2019年9月23日 更新

リマ症候群とは?在ペルー日本大使公邸占拠事件についても

誘拐や監禁の場合、通常と異なる心理状態になるのは被害者も加害者も同じです。被害者ばかりに注目が集まりますが、実は加害者側もリマ症候群と呼ばれるPTSDの一種を患うことがあります。今回はリマ症候群を紹介し、実際に起こった悲しい事件を紹介します。

日本人を人質にとった犯人たちは12歳から18歳の少年少女たちでした。彼らは貧しい地域の出身であり、小さいころから兵士として人を殺すように教え込まれてきた人たちです。

最初は銃を向けて人質を威嚇していた少年少女たちでしたが、人質との交流の中で日本の文化に触れ、信頼関係も築いていきました。4ヶ月にも及ぶ人質生活にピリオドを打ったのは1発の銃声です。

これを合図に抗争が終盤を迎え、少女たちは人質に再び銃を向けて人質を殺すことを証明しようとしていました。しかし信頼関係が出来上がった後に人質を殺すことは難しく、銃を向けながらも引き金を引くことはできませんでした。

料理を振る舞い続けた日本人

Chef Kitchen Man - Free photo on Pixabay (649802)

事件に関わったのはリマで暮らしていて、幸運にも人質に巻き込まれなかった日本人も解決に向けて協力していました。その中の1人に、リマで日本料理「レストランフジ」を経営していた深澤宗昭さんがいます。

彼は赤十字から依頼を受け、ほとんど毎日食事を人質の人たちのために料理を振る舞い続けました。彼もその日大使館へレセプションに参加するために行く予定でしたが、家を出る前に事件が起こりました。普段から大使館の関係者と交友を持っていたため、人質の人たちは友人であり、お客さんでもあったようです。

彼は人質が料理を通じて希望を持ち続けることができるよう、少しでも気を強く持ってもらえるように心を込めて味に飽きない工夫を凝らしていたようです。

ストックホルム症候群とは

Despair Alone Being - Free photo on Pixabay (649803)

リマ症候群と対比される言葉として、ストックホルム症候群という言葉が用いられることがあります。また、知名度もリマ症候群より高く、誘拐や監禁で生き延びるために発症することは少なくありません。

ここではストックホルム症候群について詳しく紹介します。

被害者が犯人に抱く特別な感情

The Offence Double Exposure Victim - Free photo on Pixabay (649804)

ストックホルム症候群とは、誘拐や監禁をされた被害者が、犯人に対して特別な感情を抱くことを指します。この特別な感情は必ずしも好意ではなく、生きて帰るために良好な関係を築こうとするものです。

これは病気ではなく、生存するための政略的な行動であり、心的外傷後ストレス障害として扱われることもあります。心理カウンセリングを通して日常生活を取り戻すことで、通常の心理状態に戻ることが多く、犯人に特別な感情を抱くのは究極の状態になったときのみであると考えられています。

例:人質が犯人に好意を抱いてしまう

People Man Woman - Free photo on Pixabay (649807)

いつ殺されてもおかしくない誘拐や監禁されている状態では、人質が犯人に好意を抱いてしまうことは珍しくありません。好意を抱くことで自分がその場所にいることを正当化し、正常だと思いこむ場合もあれば、極限の状態で食事をとらせてくれたりトイレに行かせてくれたりすることに感謝して好意を抱く場合もあります。

非日常の状況では、普段は当たり前のことでも特別な感情を抱きやすいという特徴があります。そのため、誘拐や監禁が終わった後も犯人をかばう発言をする被害者は少なくありません。

例:虐待する両親に愛情がわいてしまう

Hiding Boy Girl - Free photo on Pixabay (649810)

子供は無条件に親を愛します。たとえ両親から虐待されていても、愛情が沸いていることがほとんどでその状況から逃げ出したい、離れて暮らしたいと感じている子供は少ないです。

この場合、虐待されている子供が被害者であり、加害者は両親なのでストックホルム症候群に当てはまります。虐待から救おうとしてくれる施設の人や警察に対しても、かたくなに両親をかばう発言をし、自分は幸せであると主張する子供が多いのはこのためです。

例:厳しい言及の後に優しくされる

Squad Car Police Lights - Free photo on Pixabay (649813)

警察による取り調べについてもストックホルム症候群が発症することがあります。取り調べの際は非日常であり、極限の緊張状態になっていると正常な心理状態でないことは容易に想像ができるでしょう。

取り調べによってはとても厳しく問い詰められることも多く、その後急に優しくされるとたとえやっていないとしても、その良い雰囲気を維持したいあまり自白してしまうことがあります。

優しくされることで自分が認められたと錯覚してしまうことが原因であると言われています。

ストックホルム症候群に関する事件

Staircase Body Corpse - Free photo on Pixabay (649814)

ストックホルム症候群は、リマ症候群に比べて圧倒的に報告数が多く、誘拐や監禁の環境下でストックホルム症候群を発症することは異常なことではないという認識が広まっています。

では、実際にストックホルム症候群に関する事件はどのようなものがあるのでしょうか。世界や日本で起こった事件について見ていきましょう。

ノルマルム広場強盗事件

Bird Seagull Wings - Free photo on Pixabay (649818)

ノルマルム広場強盗事件は、ストックホルム症候群という言葉が作られる由来となった強盗事件です。また、スウェーデンで初めて生中継で事件の様子が伝えられたことから人々の記憶に残る事件となりました。

事件が起こったのは1973年8月23日であり、当時刑務所から仮保釈中だったオルソンが、ノルマルム広場にある信用銀行を襲撃しました。銀行員9人を人質に取り、多額の金と当時服役中であった犯罪仲間の釈放を認めることを条件としました。

警察はこの要求をのみましたが、人質と一緒に逃走することは許しませんでした。これに対して、人質にされていた人が首相に直接犯人たちと逃走したいという意思を伝えた事が話題となりました。

その後犯人らは催涙ガスが注入されたことに気づいて金庫の外へと逃げ、警察に逮捕されました。

女子高生籠の鳥事件

Students Hcmus Girl - Free photo on Pixabay (649819)

1965年11月25日、当時43歳であった犯人は路上で金属製の靴ベラで脅し、女子高生を誘拐しました。自身の部屋に連れ込むと手錠をして目と口を塞ぎ、性交しようと試みましたが失敗に終わりました。

女子高生は最初こそ恐怖を感じていましたが、次第に犯人に対して母性本能が働き、可哀想だと思うようになりました。犯人も女子高生を丁重に扱い、その監禁は同棲とも呼べるもので、半年間も続きました。

半年後、小旅行に出かけるなど行動範囲を広げたところ2人でいるところを目撃され、犯人逮捕に至りました。しかし2人は口裏を合わせ、被害者の女子高生は犯人が悪くないように警察に言っていたようです。2人には愛情が芽生えている様子でした。

よど号ハイジャック事件

Capture Hijack Shrub Mediterranean - Free photo on Pixabay (649821)

2 / 4

関連する記事 こんな記事も人気です♪