかと疑いを持ちましたが、これを船長は否定していたと言う。

6月に死体遺棄及び死体損壊の容疑で船長を逮捕

Handcuffs Trouble Police - Free photo on Pixabay (401579)

船長が上陸したペキンノ鼻で、乗組員の遺体を発見し回収した警察は、6月に殺人と死体遺棄及び死体損壊容疑で、船長を逮捕しました。

逮捕された船長は、警察の取り調べに対して「乗組員1人の遺体を食べていたことは認めるが、殺人はしていない」と供述し、殺人に関しては否定していたと言います。

船長が無事に生還し、町民は喜びに湧き上がっていましたが、数カ月後に船長が仲間の死肉を食べて、生き延びていたという事実が、船長が逮捕された事で明らかとなりました。これらがひかりごけ事件の経緯となります。

船長が食人を行った動機

Walkers Autumn Fog - Free photo on Pixabay (401668)

ペキンノ島の過酷な環境の中で、船長は身体的にも精神的にも極限の状態にまで追い詰められていた事により、食人行為に至ってしまいました。

たった一人生き残った船長が、食人という行為に至ってしまった動機は一体何だったのでしょうか。
あまり多くを語らなかった船長が、一体なぜ食人行為をしてしまったのか。

ここでは、船長が仲間であった乗組員の遺体を食べるという、人として最もタブーとされている食人行為を行ってしまった動機を幾つかお話していきます。

「どうしても我慢できなくなった」

Gorilla Feeding Hungry - Free photo on Pixabay (401758)

ひかりごけ事件は、船が座礁してしまい乗組員や船長が遭難したことがきっかけとなり起こってしまった事件です。
船長と最年少の青年は、共に過酷な環境を耐え凌いでいましたが、青年は力尽き亡くなってしまいます。

亡くなった青年の遺体を抱きながら、船長は複雑な感情が自分の中で交錯したのを感じていたのです。あまりの空腹からか抱いていた青年の遺体が人間の遺体ではなく、あざらしなどの遺体と同じように思えて、青年の肉を無性に食べてしまいたくなったと語っています。

「未だに経験したことがないくらい美味しかった」

Teapots Pots Cook Stove - Free photo on Pixabay (401816)

青年の遺体を口にしてしまった船長は、最初股周りの肉を鍋に入れて、雪を水分代わりとし少しだけ残っていた味噌と一緒に煮て食べたそうです。

そして、船長は口にした青年の肉は経験した事がないくらい美味しかったと言い、生きる事に必死だった船長は股周りの肉を食べ尽くした後、臓器などもむさぼるように食べていきました。

船長の行動は、最早、強烈な生への執着、同じ人間を食べてでも生きたいという欲求だけが船長を突き動かしていたのでしょう。

「脳みそを食べた時が最も精力がついた気がした」

Walnut Nut Shell - Free photo on Pixabay (401867)

船長は人間の遺体を解体しているという感覚はなく、牛や豚、あざらしなど食べるものを解体しているという感覚になっていたのであろう。

麻痺してしまった船長は、ありとあらゆる部位を解体して食べ、首を解体して脳を食べた時には最も精力が付いた気がしたと語られた。

人間が人間の肉を食べるという行為は、普通なら凄まじい嫌悪感に襲われ耐えられない程なのだが、過酷な環境が船長を共に過ごしていた人間の脳まで食べてしまうまでに追い詰めていたのであろう。

武田泰淳が小説「ひかりごけ」を出版

Reading Book Girl - Free photo on Pixabay (401922)

船長が起こしてしまった食人事件が、ひかりごけ事件と呼べれるようになった名前の由来は、作者の武田泰淳が執筆した小説「ひかりごけ」からきているとされています。

当時、本当に起こった遺体損壊事件、食人行為を題材にしていることや、「ひかりごけ」という題名などが話題となりました。ここでは、武田泰淳が描いた「ひかりごけ」という小説がどのような内容の小説なのか、どのようにして描かれたものなのかなどをご紹介していきます。

武田泰淳は船長と接触したことがない

Light Bulb Lightbulb - Free photo on Pixabay (401969)

1954年に制作発表された「ひかりごけ」は、武田泰淳作者の短編小説です。北海道で実際に起こった食人事件をモチーフにして制作された小説で、映画化などもされている作品になります。

武田泰淳が描いた「ひかりごけ」は、北海道で実際に起こった食人事件をモチーフにして制作された小説なのですが、当時の食人事件そのものを描いている小説ではありません。その為、武田泰淳が実際に事件を起こした船長に、接触した事や取材したことは一度もないそうです。

事件をモチーフにし噂を元に制作

Meet Up Companion - Free photo on Pixabay (403836)

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